2019 Fiscal Year Annual Research Report
Multiscale Simulations on Complex Flows in Polymer/Surfactant Systems
Project/Area Number |
19H01858
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川勝 年洋 東北大学, 理学研究科, 教授 (20214596)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 正幸 東北大学, 理学研究科, 教授 (60251485)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | マルチスケールシミュレーション / 流体粒子法 / 粘弾性流動 / 移動境界 / ベシクル / フィラー |
Outline of Annual Research Achievements |
毛細血管中を流れる血流のような界面活性剤膜の作る小胞(ベシクル)の集団を含む細孔(血管)内での流動やフィラー等の多数の分散粒子を含む高分子流体のようなマルチスケールのソフトマター系混相流動に対して、各階層での機能性が互いに協奏することで、全体の機能を如何に発現するのかという点を、大規模計算機シミュレーションを用いた複雑流動解析の観点から明らかにする目的で、シミュレータの開発と並列化を行ってきた。 2019年度は、マルチスケールシミュレーションのマクロ流動モデルの構築とマクロ流動モデルに埋め込むミクロシミュレータの開発を並行して行った。血流モデルに関しての開発課題として、SPH粒子を弾性的な相互作用により実質的につなぐことで閉じたベシクルを形成したうえで、外部流動によるベシクルの変形と流動を実現するシミュレ―ションコードのプロトタイプを構築した。特に問題となったのは、流動と変形を生じるベシクルの表面での移動境界問題で、流動に伴って境界形状が不安定化を起こしてベシクル構造を保持できないという困難が生じた。この問題は、境界領域を指定するための平滑化の手法と移動境界におけるno-slip境界条件を精度よく実現する方法を導入することで解決した。さらに、このベシクルの弾性率を高めて剛体を近似することにより、フィラー粒子にも転用できるため、フィラー流体のモデルに対するプロトタイプとしても使用可能であることも確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連資料収集の過程で、既存のモデルを比較検討したところ、予想外に、類似の手法でのシミュレーションの論文が令和2年1月に出版されるという情報を入手した。研究遂行上、本研究が目的とする新規の理論モデルを構築するためには、先行研究との差別化が不可欠であるため、関連資料収集と並行して各種学会での関係者への聞き取り調査による詳細なモデルの分析が必要となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、2019年度に作成された生体膜のミクロシミュレータを、申請者らがポスト「京」プロジェクトで開発したマルチスケール流動シミュレーション用プラットフォーム(MSSP)と並列に走らせることで、マルチスケール・シミュレーションを実行する。 ここで、ポスト京で開発したMSSPとはミクロシミュレータのカバーする長さ領域が異なるために、ポスト京の成果物はそのままでは本課題には適用できず、適切な修正と拡張が必要である。 血流モデルに関しての開発課題として、2019年度に開発したベシクルのシミュレーションコードに濃度場の拡散過程を導入する。このことで、膜面上でのラフト形成とラフトの拡散・流動をシミュレートし、その結果を実験によるベシクル分散溶液のレオロジー測定と比較することで、モデルパラメタを決定する。決定されたモデルパラメタを用いて大規模シミュレーションを実行し、管壁の変形、ベシクルの変形、溶媒の流動がラフトの 拡散に与える影響を解析する。 一方、フィラー流体に関しては、2019年度に開発したシミュレーションコードを用いて、流動に誘起されるフィラー粒子のバンドル形成過程について大規模シミュレーションを実施し、実験のデータとの比較により方法論の正当性を検証する。さらに、マクロ流動に引き起こされるバンドルの構造変化等の、ミクロ過程がらマクロな流動への情報伝達の機構を解明する。
|