2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H02215
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高谷 哲 京都大学, 工学研究科, 助教 (40554209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
左藤 眞市 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (20359409)
土井 康太郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 独立研究者 (80772889)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保護性さび / 鉄筋腐食 / 腐食モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,社会基盤構造物の老朽化が社会問題となっている.コンクリート構造物において深刻な劣化のひとつとして鉄筋腐食が挙げられる.鉄筋腐食の進行のしやすさはどのような酸化皮膜あるいはさび層が鉄筋表面に形成しているかに大きく依存する.中でも,結晶性の良い緻密なさび層が形成した場合には,保護性さびとして働き,腐食の進行を著しく抑制すると考えられる. 本研究課題では,腐食進行過程で形成する保護性さびの生成メカニズムを明らかにし,供用中のコンクリート構造物の鉄筋の腐食環境を制御することにより,さび層を改質することで,腐食の進行を抑制する方法を開発することを目的としている. 保護性さびを人工的に生成させるために,まずは保護性さびの生成が確認された構造物の腐食環境を調査することにより,生成メカニズムや生成条件を解明する必要がある.昨年度は,保護性さびの生成条件について検討するために,腐食進行過程で保護性さびの生成が確認された軍艦島において,腐食環境モニタリングを開始した.腐食環境モニタリングとしては,温湿度センサ,風速計を用いた環境モニタリングと,腐食センサを用いた溶液抵抗および分極抵抗のモニタリングを行っている.その結果,センサの設置個所により,溶液抵抗や分極抵抗に違いが確認されたことから,ラマン分光分析によりさび層の違いについても検討を行った.その結果,乾湿繰返し環境下では保護性のない剥離性さびが形成するが,比較的湿度の安定した環境ではピークシフトしたFe3O4の生成が確認されたことから,保護性さびの生成には湿度の影響が大きいことが分かってきた. また,コンクリート中における水の影響を確認するために,3種類の水セメント比の鉄筋コンクリート供試体を作製し,内部に温湿度計などを設置して,現在軍艦島で暴露試験を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画していた実験を行うことができたと考えている.ただし,軍艦島の鉄筋で確認された保護性さびは,ラマン分光分析において高波数側に100cm-1以上シフトしたFe3O4であったのに対し,腐食モニタリングで確認されたFe3O4のシフトは50cm-1程度であり,まだ100cm-1シフトは確認できていない.分析前の前処理の影響がある可能性もあるため,今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討により,実験室レベルでは30cm-1~50cm-1シフトのFe3O4は生成できるようになっているため,このシフト量のFe3O4の耐食性についても検討を行うこととする.耐食性については電気化学測定と塩水噴霧前後での質量変化により検討することとする.これぐらいのシフト量でどの程度耐食性が改善されているかにもよるが,今年度も引き続き軍艦島におけるモニタリングを継続し,保護性さびの生成条件についてさらなる検討を行い,さらに高波数シフトしたFe3O4の人工生成を目指すこととする.軍艦島で自然生成した保護性さびについて様々な前処理の方法で分析を行い,前処理の影響を確認し,最適な分析を行うための工夫も必要と考えている. 耐食性の改善にどの程度のピークシフトが必要なのかを知るためには,ピークシフトの物理的な意味を解明する必要があるため,これについても検討を始める予定である. また,6月で設置後1年を経過することから,暴露しているコンクリート供試体の一部を引き上げ,鉄筋に生成したさびの分析を行い,水セメント比によるさび層の違いが見られた場合には,各センサのモニタリング結果から考察することとする.また,必要に応じて水銀圧入法によるコンクリートの細孔構造の影響についても検討することとする.
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Research Products
(1 results)