2019 Fiscal Year Annual Research Report
Orientation state in drying process of thin liquid film of rod-like molecules/particles suspension oriented by application process
Project/Area Number |
19H02064
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 勉 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (20216732)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複雑流体 / 塗布 / 流動配向 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
平板に棒状の粒子・分子懸濁液を塗布することで高速かつ大量に分子・粒子が配向した機能性薄膜を形成する技術を開発する.これまでの研究で塗布過程における流動配向の形成についてレオ・オプティック測定を中心とした新たな測定手法により確認してきた.これらを踏まえて,本研究では分子・粒子配向状態にある薄い液膜の乾燥過程における配向秩序度の変化を詳細に調べ,配向状態の高い機能性薄膜形成に必要な条件を明らかにする.この目的のために乾燥状態における液膜の厚さおよび水分量の二次元的,時間的変化の測定,乾燥領域と液膜領域の画像からの認識などの計測技術の開発も行う. 本年度は塗布膜の乾燥過程における乾燥線の進行の状態をマクロ的,ミクロ的に詳細に観察し,塗布膜の各位置における塗布完了から乾燥線が通過するまでの時間を定量的に評価するための手法および実験装置の開発を行った.手法の妥当性を確認するため報告例がある直径のそろった球状粒子分散液を用いてdirectional dryingにおける乾燥線の進行状況と乾燥に伴う亀裂の発生,成長過程を観察した.開発した手法により液膜の水分の体積分率分布を動画として可視化することができるようになり,進行する乾燥線に先立つ体積濃度の変化と亀裂形成において亀裂間において体積分率に規則性のある縞状構造が形成されることを見いだした.また,乾燥過程における膜厚の変化を評価するために本年度に導入した1nmの分解能で膜厚の変化を高周波数で計測できるレーザー変位計による計測システムの構築を行った.まだ改善の余地はあるが膜厚の乾燥による時間的変化を定量的に捉えることができた.また,棒状粒子懸濁液の配向秩序度の定量的評価のためにレオメータによる基本的な流れ場におけるガラス繊維懸濁液の配向状態を可視化し,配向秩序度の時間的変化を求める手法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾燥過程における液膜の水分量の二次元的な分布,そして画像および動画として乾燥過程,すなわちdirectional dryingにおける乾燥線の進行や乾燥に伴う亀裂の発生・成長過程を観察出来る手法の開発を行った.直径のそろった球状粒子の分散液に対して赤色の色素をわずかに混入し,デジタルカメラにより撮影された画像から赤色の濃度変化を検出する.画像から得られた色素濃度は,別途行った体積分率との対応関係を示す校正式を用いて体積分率に変換される.膜厚の変化による変動分を補正するために赤以外に青,緑の光をバンドパスフィルタにより導入しており,他の二色の変化量から膜厚の変化の補正を行った.これらの技術の構築によりデジタルカメラのマクロレンズ程度の視野(一辺1cm程度の領域)および光学顕微鏡による視野(50μm程度の領域) のいずれにおいても体積分率分布を得ることが出来た.これにより乾燥線の進行に伴う全体的な体積分率変化を確認し,また,乾燥線の近傍の濃度変化の特徴を観察した.さらに,乾燥領域に発生する亀裂の発生および成長過程を観察し,それに伴う周囲の液膜の乾燥過程の変化も動画として得ることが出来た. 計画通り高分解能のレーザー変位計を購入し,液膜の乾燥に伴う膜厚の時間的変化を定量的に求めるための実験装置を作製した.本レーザー変位計は1nmの分解能を有するが,機器の振動やまわりの状況が測定結果に強く影響を与えるため,最初の装置では十分な測定精度が得られなかった.その後の改良により膜厚の減少過程を実測することが可能となった. 棒状粒子を用いた配向膜の形成については,準備段階として粒子の配向状態を直接観察出来る手法を開発し,単純せん断流および正弦的な周期的せん断流における粒子配向状態を観察した.画像を解析し粒子の配向秩序度を算出し,その時間的な変化を得ることが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
液膜の乾燥過程における体積分率の変化の解析に関しては,画像から得られる濃度と体積分率の関係を決定する校正式についてさらに精度の高い結果が得られるよう改良を重ねる.さらに,現在の単純な系,すなわちニュートン流体に単分散の球状粒子を分散させた系からより現実の塗布試料に近い流体に適用できるよう,工夫と実験を重ねる. 膜厚の微細な変化量の測定結果にはまだ装置や解析方法に改善の余地があり,引き続き改良を重ねる. 棒状粒子の配向秩序度に関しては,理論的な考察を行い,配向秩序度を考慮した構成方程式の検討を行い,実験結果との対比から実用性の高い解析技術の構築を目指す.
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