2019 Fiscal Year Annual Research Report
How Japanese Firms Accommodate to Yen Appreciation? Exchange Risk Management and Pricing Strategy under Global Value Chains
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19H01504
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
佐藤 清隆 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30311319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHRESTHA N.P. 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (10647316)
章 沙娟 中央大学, 経済学部, 助教 (20783236)
清水 順子 学習院大学, 経済学部, 教授 (70377068)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 輸出価格設定行動 / 為替リスク管理 / 国際価値連鎖 / 産業連関分析 / 貿易建値通貨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、日本企業が為替変動への「耐久力」を高めてきているのか否かを実証的に分析することにある。特に、①2007年以降の歴史的な円高局面と2012年末からの急激な円安局面でどのように価格設定行動や為替リスク管理を変化させてきたのか、②アジアを中心とした国際生産ネットワークの構築・発展によって、為替変動が企業の輸出価格設定行動と為替リスク管理に及ぼす影響がどのように変化しているかを分析する。 まず①については、日本の輸出における為替レートのパススルーに関する2本の論文を査読付き国際学術雑誌に掲載することができた。一つ目のNguyen and Sato (2019)では、日本銀行が公表する想定為替レートを用いて、輸出企業の想定(予想)よりも実際の為替レートが円高の水準にある時を円高局面、円安の水準のときを円安局面と区別する手法を提案し、No-linear ARDLモデルを日本の産業別の輸出におけるパススルー行動の推定に応用した。もう一つの Nguyen and Sato (2020)では、想定為替レートのデータが入手できない場合でも、円高局面と円安局面を区別する手法を開発し、Threshold VARモデルによるパススルー行動の推定を行った。 次に②については、二つの論文をDiscussion Paperとして公表した。Sato and Zhang (2019)では、国際価値連鎖の中で、為替レートのボラティリティが輸出に及ぼす負の影響がどう変化するのかを実証的に分析した。また、Lapukeni and Sato (2019)ではアフリカの小国であるマラウィの税関データを入手し、マラウィがアジアからの輸入においてどの通貨で取引を行っているかをHS9桁分類の取引データを用いて明らかにし、さらに通貨選択の決定要因も分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず「①2007年以降の歴史的な円高局面と2012年末からの急激な円安局面でどのように価格設定行動や為替リスク管理を変化させてきたのか」に関する二つの論文を査読付き国際学術雑誌に掲載することができた。Nguyen and Sato (2019)はJournal of the Japanese and International Economies, Vol.53 (September 2019)に、Nguyen and Sato (2020)はApplied Economics, Vol.52(10) (January 2020)に掲載した。 また「②アジアを中心とした国際生産ネットワークの構築・発展によって、為替変動が企業の輸出価格設定行動と為替リスク管理に及ぼす影響がどのように変化しているか」に関する二つの論文を経済産業研究所のRIETI Discussion Paper Seriesとして公表した。この二つの論文は、国内外の大学・研究機関と連携して開催した二つの国際ワークショップにおいて発表した。Sato and Zhang (2019) RIETI DP 19-E-059はAix-Marseille Universityと共同開催したYNU-AMSE Joint Workshop(横浜国立大学、2019年12月)で発表した。また、Lapukeni and Sato (2019) RIETI DP 19-E-060は経済産業研究所、中国社会科学院と共同開催したRIETI-IWEP-CESSA Joint Workshop(経済産業研究所、2019年12月)で発表した。二つの国際ワークショップで連携したのは、いずれも国内外で高い評価を受けている大学・研究機関であり、引き続き研究連携を深めていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、海外の大学、研究機関、研究者と連携して国際共同研究に取り組み、国際シンポジウム等の開催を通じて具体的な研究成果の発表を行うことを計画している。しかし、本年に急速に拡大した新型ウィルスの世界規模での感染によって、海外の研究者を招聘する、あるいは日本側の研究者が海外のシンポジウムや学会に参加することが困難になっている。 世界全体にウィルス感染が拡大し、どの時点で終息するかが見通せない中、海外の研究者とはオンラインでの共同研究を継続し、研究成果を国際的な査読付学術雑誌に投稿する計画である。
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