2019 Fiscal Year Annual Research Report
地域福祉計画の策定・実施・改定を促進する複合的評価システムの開発に関する研究
Project/Area Number |
19H01597
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
榊原 美樹 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (00460593)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 ゆり子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50507142)
永田 祐 同志社大学, 社会学部, 教授 (90339599)
高野 和良 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20275431)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 地域福祉計画 / 評価システム / 進行管理 / プログラム評価 / 参加型評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域福祉計画の策定・実施・改定を促進する複合的評価システムを開発することを目的とするものであり、初年度である2019年度においては主に地域福祉計画の評価に関する先行研究の検討と、実態把握を中心に研究を進めた。 第1に、文献研究を通して地域福祉計画の評価手法の理論的検討状況と実際について検討した。その結果、地域福祉計画の評価に関しては、①業績測定、②社会指標、③プログラム評価、④参加型評価の4つの手法が提起されているが、具体的な活用については①と②の一部に偏っていることが把握された。 第2に、複数の自治体の地域福祉計画の策定・評価場面の参与観察やヒアリング、計画書の分析等を通して、評価の現状把握を行った。特に評価指標の設定について重点的に分析を行い、現状として、最終的な成果や地域の変化(アウトカム)を測る指標よりも、行政活動の結果(アウトプット)を測る指標が圧倒的多数を占めていること、住民参加に関する項目では指標設定が多いが、分野横断的に共通して取り組むべき事項に関する項目では指標設定が少ないなど、分野・項目によって評価指標の設定量に差があることなどが明らかとなった。ここから、アウトカム指標や新たな計画領域の指標設定に課題があることが把握された。 第3に、複数回の研究会での議論を通して、地域福祉計画の評価パッケージに求められる要素とその手法の検討を進めた。社会福祉法の改正により、包括的な支援体制の構築を進める役割が地域福祉計画に期待されていることから、その構築状況を、特にアウトカムの視点も含めて把握する方法が必要となっていると考え、関係する専門職・行政職員に対する事例を用いた調査方法や、住民や民生・児童委員に対する行動・意識調査等を具体的な手法案として検討した。次年度以降、この評価パッケージの案を具体的な自治体において試行し、その有効性や課題等の検証を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の交付申請書においては、特に参加型評価に関する理論的整理と、評価システム案の設計、複数自治体との共同研究の体制構築を予定していた。 このうち参加型評価に関しては、2019年度においては十分に取り組むことができなかったが、2020年度以降に実施する見込みとなっていること、また参加型評価以外の理論的整理が進んだことから、進捗への大きな影響はないと考えている。 また、複数自治体との共同研究の体制構築については、2020年度以降に予定を変更したが、これは評価システム(評価パッケージ)案の設計を先行し、ある程度パッケージ案が確定した段階で体制を構築すべきとの判断によるものである。2019年度においては、先行研究の検討や複数自治体における評価の実態把握などが着実に進み、評価パッケージ案の概要が見えつつある。そのため、当初案から一部計画を変更しているが、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、大きく以下の3つの柱からなり、このうち2019年度は1を中心に実施してきた。2020年度は1と3、2021年度は2と3を中心に実施し、最終年度の2022年度においてそれらを総括し、地域福祉計画の評価システムの提案を行う予定である。 1.関連・隣接領域の評価に関する理論的整理等を踏まえた評価枠組みの形成【理論】 2.全国調査による地域福祉計画の評価の現状と評価システムへの意向の把握【調査】 3.複数の自治体との共同研究体制による評価システムの設計・試行的実施【開発】 2020年度の実施項目のうち、「1.評価枠組みの形成」については、2019年度において一定程度検討が進んだ。今年度はそれに、①参加型評価の地域福祉計画への応用可能性の検討及び②自治体ヒアリングや研究会での議論の整理を加え、地域福祉計画の特性に応じた複合的な評価システムの構成要素・実施プロセスの案について確定することを目指す。また、「3.評価システムの設計・試行的実施」については、当面1つの自治体での2つの調査(一般住民向け調査及び民生委員・児童委員向け調査)の実施を想定し、自治体との合意形成・アンケート調査の項目の精査、調査方法・調査対象の確定、調査の実施・集計,調査結果の検討を進めていく。 なお、新型コロナウイルスの影響により、対面での研究会等が開催できない場合でも、オンラインの会議システムを用いるなどして、上記の研究のうち、可能な部分から実施していく。
|