2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H02273
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤森 真一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80585836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大城 賢 京都大学, 工学研究科, 助教 (00601569)
長谷川 知子 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60615524)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貧困 / CGE / AIDADS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では役割の異なる3種類のシミュレーションモデルを用いる。まず、①応用一般均衡モデルでは、異なるGHG削減の分担方法によるマクロ経済、各国の経済的負担への影響を定量化する。次に、②家計所得分布モデルは、ジニ係数、賃金や資本収益率と平均所得(一人当たりGDP)に関するシナリオを入力条件として所得分布を推計するモデルである。将来の所得分布は、現在の所得分布と将来のGDP成長率、上記の一般均衡モデルより得られるマクロ経済変数に基づいて推計する。 最後に、③家計消費モデルは、所得、貯蓄を考慮した予算制約の下で財・サービス別の支出割合を決定するモデルである。この時、所得階級や居住地(農村・都市部)によって異なる財別の価格に対する反応を考慮する。例えば、低所得者は食料価格の上昇に対して機敏に反応し、強く消費を落とす一方、高所得者は影響を受けにくいということが考えられる。 2年目では主としてそれぞれ所得、消費モデルの推定を実施した。これらは集約的な情報であるWorld Bankの集計された統計(所得分位がわかるPovcalnetと所得階級別の財消費支出がわかるGlobal Consumption Database)を用いてスタートした。 これらを基にしたモデル分析を実施し、世界全体の貧困人口の推定及び炭素税税収と貧困ギャップの比較分析を行った。その結果、炭素税税収は1.5℃や2℃に全球平均気温の上昇を抑えるような気候安定化策の下では、貧困ギャップより大幅に大きな潜在能力があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではモデルキャリブレーションを2年目までで終えて、3年目でのシナリオ分析を予定していたが、2年目で最初のシナリオ分析が終わったので、予定していた計画以上の進展があった。また、論文の出版も順調に行うことができ、専門誌Environmental Research Letters(IF=6.672)にて論文が出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の3点を実施する予定である。 第一に、国別の家計消費データを集めて、家計消費関数であるAIDADSのモデル内パラメータの精度向上に努める。これにより、各国の実情に応じた分析が可能となり、結果をより政策へ反映させやすくなることが予想される。ひとまず勘所のある日本、および留学生のいる中国を最初の事例として扱う。 第二に、アメリカ、カナダ等現在家計消費の情報をまだモデルに入れていない国の家計消費情報を収集することである。本研究の当初計画では絶対貧困を扱うこととしていたが、研究の進捗が極めて良好なため、相対貧困も扱うことを追加的に盛り込む。そのためには先進国も分析の対象として拡大する必要があり、家計消費のデータが必要不可欠となる。 第三に、気候緩和策の貧困人口への影響をシナリオ分析し、それらをろんぶんとして 取りまとめることである。
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