2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H01467
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外木 暁幸 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20709688)
佐藤 秀保 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (70805118)
上野 有子 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (80721498)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 分離可能性 / 家計消費 / 物価指数 / オイラー方程式 / コロナ禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナの影響もあり、予定していた国際コンファレンスの開催や海外学会への参加ができなかった。しかしながら、POSデータを用いた家計消費行動分析及び分離可能性の分析を進めると同時に、新型コロナが物価や家計消費に与えた影響も分析し、さらに独自アンケート調査を行うなど、分析は順調に進んだ。具体的な実績は下記のとおりである。(1) POSデータを用いた分離可能性の検証に関しては、佐藤が中心となり分析を進めた。乳製品の弱分離可能性を顕示選好を用いたノンパラメトリック手法を用いて検証した結果、厳密には弱分離可能性は棄却されるものの、弱分離可能と仮定しても、定量的には大きな乖離は生じないという結果を得た。この結果は、学会報告を経て、査読付き雑誌に掲載されている。(2)新型コロナがマスク価格に与えた影響について、新型コロナがもたらした人々の選好の変化を考慮した場合の生計費指数を計算し、選好シフトの影響を計測する研究では、選好シフトが生計費指数に対して多大な影響を与えていることを見出した。これは海外査読付き雑誌に投稿し、改訂要求を受けている。(3)家計内生産行動に関する分析では、サービス消費に関する家計内生産関数の形状の推計を試み、先行研究と異なり、サービス生産において、時間と支出の間には強い代替性は観察されず、むしろ補完的なものであるという結果を得た。(4)異時点間の分離可能性の検証に関して、繰越金を用い独自アンケート調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請の中心課題である、POSデータを用いた分離可能性の検証は順調に進んでおり、ノンパラメトリック法を用い多分離可能性の検証を行った論文は既に査読付き学術雑誌に掲載されている。また、伝統的な集計方法である、物価指数を用いた支出総額の実質化、に関わる諸問題を解決する新たな物価指数の構築にめどがついたことは、大きな成果であると判断する。消費の異時点間の分離可能性の検証に関しても、データの蓄積は進んでいる。さらに、新型コロナ禍がもたらした日本の物価、特に急激な需要増加が観察されたマスクの価格に関する研究も投稿するなど、研究成果も十分に出ている。残る課題は、消費の異時点間分離可能性を分析するために蓄積したデータ分析およびその研究結果をまとめることであるが、これは後一年で進めることが可能と思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
異時点間の分離可能性を検証するために蓄積したデータセットを用いた様々な推計を行い、その成果を学術論文にまとめ、雑誌に投稿していく。また、推移性をみたす物価指数構築に関しては、今まではPOSデータにその理論を応用していたが、さらに国際間物価指数や季節性商品にその応用先を拡大していく。また、物価指数の理論として、基数的効用ではなく、序数的効用に依拠する物価指数の構築を目指し、選好が異なる主体間での物価比較の理論をより頑健なものとしていく。
|