2019 Fiscal Year Annual Research Report
Anomalous change of diffusion coefficient of protein and reconsideration for meaning of hydrodynamic radius
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19H01863
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺嶋 正秀 京都大学, 理学研究科, 教授 (00188674)
徳永 健 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (30467873)
吉森 明 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90260588)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 拡散係数 / タンパク質 / 構造変化 / 流体力学効果 / 溶媒和 / 分子動力学シミュレーション / 統計力学理論 / 揺動散逸定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質を対象とした研究では、MDシミュレーションによるアプローチを主軸に据えて進めてきた。従来のMDシミュレーションによるアプローチは困難を抱えていたが、流体力学効果を考慮する事に関しては概ね解決した。タンパク質分子の拡散係数の場合でもYehの方法とFushikiの方法による結果に矛盾がない事、さらにタンパク質の拡散係数の値を問題にする場合はYehの方法の方が精度が高くなることを確認した。また、シミュレーションボックス中に必要な水分子の数についての考察も動径分布関数に基づいて知見を得た。そこで、本年度はタンパク質分子に対する計算を本格化した。これまでのタンパク質の場合の手法のまとめを進めた。残念ながら、フォトトロピンのLOVドメインの計算結果をまとめには至らなかった。 一方で、シンプルな統計力学理論では特に初期入力となる動径分布関数の改善を大きく進めることができた。その結果を論文として発表した。また、そのお陰でかなり精度の高い拡散係数をシンプルシステムに対して計算できる様になり、2成分流体を用いることで溶媒和状態の変化が巨大分子の拡散係数に大きな影響をもたらすことができることがわかった。 また、自己駆動粒子を用いて摩擦を計算する理論研究を進めていた。揺動散逸定理によれば、自己駆動粒子が溶液から感じる摩擦と拡散係数の間には関係があり、相互に関係づくと考えていた。精度の高い評価をすることで、自己駆動粒子の場合は熱発生が重要な役割を果たしていることがわかった。すなわち、自己駆動粒子が能動的に動くことで、溶液の温度が上昇し、それに伴い粘性の上昇が起きる。このことを考慮する理論を立てて、シミュレーションの結果を説明することができた。この結果も論文として発表することができた。タンパク質が化学反応を起こして運動する場合にはこの効果も勘案する必要があるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、タンパク質の計算がやや遅れ気味であるが、基礎固めはかなり進んでいる。近いうちに論文を作成できると考えられる。また、フラーレンなどの系で溶媒和効果については結果が出つつあるので、化学的な修飾を利用した検証を進められる可能性も期待できる。 一方でシンプルモデルによる拡散係数に対する溶媒和効果の重要性の検証はかなり進み、論文が出始めている。これだけ精度の高い計算が行われる事は当初の予定を超えている。 また、自己駆動粒子を用いた理論研究も、熱発生などは当初の理解の範囲を超えており、それを組み込んだ研究結果、特にその論文まで出ている事は十分に当初の予定を超えた成果だと言って良いと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質の計算は焦らずに、コツコツと進める必要がある。小さな系を用いた場合、理論的に予想される直線関係からのズレがみられるので、この点に注意しながら進める。そのまとめができた時点で、論文をまとめて出版する。また、これだけ複雑な系の解析を行う必要があり、フラーレンの系のまとめをその次に行う必要があると考えている。 一方、シンプルモデルに対する計算は拡散係数や大粒子近傍の境界条件の変化と溶媒和状態の変化の関係についての研究を進める。また、精度の高い溶媒和構造計算法についても多様な巨大分子構造に対して進める事で、複雑な形状のケースについて考察できる様にする。 自己駆動粒子を用いた研究は理論ができた事で新しい発展について検討できる様になった。今回構成した理論は、自己駆動粒子サイズを変化させることができる。従って、自己駆動粒子サイズの変化をシミュレーションを用いて検証することで理論の正しさを検証できる。化学反応を含む系の検討を進めるためにも今回得た理論的描像の確からしさの検証を進めたい。
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Research Products
(29 results)