2019 Fiscal Year Annual Research Report
International comparative study on establishment, business development and growth of university-/public research institute- originated venture companies
Project/Area Number |
19H01526
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
米山 茂美 学習院大学, 経済学部, 教授 (30258496)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 勇 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (40548286)
大西 宏一郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60446581)
蟹 雅代 帝塚山大学, 経済経営学部, 准教授 (20509187)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 大学等発ベンチャー / 大学等の資源の有効活用 / トップマネジメント・チームの設計 / 事業化におけるハイエンド戦略 / 研究・教育成果の並行活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学等発ベンチャーの設立から事業化、成長までのプロセスを視野に入れ、各プロセスにおいていかなる要因が重要なのか、またその重要性は他国と比べてどのように異なっているのかを明らかにするものである。 初年度の2019年度は、大学等発ベンチャーに関する既存文献のレビュー、現実のベンチャー事例の収集、及びベンチャーへのヒアリング調査を通じて、本研究の基礎となる調査枠組みと仮説について検討した。こうした調査・研究の成果として、次のような点が明らかになった。 (1)われわれが研究対象とする「研究成果型ベンチャー」(大学で実現された研究成果を事業化する目的で新規に設立されたベンチャー)でも、研究成果を出した大学教授等が設立したものと、研究成果を利用して外部の既存企業が設立したもの(あるいは大学と既存企業との合弁形態)が含まれる。(2)大学と既存企業との合弁で設立された大学発ベンチャーでの事業化は、既存企業の中では収益性の面で潰されてしまいがちな不確実なビジネスを育成していく良い手段となる。(3)他のベンチャー企業と比べた大学発ベンチャーの利点として、キャンパス内の施設(研究室)や大学院生等を活用できる点が挙げられる。(4)大学等発ベンチャーの経営において、社長が技術的側面と経営管理的側面の両方を担うことは難しい。トップマネジメント・チームの設計が重要である。(5)大学等発ベンチャーが生み出す技術的成果の事業化では、その技術的先進性ゆえに市場の最もハイエンドから攻めることが多い。(6)大学等発ベンチャーの安定的な成長にとっては、大学での研究成果だけでなく、教育上の経験等を基盤とした事業が安定経営の柱として重要な役割を果たしうる。 こうした発見的事実には、既存の研究では明示的に取り上げられていない点が含まれており、今後の実証研究のための新たな仮説設定に役立てうることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究活動においては、合計6回の研究会を設け、既存の学術文献や調査報告書等のレビュー及び大学等発ベンチャーの事例研究に基づく活発な議論を行ったことに加えて、研究代表者・分担者が全員で実際にベンチャー企業へのヒアリング調査に参加できたことで、当初目指していた今年度の主要な目標(既存文献等のレビュー、大学等発ベンチャーに関する事例収集、ヒアリング調査)がほぼ達成できたと考えている。また、その成果を踏まえて、今後の研究のための具体的な研究テーマの絞り込みと研究枠組み及び仮説等の検討ができた。特に、ヒアリング調査を通じて、文献等では把握することができない組織・人事・戦略等に係る経営上の要点をつかむことができた点が有益であった。 ただし、年度末に集中的に実施することを計画していた、大学等発ベンチャーの出身母体である大学等へのヒアリングと、2件の大学等発ベンチャーに対する追加ヒアリングが、新型コロナウィルスの感染拡大のために中止となり、この点が予定通り研究が進まなかった点であった、
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時における研究計画調書で示した通り、次年度(2020年度)の主たる研究内容は、今後の国際比較のための海外における大学等発ベンチャーの事例収集及びヒアリング調査の実施である。それを通じて、今年度行った日本の大学等発ベンチャー企業へのヒアリング調査の結果との異同を検討する予定である。 ただし、新型コロナウィルスの感染は、全世界で広がっており、調査対象として予定しているフィンランド及びシンガポールの両国も、2020年5月末時点で外国人の入国を制限しているため、調査の実施には少なくとも数か月の遅延が予想される(計画では、2020年4月末のゴールデンウイーク以降の現地訪問を計画していたが、早くても8月または9月以降になりそうである)。 このため、今年度前半の期間中は、前年度末に中止となった2件の大学等発ベンチャー企業の訪問とそれらの出身母体である大学等の訪問を行い、日本での研究成果の充実に努めたい。そして、今年度後半以降(予定では9月以降)、海外の入国規制が緩和され、訪問が可能になった時点で現地を訪れ、現地研究者の協力のもとに大学等発ベンチャーのリストアップを行い、あわせてヒアリング調査を実施したい。必要に応じて、オンラインでのヒアリングを行うことも検討する。
|
Research Products
(8 results)