2020 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災は保育に何をもたらしたのか:社会変動による保育の変化
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19H01654
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Research Institution | The University of Nagano |
Principal Investigator |
太田 光洋 長野県立大学, 健康発達学部, 教授 (60248664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 孝士 長野県立大学, 健康発達学部, 准教授 (10631723)
原野 明子 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10259210)
中山 智哉 長野県立大学, 健康発達学部, 准教授 (00465907)
姫田 知子 四国大学短期大学部, その他部局等, 講師 (30612056)
渡邉 望 長野県立大学, 健康発達学部, 准教授 (40621264)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 保育 / 社会変動 / 東日本大震災 / コロナ禍 / 保育の質 / 子育て支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の保育に与える影響を明らかにするために、東日本大震災の影響が強いと考えられる宮城県、福島県を含む、全国8つの地域において、コロナ禍の保育の現状を把握するための質問紙調査を行った。 質問紙調査では、前年度の調査の追加データを収集し、最終的には、『園長調査』24名、『保育者調査』324名、『保護者調査』1,347名からの回答が得られた。これらの結果の一部である『園長調査』については、論文化を行った(こども学研究4号)。これらの結果では、感染予防をしつつ保育を行っている様子やコロナ禍によって、行事についての変更や見直しが行われる中で、保育の見直しや捉えなおしが行われていること、保育者の疲労増加を示唆する結果が確認された。また、園種と地域による違いも確認された。 『保育者調査』では、対面での「保護者対応」や「子どもとのスキンシップ」などが減少してること、「会議の時間」や「新しい保育の導入」が増加しており、試行錯誤しながら保育を前進させようとしていることも導き出された。加えて、『保護者調査』では、子どもが「家庭で過ごす時間」が増加し、それにより「家族での会話」や「食事をする回数」が増加するなどの変化が示された。これらの『保育者調査』、『保護者調査』においても、園種差、地域差が見出されており、家庭環境(家族形態や就業状況)や感染拡大の状況により、保育や子育て環境が大きく異なっており、個別事例を収集することの必要性も示唆された。 これらの結果は、2022年度の保育学会で研究発表を予定しており、今後も論文化に努めていく。 以上の結果を基に、調査園を拡大した質問紙調査を行うため、倫理審査会の承認を得、さらに調査用紙の印刷、及び発送準備を整え、調査が行える準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、東日本大震災という社会変動により、保育がどのように変化したのかを明らかにすることを目的としたものであり、福島、宮城といった東北地域の保育の変化の特徴を明らかにすることを目指していた。 しかしながら、現在、コロナ禍という大きな社会変動により、全国的に大きな制限を強いられた中で保育・子育てが行われている。よって、コロナ禍の現状を把握する必要性が生じている。また、変異株である、オミクロン株は、幼児への感染力も高く、保育現場はより制限を強いるようになり、調査を行うのが難しい現状がある。そのため、研究の遅れは否めない。 ただし、コロナ禍という社会変動下だからこそ、東日本大震災を乗り越えてきた経験が顕著になる可能性もある。よって、これらの視点も踏まえつつ検討していくことは、マイナスな影響のみではないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査の完了した、『園長調査』、『保育者調査』、『保護者調査』についてまとめ、報告書の作成や論文化を行い、研究成果の報告に努める。 加えて、広域調査を実行し、福島、宮城の保育者の保育への取り組みや子育て環境について、明らかにし、東日本大震災の経験が、コロナ禍の保育や現在の保育実践に与える影響を検討していく。 また、これまでの調査では、家庭環境や園種、地域によっても結果が異なっており、個々人の置かれた環境によって、個人差が生じる可能性が示唆されている。よって、インタビュー調査などを通して、質的に個別事例を検討していきたい。
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