2021 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Research for Developing a Model of Realizing Secure and Safe School Environment in Nepal
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19H01641
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石田 洋子 広島大学, 教育開発国際協力研究センター, 教授 (20772461)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学校運営 / 住民参加 / 防災教育 / 動機付け / サクセスケースメソッド / ネパール |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、前年に続いて新型コロナ感染症感染拡大のため研究代表者がネパールに入って学校を訪問し、インタビューやワークショップを通してデータ収集を行うことはできなかった。しかし、令和3年度に入ってネパールの小中学校のロックダウンは解除されたため、日本とネパールで定期的にオンラインでの打合せを持ちながら、研究パートナーであるネパール人専門家による対象校からのデータ収集を行った。ただし、当初予定していた教員や生徒、住民を集めての参加型のワークショップを行うことはできなかった。 ネパール人専門家が対象校の学校運営委員会と協力して、年度前半には、PCR検査キットの配布と感染予防に関する啓発活動の展開を行った。これにより、コロナ禍で各学校の学校運営委員会がどのように機能しているかを確認した。そのうえで、対象校におけるコロナ禍における授業の実施状況、ITによる授業の実施状況と課題、生徒の成績や学業継続への影響、学校運営上の対策と課題、コミュニティによる協力などを理解するための質問票を設計した。 ネパールの地方教育行政官や学校長に作成した質問票の妥当性を確認してもらったうえで、年度後半に、合計200校(ゴルカ郡79校、ダディン郡121校)の校長を対象として質問票調査を行った。その後、200校の校長から収集した質問票のデータを入力し、コロナ禍での学校運営、授業の実施状況や課題などについて分析して、代表研究者とネパール人専門家でオンライン協議を行った。分析結果から、対象校の中に、コロナ禍にあっても、ある程度学校運営が円滑に進められ、生徒の成績が維持され、中退率も低レベルに抑えられているグッドプラクティスの存在が判明した。よって、令和4年度は、これらの学校に対して詳細なインタビュー調査(質的分析)を行い、その要因を探ることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ネパールでは感染者数が少ない2020年の段階から政府がロックダウンを実施し、学校は閉鎖された。2021年にはロックダウンは解除されたが、現在も市中の感染状況は十分に把握されておらず、今後の感染動向は見通せない。このような中、社会経済活動は徐々に再開されつつあるが、2021年度中も外部者が学校を訪問して広く教員や保護者を集めてワークショップなどの活動を実施することは困難な状況にあった。 このため、当初予定した対象校において教員・生徒・住民の参加により、地震復興からの振り返りを行い、防災計画を策定するワークショップは開催せず、パートナーであるネパールNGOに対象校校長に対する質問票調査を行ってもらい、COVID-19対策における学校運営のあり方を分析することとした。 こうした研究方法の見直しと変更を行ったため、予定よりやや遅れているが、2022年度内に分析結果(論文)を作成することが可能と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度に行ったコロナ禍における学校教育及び学校運営の状況に関する質問票調査(量的分析)の分析結果を踏まえて、よりよいアウトカムを生み出している学校に対して詳細なインタビュー調査(質的分析)を行う。こうしてサクセスケースメソッドによる調査分析を行って、防災教育とコロナ対策に対する学校運営のグッドプラクティスを分析し、動機付けの自己決定理論に拠りながら、校長、教員、子ども、保護者、地域住民の学校運営への参加動機の自己決定性がどのように変化したか(before-afterの差)、また、SISMプロジェクトから直接介入を受けた学校と間接的介入を受けた学校の間にどのような差がみられるか(with-withoutの差)を確認する。 2022年度も、新型コロナウィルスの感染拡大によって、現地調査を行うことが年度後半までは困難と思われる。よって、年度前半は、ネパール人専門家と連絡を取りながら、各学校におけるコロナの影響を確認しつつ、インターネットを活用してのデータ収集や意見交換を行う。年度後半にネパールでの調査が可能となって以降は、対象校において関係者に対面にて質問票及びインタビュー調査を行うとともに、学校運営参加型評価ワークショップと防災教育活動を中心とした開発モデル実装のトライアルとする。 主な活動は、①文献調査(関連論文、ネパール政府の復興政策、教育統計・世帯調査報告書等)、②2021年度質問票データの分析とグッドプラクティス校の選定、③グッドプラクティス校に対する詳細インタビュー調査、④サクセスケースメソッドによる開発モデルの改訂と実装のあり方の検討、⑤参加型学校運営評価ワークショップと開発モデルの改訂と実装に関するトライアルの実施と分析、⑥日本比較教育学会等での学会発表、学術誌への論文投稿、を予定する。
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Remarks |
本研究の日本語と英語のホームページを作成し、研究の進捗と成果などを共有している。
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Research Products
(3 results)