2019 Fiscal Year Annual Research Report
高圧実験と地球化学の複合アプローチから地球深部酸化還元状態進化を探る
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19H01989
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
新名 良介 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00769812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70614569)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地球内部 / マントル / 酸化還元状態 / 高温高圧実験 / ダイヤモンドアンビルセル / 融解 / ダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
マントル物質の酸化還元状態を理解するための実験的研究を推進した。初年度である本年度は装置の選定・調達と立ち上げを優先した。計画開始時に代表者の所属変更もあったが、装置の立ち上げは概ね順調に進展した。高温高圧力下その場ラマン散乱測定を行うための分析装置と、それに適合した高温高圧実験装置を組み上げることができた。本年度に発表できた成果として、マントル物質の融点を決定する研究を推進し、酸化還元状態がマントルの融解現象を大きく左右する可能性が実験的に示された。マントルにおける融解現象は、地球内部物質進化を支配する最も重要な現象である。この結果から、地球内部への酸素の輸送が、深さ660 kmにおける酸素誘起融解によって妨げられることが新たに示された。これは、近年観測されている地球深部における酸化還元状態異常が物質循環にも大きな影響を与えることを示唆している。また、地球核物質の融解相関係を実験的に研究することで、現在の核に含まれる軽元素の制約に取り組んだ。従来の実験よりもはるかに高い圧力において一連の実験を成功させることができた。得られた結果から、水素を含んだ鉄は純鉄よりも低い融点をもつことや、水素が固溶することで炭素固溶量を制限することが新たに分かり、地球核における水素の重要性が明らかになった。また、マントル鉱物の高圧力下における結晶構造、相関係や物性に関する実験的な研究も推進した。ドイツシンクロトロン放射光施設において行った高温高圧下その場分析を行うための技術開発に関連する成果も本年度発表できた。本年度の研究成果としては、査読あり国際学術誌に6本(印刷中含む)の論文が公開された。学会においても5回の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は装置の選定・調達と立ち上げを優先して遂行した。計画開始時のタイミングで代表者の所属変更があり予想外の移動業務が重なったが、装置の立ち上げは概ね順調に進展した。新しい所属において実験準備に必要な加工装置や実体顕微鏡をセットアップした。高温高圧力下その場ラマン散乱測定を行うための分析装置と、それに適合した高温高圧実験装置を組み上げることができた。外熱式ダイヤモンドアンビルセル用のヒーターや、断熱パーツを作成した。また、断熱とヒーター保護のための真空チャンバーをダイヤモンドアンビルセル実験に最適化した形状で製作をした。温度計測システムと、試料内部観察システムを構築した。 以上の一連の立ち上げと同時に、マントル物質の融点を決定する研究を成果として発表することができた。その結果から、地球深部の酸化還元状態がマントルの融解現象を大きく左右する可能性が実験的に示された。マントルにおける融解現象は、地球内部物質進化を支配する最も重要な現象である。今回得られた成果から、地球内部への酸素の輸送が、地球下部マントル最上部における酸素誘起融解によって妨げられることが新たに示された。これは地球深部に酸化的な物質は660 kmを境にして沈みこみにくくなることを示唆している。近年、天然のマントル捕獲岩やダイヤモンド包有物の分析から示唆されている地球深部に存在する酸化還元状態異常が、物質循環にも大きな影響を与えることが示された。本計画で進展を計画している、地球内部の酸化還元状態と、それが地球内部物質進化へ与える影響を考えるうえで重要な知見を得ることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、前年度に準備をした装置を用い、地球深部酸化還元反応を実験室において再現をする研究を遂行したい。前年度設置した外熱式ダイヤモンドアンビルセル装置を用い、沈み込み帯深部における炭酸塩と金属鉄との反応、あるいは酸化鉄と還元的流体との反応を実験室で再現し、得られたダイヤモンドをはじめとする炭素含有層の精密化学分析を行う。同時に、回収試料に対しラマン散乱測定を行い、同位体比を制約できないか挑戦をする。得られた化学分析結果から、同位体分別係数を決定し、天然のダイヤモンドの炭素同位体比と比較することで、地球深部における酸化還元反応の特定を目指す。また、ビームタイムの確保目途がたったため、SPring-8においてダイヤモンドアンビルセルを用いた実験を行い、マントル自己酸化プロセスの検証を行う。下部マントル主要構成鉱物であるブリッジマナイトを様々な出発物質から合成し、鉄不均化反応が起こる条件の制約を目指す。温度勾配が小さい外部抵抗加熱とX線回折測定を組み合わせるために、SPring-8において様々な試験測定を行う。より高い温度発生を目指すために、必要に応じて真空排気システムや冷却システムを構築したい。共有装置であるX線回折測定装置群と干渉しないかを入念に確認しながらその場測定を目指す。また、次年度は地球化学的な分析を推進することに注力をする。微小な回収試料に最も適した分析装置を模索するとともに、精度や再現性を改善する方法と、試料汚染を防ぐための方法を模索する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] A portable on-axis laser heating system for near-90? X-ray spectroscopy: Application to ferropericlase and iron silicide2020
Author(s)
Spiekermann G., Kupenko I., Petitgirard S., Harder M., Nyrow A., Weis C., Albers C., Biedermann N., Libon L., Sahle C., Cerantola V., Glazyrin K., Sinmyo R., Kon?pkov? Z., Morgenroth W., Sergueev I., Yava? H., Dubrovinsky L., Tolan M., Sternemann C., Wilke M.
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Journal Title
J. Synchrotron Radiat.
Volume: 27
Pages: 414-424
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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