2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on random real and complex dynamical systems, semigroups of holomorphic maps and fractal geometry
Project/Area Number |
19H01790
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
角 大輝 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40313324)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 敏浩 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (00172354)
佐藤 譲 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (30342794)
上原 崇人 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40613261)
諸澤 俊介 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (50220108)
和田 昌昭 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80192821)
イェーリッシュ ヨハネス 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (90741869)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 力学系 / ランダム力学系 / ランダム複素力学系 / フラクタル / ランダム性誘起現象 / 正則写像半群 / ジュリア集合 / ランダム緩和ニュートン法 |
Outline of Annual Research Achievements |
角はランダム複素力学系の研究を行った。特にシステムの写像らが共通固定点を持つ複雑なランダム複素力学系についても、そのようなシステムのほとんどのものは弱平均安定性を持ちシステムのカオス性が著しく軽減することを示した。その応用として、「ランダム緩和ニュートン法」を考えると、従来の決定論的ニュートン法と比べて多項式の根をある意味で見つけやすくなることを示した。また、マルコフ的ランダム複素力学系の平均安定性や、非有界多項式列のジュリア集合の非一様不完全性を調べた。また、角とイエーリッシュは、実直線上の拡大的写像のランダム力学系を調べ、推移作用素のスペクトルギャップ性を示し、無限遠点に収束する確率の関数やその確率パラメータに関する偏微分の各点ヘルダー指数についてのマルチフラクタル解析を行った。 佐藤はランダム力学系における新たな間欠性と異常拡散を発見したほか、ランダム力学系理論をジェット気流の時系列解析、機械学習の停滞現象の解析、感染症モデルの解析に応用し、また、雑音誘起現象の存在に関する計算機援用証明を行った。 中西は有限次元タイヒミュラー空間とその上に作用する写像類群に関する研究を行った。特に2つ穴あきトーラスと種数2の閉曲面のタイヒミュラー空間の元である曲面群のSL(2,R)表現の行列表示を具体的に与え写像類群を有理写像のつくる群として具体的に実現した。上原は特定のクラスの複素曲面の構成およびその上の双有理自己同型写像による力学系の解析を行なった. 有理曲面を用いてK3曲面を構成し複素曲面上の力学系の複雑さを表すエントロピーについて考察した。 諸澤は超越整関数の半群の力学系の研究を行なった。特に超越整関数の内側合成の研究を行なった。和田はフラクタル幾何学研究支援プログラムであるFractal Gazerを開発し、それを用いて3つの相似変換による相似タイリングを多数発見した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度にランダム力学系の研究集会を行い、数名の海外研究者を招へいし、大変有意義な議論を行うことができた。それがきっかけとなりランダム力学系の研究がある程度計画通りに進められた。具体的には、ランダム複素力学系において、共通固定点を持つようなシステムを扱うことによって様々な応用が期待できる理論の論文を国際的に著名な雑誌Comm. Math. Phys.に出版できたことが大きく、また、独立同分布とは限らないマルコフ的システムについての考察が進み、論文を出版することができたことも評価できる。さらに非有界な非自励系多項式力学系でそのジュリア集合が一様完全性を持たないという新しい現象を持つシステムについての考察を深めることができ、それについて一部分であるが論文を出版することができたのも大きい。角とイエーリッシュによる、実直線上の拡大的写像によるランダム力学系の理論は新しい現象を扱っているが、それについての論文がやはり著名な雑誌comm. Math. Phys.に出版できたことも非常に大きい。佐藤は海外の研究者との議論を、現在のコロナ渦による困難な状況においても粘り強く続けており、ランダム力学系理論の実に様々な方向への応用に取り組んでおり、かなりの成果を挙げているといえる。中西による写像類群の作用の、写像の具体的表示の成功により、ランダム力学系理論を用いる解析への準備が着々と進んでいることも評価できるし、上原による複素曲面上の力学系の探究では非常に深い結果を次々に得ており、素晴らしいものがある。諸澤による超越的整関数の力学系理論の研究も少しずつ進展がみられ、和田による計算機ソフトの開発は画期的なものである。ただしコロナ渦により国内外の研究者とのやり取りが減少したために非自励系多項式力学系の研究とリーマン面の写像類群の力学系的研究を十分に行うことができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ渦により国内外の出張がほぼできない状態にあり、互いに研究打ち合わせが難しい状況が続いているが、徐々に出張ができるようになってきているので、研究代表者および研究分担者の相互の行き来を増やし、かつそれぞれの研究に関わる共同研究者との打ち合わせを増やして、研究全体の深化を図っていく。 具体的には、角が行っているランダム複素力学系に関して、まず非自励系多項式力学系における新現象を考察する研究については、アメリカのM.Comerford, R. Stankewitzと連絡を取りながら、アイデアを発展させていく。また、2次元のランダム緩和ニュートン法については、一橋大の川平友規氏をはじめとする国内外の研究者と議論を重ねていく。角とイエーリッシュによるランダム複素力学系および無限生成有理半群の力学系の研究については、互いに行き来を行いながらシステムに付随するPeron-Frobenius作用素の解析などの理論を発展させていく。 また、中西と連絡を取り合い、行き来をしてお互いの知識の基本的な事柄を相互に伝達しあいながら、リーマン面の写像類群の(ランダム)力学系的理論の構築を図っていく。 さらに、上原とも連絡を取って、互いの持っている知識を基礎のところから伝達しあって、高次元の複素多様体上の正則自己同型写像によるランダム力学系的理論を構築していく。この理論構築を、中西と行うリーマン面の写像類群の作用の研究にも関係させていく。 そして、佐藤とはランダム力学系理論の研究集会の共催などを通じて、互いに連絡を頻繁に取って、互いの大学を行き来しあいながら、ランダム力学系理論の理論と応用の連携についての研究を深めていく。
|
Research Products
(73 results)