2019 Fiscal Year Annual Research Report
多感覚相互作用に注目した芸術教育による感性育成プログラムの開発と検証
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19H01669
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
齊藤 忠彦 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (10313818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 英昭 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20467195)
臼井 学 国立教育政策研究所, その他部局等, 教育課程調査官 (00739427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多感覚相互作用 / 芸術教育 / 感性育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間は日常生活の中では,感覚器のすべてをオープンにした状態で生活している。例えば,子どもたちが,あるピアニストの演奏を鑑賞するとき,聴覚を中心に音楽に聴き入る子どももいれば,視覚を中心にピアニストの姿に惹かれている子どももいる。芸術教育においては,すべての感覚器をオープンにし,それぞれの子どもの特性に応じた感性を育成することができないかと考えた。 多感覚相互作用とは,視覚や聴覚など異なる感覚器官を通じて入力された情報が脳内で相互作用し統合されることである。本研究では,多感覚相互作用に注目した芸術教育における感性育成プログラムを考案し,そのプログラムを実験的に検証し,学校教育の現場で有効となりそうな感性育成プログラムを提案することを研究の目的としている。 令和元年度は,多感覚相互作用や感性の育成に関わる先行研究の検討や,本研究の実験的検証の場面で必要となる機器等の検討及び実証研究の場面で必要となる楽器等の検討を行った。さらに,感性育成プログラムに関わる基礎研究として具体的なモデルの考案を行った。その一つとして,「絵画を鑑賞する場面でバックミュージックとして音楽を流すことによる効果はあるか」について実験的な検証を行った。大学生に実験協力者を依頼し,大型ディプレイに提示される絵画を鑑賞するときに,音楽が流れているかいないかで,心理的にどのような違いがあるのか,生理的に脳血流にはどのような影響を与えるのか検証を行った。脳血流の計測は,日立メディコのETC-4000を用いて計52chで計測を行った。その結果,前頭部の前頭極(ブロードマン領域10野)付近の脳血流の変化に特徴がある被験者がみられた。また,質問紙調査の結果では,自由記述の欄に,感情の変化に関わる記述が複数見られたことから,絵画の鑑賞場面において音楽を流すことは,感性に何らかの影響を及ぼしていると考えられることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実験的検証の場面で必要となる機器等の検討及び実証研究の場面で必要となる楽器等の検討を行い,令和元年度中に必要となるものをほぼ整えることができた。また,令和元年度中に感性育成プログラムに関わる基礎研究として具体的なモデルを考案し,その一部を検証することができたことから研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の具体的な方策は次の通りである。(1)五感工学を含む多感覚相互作用に関する脳生理学や心理学からの最先端の研究を引き続き把握する。(2)感性と教育に関わる先行研究を検討する。(3)具体的な学習プログラムを考案する(教材,指導法,評価の視点も入れる)。(4)考案した具体的な学習プログラムの中から,実験的に検証できる内容を取り上げる。 (5)脳生理学的な検証の場面では簡易NIRSを用いる予定である。なお,当初は予定していなかったが,新型コロナウィルス感染症の影響を受け,学校へ登校できない子どもたちに対しての芸術教育による感性育成の在り方や,学校に登校できるようになってからも,例えば歌うことができないなど通常行っていた活動ができない状況下における感性育成に関わる検討も行う。
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Research Products
(1 results)