2020 Fiscal Year Annual Research Report
ホットアトムと含水MoO3多孔体による99mTc医療用放射性同位元素作製法開発
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19H02429
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
末松 久幸 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30222045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 達也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70323839)
南口 誠 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (90272666)
Do T.M.Dung 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (90638420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医療用放射性同位元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
αーMoO3ワイヤーを熱処理法で、デンドライトを蒸発法により作製した。これをターゲットとして用い、京都大学研究用原子炉にて5MW運転時に3x10^13n/cm2sの中性子束で室温20分間照射試験を行った。照射後の試料を20時間純水に分散し、遠心分離とフィルターによる濾過で水溶液を分離した。この水溶液の放射能をゲルマニウム検出器で、天然同位体濃度をICP-MSで測定した。 αーMoO3ワイヤーとデンドライトから作製した水溶液から、ターゲットで生成したMo-99の3-4%が水溶液に抽出したことが判明した。ICP-MSの結果、天然同位体のMo-98はターゲットの0.001%のみしか溶解していなかったことから、Mo-99の濃度は天然の同位体より非常に高かった。この結果から、核反応によって生じたホットアトムの運動エネルギー又は価数変化によりMo-99のみ選択的に水溶液に溶解したと結論された。 本実験結果により、αーMoO3多孔体をターゲットとし、核反応法により生じたホットアトムを活用すれば、ターゲットを水に分散することによりMo-99が効果的に溶出出来るという本研究の目的を実証することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の中性子照射と水による分散実験の結果、ホットアトムによるMo-99の水溶液の抽出が確認された。既存のMo-99製造法では、照射後のターゲット全量を高温のNaOH水溶液に溶解する必要があり、潜在的な危険性をはらんでいた。さらに、溶液中に存在する大多数のMo-98からMo-99のみを同位体分離する方法が不可欠であった。樹脂を利用する方法では、強酸を用いなければならないが、これは体内に注射する必要のある医療用放射性同位体の用途には不適当であり、開発は困難であった。本研究により、Mo-99を水のみで抽出する可能性を見いだしたことから、我が国で開発されている放射化法によるMo-99国内生産に道を拓いたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
他のターゲット、特にβ-MoO3粒子やウイスカーを用いて同様な中性子照射・水分散を行ない、α-MoO3との比較を行う予定である。
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