2019 Fiscal Year Annual Research Report
溶接模擬熱処理を応用した粒界組織制御による応力腐食割れに免疫なステンレス鋼の創成
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19H02472
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 博志 東北大学, 工学研究科, 講師 (30540695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 孝道 東北大学, 工学研究科, 技術専門職員 (20422090)
堀内 寿晃 北海道科学大学, 工学部, 教授 (20433419)
源 聡 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主幹研究員 (90577850)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オーステナイト系ステンレス鋼 / δ-フェライト / 応力腐食割れ / スピノーダル分解 / G相 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)粒界島状δ相分布組織を有するSCC耐性に優れた316L系ステンレス鋼の創成:母材成分と熱処理条件を実験変数とした島状δ相の成分・分布形態評価 オーステナイト系ステンレス鋼試料を、高周波誘導加熱により融点近傍まで昇温した後に急冷することで、粒界のみが優先的に溶融・凝固して島状δ相が分布した組織を作製した。母材の成分ならびに熱処理条件(最高温度、保持時間)をパラメータとして、それらが島状δ相の成分ならびに分布形態に与える影響を調査した。最適な熱処理条件の探索を行ったところ、今回用いた316L鋼では1340℃(おおよそ融点-30℃)にて20秒保持することで理想的な組織が得られることが明らかになった。また、Cr/Ni等量比の異なる2種類の316L鋼を用いて熱処理を実施したところ、Cr/Ni等量比が高い(フェライトが晶出しやすい)方が粒界島状δ相の分布も顕著であることが示された。一方で、これらよりCr/Ni等量比が高い304L鋼試料においては、δ相の晶出は限定的であった。
(2)熱時効劣化感受性の低いδ相の成分設計指針の確立と実証:島状δ相の熱時効挙動の評価と計算科学によるミクロ組織変化予測 フェライト相の熱時効硬化挙動について文献調査を実施し、これまでに研究代表者が得ている知見と合わせて考察することで、熱時効試験計画を策定した。熱時効試験は、300度台前半と475℃を中心に実施することにした。フェライト相内における熱時効ミクロ組織変化(G相析出とスピノーダル分解)を対象とした計算科学による予測モデルを構築する上で必要な熱力学データを精査し、新規に開発すべき熱力学データベースについて検討した。CALPHAD熱力学データベースにおいて、G相を考慮した熱力学データベースはGVER605が最新版であり、これを用いて各元素の温度依存項を検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「粒界島状δ相分布組織を有するSCC耐性に優れた316L系ステンレス鋼の創成」については、理想とする金属組織(粒界、特に三重点に島状δ相が広く分布する)を得るための熱処理条件の絞り込みは当初予定通り済んでいる。 「熱時効劣化感受性の低いδ相の成分設計指針の確立と実証」については、研究参画者全員による研究打ち合わせを複数回実施し、実験側研究者と計算側研究者が有機的に連携して研究を進めることが出来る見通しを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
「粒界島状δ相分布組織を有するSCC耐性に優れた316L系ステンレス鋼の創成」については、試料の化学組成によってはδ相晶出の程度が大きく異なる可能性が示された。すなわち、本コンセプトが成立する鋼種・成分範囲が限定される可能性が見いだされたため、これについては今後検討していく。 「熱時効劣化感受性の低いδ相の成分設計指針の確立と実証」については、温度加速した熱時効試験により十分にG相を析出・成長させた試料を作製し、G相サイズ・化学組成・数密度をTEM観察・分析により明らかにする。これを速やかに計算側研究者に提供し、G相析出予測モデルに反映させる。
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