2020 Fiscal Year Annual Research Report
幼児のアート的思考を伴うプロジェクト活動における学びの変容を可視化する実証的研究
Project/Area Number |
19H01657
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
植村 朋弘 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (50328027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郡司 明子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00610651)
森 眞理 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (20319007)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レッジョ・エミリア / ドキュメンテーション / 素材 / プロジェクト / アート的思考 / 対話 / アトリエリスタ / ペダゴジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)保育実践と理論化/研究協力保育施設におけるプロジェクトの学びの活動について、現地調査を予定していたが、新型コロナ感染拡大により実施不可能となった。しかし当保育施設での2017年度に実施された「イノシシプロジェクト」の1年間に渡る日々の活動記録(ドキュメンテーション)をもとに振り返りを行なった。半年間(4月ー9月)について、プロジェクトを実践した保育者と協働でリフレクションを行なった。特に子どもへの「聞き入る対話」について着目した。アート的思考による学びの変容プロセスをもとに、その仕組みと意味について考察を行なった。子ども達は出来事において、現実とファンタジーとの間で「身体(劇遊び)・素材(造形)・言葉(語り)」を循環することにより、学びや物語を生成していくことを明らかにした。 2)アプリ開発/2019年度の評価をもとに展開した。プロジェクト展開の道筋を可視化するマインドマップ機能の充実を図った。年間を通した「変容過程を時系列に表示する機能」および「個人別・年度別で並行して実施されるプロジェクトの時系列表示機能」の実装を行なった。プロジェクト展開の変容プロセスを時系列による可視化が可能となった。 3)調査/コロナ禍によりレッジョ・エミリアへの調査の実施が不可能となった。上記の活動記録(ドキュメンテーション)をもとに、オンライン研究会で調査を行なった。記録された内容について、テキストと写真を詳細に追いながらエピソードの背景にある意味について議論を展開した。プロジェクト全体の流れを議論できたことに価値があり、同時にドキュメンテーションをもとに議論する意味や調査方法の有効性について理解することができた。 4)学会発表/国際学会及び国内学会での発表を行なう予定であったが不開催となった。ただし日本保育学会からは発表完了の承認を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)保育実践と理論化/研究協力保育施設において保育実践を参与調査する予定が、コロナ禍のため実施に至らなかった。しかし過去の実践記録(2017年実施:イノシシプロジェクトのドキュメンテーション)を省察することで研究の成果を得ることができた。特に「表現の素材の扱い」と「対話の内容」に着目し、ドキュメンテーションを手掛かりに実践者の記憶と想起をもとに考察することができた。当初予定の調査方法とは異なってはいるが、プロジェクトにおけるアート的思考による学びについての有意義な議論が展開できた。これにより今後の個別の実践を調査する際に、重要な知見を得るものとなった。 2)アプリ開発/アプリ・デザインの開発は、概ね順調に展開しているが、実施調査による保育者からの十分な評価を得ることができないため検証がやや滞っている。しかし今回の開発をもとに次の開発目標を設定し、機能仕様の検討に入りつつある。「アプリの機能構造」からプロジェクトの学びの仕組みを見出すことができたが、さらに「それを使用する操作の構造」との関係性から探ることを試みていく。 3)調査/コロナウィルスの感染状況により、レッジョ・エミリアへの調査および国内での実施調査が不可能となった。その代替としてドキュメンテーションをもとにしたリフレクションによる考察を行うことにより、プロジェクトの学びを俯瞰する視点を得ることができた。 4)学会発表/コロナ禍により国内学会及び国際学会の発表大会が不開催となり発表に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)保育実践と理論化/引き続きプロジェクトの学びに着目し、その変容プロセスをもとにアート的思考による学びの仕組みと意味についての理論化を行う。子どもたちが出来事の中で「現実とファンタジー」をどのように捉え、活動の中における「聞き入る対話」と「多様な素材による表現」によってどのように物語を生成していくのかについて着目していく。そこから「子ども観と保育観」のありようを捉えつつ、アート的思考についての理論を深めていく。 2)アプリ開発/ESAという過去の記録データを検索するという特徴をさらに深めた顔認証機能およびレイアウト設定機能の開発を行う。同時に開発成果については、研究協力保育施設での評価検証を行う。 3)調査/コロナの感染状況からレッジョ・エミリアでの現地調査および国内保育施設への調査が可能かどうか判断できない。引き続きドキュメンテーションによる調査をもとに10月ー2月の振り返りを行い、1年間続いたプロジェクトのプロせス全体を俯瞰していく。特に2月に開催されるプロジェクトの成果の展示会に出展される子どもたちの作品に着目し、アート的思考の意味を捉えていく。プロジェクトで起こった数々のエピソードや活動とそこでの表現と対話について考察するとともに、それぞれの作品に込められた子どもたちにとっての意味を考察していく。またドキュメンテーションツールの開発については2020年度開発機能についての調査を行なっていく。 4)学会発表/コロナ禍のため、日本保育学会自主シンポジウムではオンラインによる発表を行う。また国際学会では、EECERAでの発表を予定をしている。
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Research Products
(16 results)