2019 Fiscal Year Annual Research Report
授業研究における国際交流のためのエビデンス創出と解釈共同体の形成に関する開発研究
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19H01634
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
的場 正美 東海学園大学, 教育学部, 教授 (40142286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 弘幸 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (30325302)
田上 哲 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50236717)
大野 栄三 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (60271615)
杉本 憲子 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (70344827)
吉田 成章 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (70514313)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育学 / 授業研究 / 授業分析 / エビデンス / 解釈共同体 / 分析単位 / 授業展開 / 思考体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、以下の3つの問の解明を通して、調査や学問的根拠を有する諸事実や学校など自他の共同体が生み出した諸事実が、解釈共同体の媒介を経て、どのようにエビデンスとなるかを解明する実証的かつ開発的研究である。問1:文化依存の授業研究の諸事実は、どのように可視化されるのか。問2:解釈共同体は、エビデンスと創出と活用にどのような変化を与えるか。問3:日本の解釈共同体の持続的形成にどのようなエビデンスが、どのように機能するか。 2019年度の授業研究の諸段階で生み出された諸事実を文化依存レベル、解釈共同体の文脈と結び付けてエビデンスにするために、①分析する単位の解明、②事例における事実と解釈と説明を区分し、それらを類型化した(重点研究)。そして学習指導計画に応用されたエビデンスを実際の授業と照応し、さらに授業者である教師、同僚、専門家へのインタビュー調査をもとにエビデンスの実施と効果を検証した(検証研究)。 重点研究の成果:例えば、パラ言語分析ではイントネーションや無音の時間、ドメイン分析の語彙、談話分析の1ターン、授業分析の語彙、発言、分節など分析単位は分析対象と手法によって違いがある。分析単位には階層性があるが、階層間を自由に移動することによって、①文脈に即した説明と解釈、②意味解釈のための脱文脈化と解釈者のコード内での解釈の間の相互の移動を可能にしている。 検証研究の成果:インビュー調査により、その教師の授業計画の重要な概念としては、「正と反」、「拮抗の状況」、「こだわる」、「対象の変化」などの概念は上田薫の概念である「視野」、「正対」と対応していることを解明した。それらの諸概念が相互に関連したものが教師の授業計画と授業展開の思考体制と呼ぶならば、その思考体制に位置づけられる教師の質問、指示、説明などの事実が次の授業計画と実際の授業展開にとってエビデンスとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.重点研究①の分析する単位の種類と具体的な単位を解明することができた。これまでの日本の授業研究において、全体の解釈、中核的な特定のまとまりのある部分の解釈、そしてまたその中の特定に発言の解釈へと進み、また全体の解釈へ戻っている分析と解釈事例、あるいは、途中から特定の語に関する全体の解釈へと進み、特定の場面におけるその語の意味の解釈をする事例が示されている。分析単位の相互関連と解釈の編集性との関係をさらに解明する必要がある。2.重点研究②の事例における事実と解釈と説明を区分したが、それらを類型化する研究が完成していない。3.実証研究については国内と国際学会での発表により、一定の成果を上げることができた。学習指導計画に応用されたエビデンスを実際の授業と照応し、さらに授業者である教師、同僚、専門家へのインタビュー調査をもとにエビデンスを教師の思考体制として位置づけることができた。4.諸外国の授業と授業研究を分析する正当化の枠組みは一定程度解明できたが(的場 2019)、さらに実践を分析する枠組みの解明が課題として残っている。5.戦後日本における授業研究の定義を概観したが(的場 2020)、その定義の変化と解釈共同体における教師の成長や授業研究の方法の変化との関係の究明が課題である。 以上の5点の理由から、概ね順調に研究は進展しているが、分析単位の相互関連による解釈の深化などの課題、実践報告の事実と説明と解釈の関係にもとづく類型化とエビデンスの限定性、定義の変化と授業研究の方法の変化の開映などの課題が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.協働的に教材を開発する事例分析について、その具体的な記録を収集し、どのように助言や知見の追加・修正がなされているかを解明することが今後の推進方策である。 2.教師の実践報告や授業実践記録には児童・生徒の実態把握、教材解釈などにおいて、事実と解釈、そしてそれらと関連する情報の追加などが含まれているので、その区分と組み合わせによる類型化をする。その場合、分析単位との関連も視野に入れる。 3.新型コロナ感染拡大状況を鑑み、2020年度は海外の研究者との交流による文化依存レベルに関与する研究を変更して、インターネットによる質問紙による研究に変更する。 4.授業実践の逐語記録から直接解釈することは困難であるので、解釈の妥当性と影響を与えている考えや概念を健在化するために、これまでの科学研究費補助金の成果である中間項による成果を活用する。
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Research Products
(6 results)