2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and Empirical Study on the Effects of Peer-to-peer Transactions on Competition in the Sharing Economy
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19H01494
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
土井 教之 関西学院大学, 特定プロジェクト研究センター, 客員研究員 (60098431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪野 弘明 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (30546776)
土居 直史 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (30633945)
北村 亮真 追手門学院大学, 経済学部, 講師 (30801831)
新海 哲哉 関西学院大学, 経済学部, 教授 (40206313)
松村 敏弘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (70263324)
加藤 雅俊 関西学院大学, 経済学部, 教授 (80507707)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | P2Pビジネス / シェアリングエコノミー / プラットフォーム / 寡占企業 / 競争政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論班は、シェアリングエコノミー(SE)におけるプラットフォーム企業のビジネスモデルの理論モデル化を行った。具体的に、市場行動、競争(競合する既存分野の企業との競争も含む)、消費者行動(売手、買手)などの理論的課題を対象とし、そうした新しいビジネスに適用可能な既存の理論分析を展望し拡充する努力をした。併せて、SEを対象とする先行研究を展望・考察し、われわれの理論的課題を確認した。こうした考察を通して競争政策、規制、消費者保護、資源環境問題などへの含意を探った。その一部は論文として公表する予定である。 実証班は、民泊、ライドシェアリングなどを対象とした欧米の既存の実証研究を展望し、今後の方向と課題を確認した。そして、新たなビジネスであるが故に関連データが十分整備されていないが、現時点で利用可能な公表資料を基に暫定的に実証分析を試み、われわれの研究にとってさらに必要な計量手法や統計資料を確認した。こうした取り組みを基に、業界団体の日本シェアリングエコノミー協会と議論を行い、必要な情報・資料の入手で協力を得ることになった。なお、今後協会と共同で研究を進めることも決まり、対応中である。 最後に、政策班は、理論と実証の両方の研究から導き出される政策含意を確認したうえで、EU、米国、カナダ、豪州などにおける公共政策(競争政策、規制、消費者保護)の実態とそれに対する評価を展望した。そして、わが国の政策のあり方への示唆を得た。理論的には自己規制の役割に注目した。なお、欧米の実証分析や政策などの展望は、間もなく論文として公表予定である。 なお、コロナウイルス問題に伴い、研究計画は制約を受け、ワークショップ・セミナーの開催、各種ヒアリングなどの研究活動が中止となり、2020年度に持ち越しとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シェアリングエコノミー(SE)は新たなビジネス(ビジネスモデルイノベーション)で、しかも変化しながら拡大しているために、重要な理論的、政策的課題となっている。しかし、研究はわが国ではほとんどなく、先行する欧米の既存研究(利用可能なもののほとんど)を展望し、そしてまたSEの市場行動や公共政策(競争政策、規制、消費者保護)に関するわが国の実態について、業界団体との連携を構築し、各種資料やヒアリングなどを通して把握に努め、分析上の課題を確認した。それを基に、理論班はモデルの新たな展開とそれからの政策的含意の考察を試み、また実証・政策班は、産業組織論、イノベーション経済学などに依りながら競争の実証分析と欧米日の競争政策・規制などの実態分析を試みた。統計資料について期待されたものが十分得られなかったが、ヒアリングや関連資料で補足した。これらの研究成果は学会、セミナーなど研究会議で報告され、また雑誌等で発表された。今後は、成果をさらに改善し、そしてまた未公表の成果部分について公表していく。 以上、本研究は、コロナウイルス問題で若干制約を受けたが、研究の進捗では各メンバーの努力でカバーし、おおよそ順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2019年度で先送りとなった研究活動を行い、これまでの研究成果について評価を受け、そして今後の取り組みにあたっての示唆・課題を得る。理論面では、これまで行ってきた既存の研究の展望をさらに拡大し、一般個人が財・サービスの供給者でありまた利用者となる状況を考慮して理論モデルの拡充と新規展開を図る。具体的に、取引の構造変化がもたらす経済取引価値の分配構造、それぞれの取引の限界費用の大きさの変化が消費者に与える影響などを分析する計画である。また、実証面では、新たに入手したデータを加えて昨年度試みた計量分析を深化させ、また民泊などのデータをもとに新たな計量研究を行う。そのさい、計量分析を補強するために、日本シェアリングエコノミー協会の協力を得ながら事例研究を行う。政策面では、引き続き海外の政策動向をフォローし、そして海外の政策からの含意やわが国における政策実態を考慮しながら今後の政策のあり方を探る。 各研究成果を、メンバー全員の討議を通して総合化を行う。わが国ではシェアリングエコノミーについて研究はほとんどないために、政策内容、制度設計などについて提言していく。また、以上の研究で得られた知見を、引き続き、学会、セミナーなど内外の研究会議に参加・報告し、また、雑誌に投稿したり、ディスカッション・ペーパーとして公表する。さらに、関連企業も参加する会議でわれわれの知見を報告する機会を設定することも考えている。
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Research Products
(21 results)