2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19H01434
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
成瀬 幸典 東北大学, 法学研究科, 教授 (20241507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石綿 はる美 東北大学, 法学研究科, 准教授 (10547821)
蘆立 順美 東北大学, 法学研究科, 教授 (60282092)
中原 茂樹 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (60292819)
津田 雅也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80633643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 営業秘密 / 秘密管理性 / 不正競争防止法 / 経済スパイ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、研究計画にしたがい「情報の保護」と「情報の利活用の促進」に関係する各法に関する基礎理論や原理に関する検討を引き続き推進した。新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、海外調査を実施することはできなかったが、日本刑法学会仙台部会での共同報告に向けた研究を精力的に行った。具体的には、研究代表者である成瀬(刑法分野)・研究分担者である津田(刑事法分野)と蘆立(知的財産法分野)の3人が2回にわたって静岡大学において研究会及び打ち合わせを行い、2021年3月20日(土)にオンラインで開催された上記仙台部会において「情報の法的保護に関する総合的検討――営業秘密を素材にして」というテーマで共同報告を行った(成瀬は「不正競争防止法における営業秘密概念における『秘密管理』の意義」という報告を、津田は「アメリカの経済スパイ法(EEA)における「秘密管理性」概念」という報告を、蘆立は「不正競争防止法における営業秘密概念 - 裁判例における秘密管理性要件の判断」という報告を行った)。この共同研究報告は、不正競争防止法上の「営業秘密」の要件である「秘密管理性」に焦点を当てたものであり、秘密管理性に関するわが国及びアメリカの議論を比較・検討するのみならず、情報の特徴を踏まえつつ、刑事法的な保護の在り方と民事法的な保護の在り方の異動について考察を加えたもので、本研究課題の特徴である「情報の保護・情報の利活用の促進」に関する分野横断的な検討の実践である。同部会では、報告者と参加した研究者・実務家との間で積極的な質疑応答が展開された。現在、当該共同報告の原稿に加筆・修正を施したものを電子ジャーナルに掲載する方向で調整中である。なお、上記共同報告に加わらなかった2名の研究分担者は、情報の保護や情報の利活用に関係する行政法上・民法上の基礎理論に関する検討を精力的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の柱の一つは「情報の保護と情報の利活用に関する分野横断的な検討」であるが、2020年度は、この点に関して刑法分野・刑事法分野・知的財産法分野の3名の共同研究者が2回にわたって研究会を開催し、その成果を日本刑法学会仙台部会において「情報の法的保護に関する総合的検討――営業秘密を素材にして」というテーマで共同報告を行った。具体的には、研究代表者である成瀬が「不正競争防止法における営業秘密概念における『秘密管理』の意義」という報告を、刑事法分野の研究分担者である津田が「アメリカの経済スパイ法(EEA)における「秘密管理性」概念」という報告を、知的財産法分野の研究分担者である蘆立が「不正競争防止法における営業秘密概念 - 裁判例における秘密管理性要件の判断」という報告を行った。この共同研究により、営業秘密の要件として秘密管理性が要求される根拠に関するわが国及びアメリカの議論状況、不正競争防止法上「『秘密』管理」が要求されている根拠、不正競争防止法上の営業秘密の保護の在り方と刑法上の財産の保護の在り方の理念的な異同、わが国の判例における秘密管理性の理解の変遷と現状等を明らかにすることができた。また、上記研究会においては、秘密管理性以外の営業秘密の要件である「有用性」と「非公知性」についても検討を行い、それらに関するわが国の学説・判例やそれに対応するアメリカ法(連邦営業秘密防衛法(DTSA)、経済スパイ法(EEA))に関する学説・判例についても検討を進めることができた。このように営業秘密概念に関する分野横断的研究は順調に進捗しているが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の世界的拡大のため、海外の現地調査を十分には行えなかったこと、公法分野を含めた分野横断的研究については十分に展開できなかったことから、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、おおむね順調に進展しているが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、海外調査を実施することができず、この面では若干の遅れが生じているため、同感染症の収束の目途が立てば、アメリカ及びドイツに赴き、情報の保護と利活用に関する両国の諸制度に関する現地調査を行うこととする。また、同感染症の収束の目途が立たない場合、比較法的研究については、各研究分担者による諸外国の文献調査を中心に進めることとする。その際、2020年度においては、営業秘密侵害行為に関するアメリカの法制度及び判例に関する研究を推進することができたことを踏まえ、2021年度においては、アメリカに関する調査研究を継続しつつも、対象国をドイツにも広げることにする。そして、年度内に、複数回の研究会を開催し、各研究分担者の研究の進捗状況について認識を共有しながら、今後の研究対象や方向性を確認し、情報の保護と利活用に関する日本・アメリカ・ドイツの法制度の総合的・分野横断的な比較・検討を強力に推進する。また、その成果を踏まえ、現在のわが国の実情に応じた、情報の保護と情報の利活用に関する適正かつ妥当な制度の骨格の内容を明らかにする。 2020年度は不正競争防止法における営業秘密侵害罪を素材とした刑事法と民事法の間における分野横断的な研究を推進し、その成果を学会において発表することができたが、公法(行政法)を含めた分野横断的な研究は十分に展開できなかった。そこで、2021年度においては、公法分野の研究分担者を中心とした研究会を複数回開催し、営業秘密侵害行為と個人情報保護の関係に関する分析・検討を推進する。
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Research Products
(3 results)