2019 Fiscal Year Annual Research Report
移住労働者とその家族の国際人権保護基準に基づいた法基盤整備の総合的研究
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19H01417
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
薬師寺 公夫 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 研究部長 (50144613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂元 茂樹 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 所長 (20117576)
小畑 郁 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (40194617)
北村 泰三 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (30153133)
西井 正弘 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (60025161)
飛田 雄一 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (70776913)
古屋 哲 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (90460659)
前田 直子 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (80353514)
水島 朋則 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (60434916)
有江 ディアナ 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (50816527)
杉木 史帆 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 嘱託研究員 (00713033)
内田 晴子 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (20781165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移住労働者 / 国連移住労働者権利条約 / 出入国管理制度 / 人の国際移動 / 在留資格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人の移動に伴う人権の問題を、特に外国人移住労働者とその家族の人権に焦点をあてつつ、人の越境移動をめぐる国際法上の問題、日本の法制度とその運用の問題、地方公共団体の受入れの実情と課題の3分野に分けて、検討することを目的としている。研究期間は3年間で、2019年度は初年度にあたり、また、代表者及び分担者が、法学、社会学など異なる領域の研究者で構成されていることを踏まえて、まず、3分野でどのような課題が存在しているのかについて共通の認識をもつことを初年度の課題とし、各分野から問題の現状と課題について順次報告をしてもらうことにした。2020年度は各領域の中で検討を深める問題を明確にして個別研究を深化させるとともに、国際シンポジウム等を開催して、日本の移住労働者受入れの進展状況とそれに伴い生じてきている国際人権法上の課題を送出国及び受入国の双方の側から分析し、これらをふまえて最終年度に研究成果を著書にまとめるための原稿準備を終えることを計画した。 この基本計画に基づいて、2019年度は、代表者及び分担者が上記3つの領域の中で担当するテーマを割り当てるとともに、各領域において生じている基本的な問題について順次報告を行った。代表者及び分担者が地域的にも関東、中部及び関西在住の研究者により構成されているので、研究は科研費の使用ができる7月以降原則月1回の定例研究会を行うとともに、報告、資料等は共通に利用できる情報基盤を整備するとともに、成果等を公表できるWEBサイトの基盤構築を行った。その上で、3つの領域につき、総計で9回の研究会を開催し、外部から招請した報告者の報告も含めて17本の報告を検討した。完全とはいえないが,これらの基礎的研究報告を受けて、次年度以降の研究の基礎作業を終えることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように研究課題を3つの領域にわけて検討し、2019年度は準備作業と位置づけて各分野について、代表者及び分担者を中心にテーマに関する次のような基礎的な作業を行った。9回の研究会、17本の報告を通じて、移住労働者とその家族の取扱いに関する国際基準、特定技能の新設を含む日本の出入国管理制度と外国人労働者受入れ政策、地方公共団体の現状と課題について分析した。 人の国際移動に関する国際問題の態様と国際基準の設定に関連しては、人の越境移動と失踪問題に関する国連WGEIDの報告書、居住権に関する社会権規約委員会の個人通報事例、移住労働者委員会の一般的意見2、教育権に関する米州人権裁判所勧告的意見、改宗等を含む庇護申請の新事情と難民条約の解釈適用等について,各担当者の報告を受けて、課題の分析と整理が行われた。 第2の柱である日本の外国人労働者受入れ制度については、新在留資格「特定技能」の導入に関連して、戦後の日本の外国人労働者受入れ政策の展開、それに伴う出入国管理及び難民認定法の改正の軌跡、技能実習と特定技能の相互関係等について法学的、社会学的など異なる視点からの報告と分析がなされた。また実態を理解するために、出入国管理庁の実務者を招いた技能実習制度の制度内容と展望に関する研究会、技能実習生及び特定技能1号の受入れ企業の実務弁護士を招いた研究会等を通じて、労働力不足の実態と外国人労働者受入のための課題についての認識を深めた。 第3の柱である外国人労働者の受入れと地方公共団体の課題については、特定技能1号資格者の受入れの前提として、地方公共団体における従来の外国人の受入れ特に医療費や生活保護費をめぐる問題、外国人の学習権特に日本語教育についての学習権と統合政策の不在の問題や経路依存的な「外国人教育」の形成過程についての分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の準備研究を踏まえて、2020年度は、①移住労働者権利条約及び移住労働者の権利に関するILOの条約が求める外国人労働受入れ国及び送出し国の権利義務と労働、社会保障等の基準、経済連携協定における外国人労働規定の内容、②日本の外国人雇用の歴史及び現在の課題、日本の産業構造と外国人労働の位置づけ、③外国人労働者受入れに伴う居住、教育、災害、健康問題への対応について、各担当者が研究を深めることともに、可能であれば、①の分野で2020年度又は2021年度に外国人労働者送出し及び受入れに関する国際的な研究会又はミニシンポジウムの開催をめざして準備をする。また②及び③の課題に関連して国内の専門家を招いた研究会を開催する予定である。 代表者と分担者は、昨年度に引き続き、原則月1回の定時研究会を開催して研究の進展状況を報告し、討論を深める。できれば2020年度末には、どういう形態の著書にまとめるかも含めて第1次集約を行えればと考えている。 ただし、2019年度末に新型コロナウィルス感染症による渡航制限のために、欧州で予定していた予備調査が実施できなくなったことをはじめ、同感染症の状況によっては当初計画を変更せざるを得ない事態が生じることを考慮する。
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