2019 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Efforts to Build the Comprehensive Housing Welfare Remedy Framework for Radiation and Other Accumulative Disaster Damage in the 21st Century
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19H01433
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻内 琢也 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00367088)
今野 正規 関西大学, 法学部, 教授 (10454589)
津田 敏秀 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (20231433)
成 元哲 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20319221)
窪田 亜矢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (30323520)
淡路 剛久 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (90062653)
今中 哲二 京都大学, 複合原子力科学研究所, 研究員 (90109083)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射能損害 / 疫学 / 水俣病 / 蓄積的損害 / 地球温暖化 / 自然災害 / ウィルス災害 / 予防・警戒原則 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島の原発事故による放射能被害を皮切りに、蓄積的損害に関わる被害者救済の学際的考察を幅広く行うことを目指してリセットをかけた本研究だが、原発事故の被害者救済について、定期的な実務家との研究会にもかかわらず、関連の裁判例は芳しくなく(とくに放射能被害の知見が問われる『自主被害者(区域外被害者)』の問題)、非力を感じ、更なる学際的研究の詰めを求めたい(例えば、精神心理学上のトラウマは少しも解決されていない旨を説く辻内研究は注目される)。しかしこのテーマで国連絡みの国際会議報告では、脚光を浴びて、日本と海外との温度差を痛感した。他方で、事例的には数十年遡る水俣病問題の被害者掘り起こし活動に関与し、さらに疫学的知見を学際的に深めることができて、カナダ水俣病も調査して、それなりに成果を収めることができた。
この時期代表者吉田は在外研究時期で、災害復興との関係で、否応なく地球温暖化問題(水害、森林火災、熱帯雨林の破壊)に直面することとなり、その関連場所の訪問や国際会議での報告を行った。東南アジア、南アメリカ(とくにブラジル)などにおける自然環境破壊は、先住民族問題も関係し、自然災害難民も生んでいて、グローバルな経済、資本主義権力とも深く関わり、21世紀の難問で打開策は急務なのだが緒はつかみがたく、因果関係の立証も難しく、不法行為救済を超える枠組み作りに苦慮している。
そうこうする内に世界はコロナウィルスウイルス災害に席巻されるようになり、感染防止の点から身動きがとれなくなり、現場主義的研究・実証的(経験的)研究ををモットーとしている本研究との関係でも暗雲が垂れ込めているが、まずは感染学などとの学際的研究の幅を拡げて、他方で、大不況が生ずるのは必定なので、そこにおける居住福祉政策など、関連分野と提携しつつ打開策を探ることも、損害機序が難しい損害の救済を考える本研究の格好の課題・素材としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水俣病に関する疫学との学際的研究の論文、座談会などは発表することはできたし、他方で、福島の放射能損害に関する原賠法上の救済は、かねて行政が進めた原賠審の中間指針、その追補による枠組みの構造的欠落として、自主避難者問題を論じ、それをまとめる拙著も刊行できた。もっとも、実務は芳しくなく、学理的に説得的ではない非合理な状況が固まりつつあるが、そもそも法的救済の限界を踏まえて、学際的研究の課題を大きさを見据えて、次のステップとしたい。
福島問題だけでも課題山積なのであるが、次述のように、この延長線上の問題として、地球環境問題をも取り上げることしており、それは国際報告をしたにせよ、まだ緒に就いたばかりであり、営為研究を続行させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に繋がることとして、地球温暖化の問題が前面に出るようになり、それもあり、本研究にリセットをかけた。地球規模的な災害問題・環境破壊問題という21世紀の難問処理は、そう簡単ではないが、蟷螂の斧を振るいたい。そして、これについては既に国際会議などで、『地球温暖化時代の居住福祉』の方向性を探っているが、さらに研究を継続させたい。
そしてそうこうする内にコロナウィルス問題に世界は席巻されるようになり、ウィルス被害は、本研究に接合できて、まさに疫学の出発点でもあり、学際的研究からの救済諸政策の開拓に努めたい。さらに近時の感染爆発の状況は、我々の研究にも方向転換を迫る勢いであるが、まずはじっくり文献研究などにより、これまでのこの分野の学際研究の成果の確認から進めていきたい。
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Research Products
(24 results)