2020 Fiscal Year Annual Research Report
戦略的情報開示が資本市場に及ぼす影響についての総合研究
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19H01552
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
八重倉 孝 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90308560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 雅史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (30247241)
中井 誠司 国士舘大学, 経営学部, 教授 (30631387)
亀岡 恵理子 東北大学, 経済学研究科, 講師 (30806295)
藤谷 涼佑 東京経済大学, 経営学部, 講師 (90880849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ディスクロージャー / 決算短信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,企業による戦略的情報開示の実態を調査し,それが資本市場に与える影響を広く検証することである.近年,企業と投資家との建設的な対話を促進するため,わが国のディスクロージャー制度を巡り改革が進められている.いくつかある論点のうち,本研究は決算短信による情報開示のタイミングに着目し,四つの研究課題に取り組む. 第一に,企業の情報開示に関する国内外の文献を渉猟するとともに,わが国の開示制度について整理を行う(研究課題①).第二に,公表データに基づき,日本企業の決算発表の実態について調査する(研究課題②).第三に,決算発表を早期化する企業の動機,およびそれに対する利害関係者の知覚・認識を調査する(研究課題③).第四に,企業の情報開示タイミングに関するアーカイバル研究を実施する(研究課題④). 第一年度は上記の研究課題のうち①と②に取り組み,ワーキングペーパーを作成した.当ペーパーは第二年度に海外で発表する計画であったが,新型コロナウィルス禍により報告を行えなかったため,第三年度での発表を予定している. 第二年度はティックデータを入手し,データベースの構築を行うと共に,レビュー論文の作成に取り組んだ.前者は当初計画していたインタビュー調査と,学生アルバイトを使ったデータ構築の代わりに取り組んだものである.後者は,文献レビューのみならず,構築したデータベースを分析することにより先行論文が見落としていた重要論点を明らかにすることが出来た.レビュー論文は第三年度早々に学術雑誌に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は研究課題①②について,当初の計画に基づき研究は順調に進捗した. 第二年度は新型コロナウイルス禍のため,当初計画のうち,インタビューや学生アルバイトを使う作業を行うことが困難であったこと,また海外での学会発表が困難であった.そのためため,第三年度に予定している分析に使用するデータ(ティックデータ)の構築を前倒しで行った. 第三年度も新型コロナウイルス禍のため,インタビューや学生アルバイトを使う作業を行うことが困難であることが予想され,また海外での学会発表が困難であることなどが懸念材料である.必要に応じて研究計画を改訂しつつ研究を継続する所存である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、決算発表に関連する先行研究を集成したレビュー論文を完成し、学術雑誌に投稿する。 また、決算発表を早期化する企業の動機、およびそれに対する利害関係者の知覚・認識を調査する(研究課題③)。研究課題②で識別したアーリー企業について、なぜ早期の決算発表が可能なのか、早期化により期待するプラスの効果は何かを調査する。具体的には、業種ごとの決算発表一番乗り企業に対してインタビュー調査を実施する予定である。さらに、早期の決算発表に対して利害関係者がどのような知覚・認識を抱いているのかを調査するため、インタビュー対象を情報利用者であるアナリストや投資家、情報評価者である監査人に対しても広げる。インタビュー調査の結果に基づき、アベレージ企業およびレイト企業を含む上場企業でも全数調査すべき項目を抽出し、アンケート調査を実施すること を考えている。本件インタビュー調査については、は昨年度コロナ禍のため遂行できなかったものを本年度に行うものである。 さらに、企業の情報開示タイミングに関するアーカイバル研究を実施する(研究課題④)。研究課題①で識別した理論、研究課題②で収集したデータを利用し、研究課題③で得たソフトエビデンスに基づき、日本の実態に即した仮説構築を行う。検証する仮説は、情報開示タイミングと情報内容の質との関係、また情報開示タイミングと情報の信頼性との関係、情報開示タイミングとアナリストカバレージとの関係などに関連するものを想定している。本件は、昨年度データ収集と分析についてほぼ完了したので本年度に論文を完成の上、学会等で報告することを予定している。
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