2020 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient carrier transport and stable operation of organic thin-film transistors based on molecular layer-controlling technique
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19H02579
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒井 俊人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40750980)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 自己組織化 / プリンテッドエレクトロニクス / 結晶構造制御 / 界面制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機半導体の分子積層を自己組織的に制御する独自の技術を用いることで、高性能な有機トランジスタ(OFET)の形成を目指している。その高性能化へ向けた取り組みは以下の通りである。 ①層内分子配列の安定性の解明とその制御:分子積層を制御した半導体薄膜では、薄膜層内の分子配列がキャリアの輸送効率と密接に関係している。本研究では、半導体薄膜の昇温観察を通じて、層内の分子配列がわずかに変化する結晶多形相転移が起こることを見出した。さらに、この結晶多形は半導体骨格に付与する置換基をうまく設計することで、選択的に形成可能なことを見出した。これにより、本研究で対象とする2分子膜型有機半導体における分子配列の安定性の理解が大きく進展した。②低電圧駆動トランジスタの構築:OFETの低電圧駆動のため、撥液性がきわめて高い絶縁層の上に、高均質な半導体薄膜を構築する手法を開発した。これにより2ボルト以下の低電圧駆動と、高急峻なスイッチング特性が得られることを明らかにした。本研究により、高均質な半導体層と高撥水絶縁層の組み合わせが低電圧・安定駆動にきわめて有効であることが明らかとなった。③新規高性能有機半導体の開発:溶媒への溶解性と、均質製膜に適した高い層状結晶性を兼ね備えた新たな低分子有機半導体の開発を進めた。特に、これまで主に用いてきたBTBT系有機半導体から、π電子系を拡張した材料の探索を進めた。この半導体骨格に付与するアルキル基の位置異性体をうまく選択することで、OFETのなかではトップクラスの移動度(~10cm2/Vs)を誇る材料の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の取り組みにおいて、絶縁層と有機半導体の良好な界面を構築することで、鋭いスイッチング性能を達成できることが明らかとなった。さらに、溶媒への溶解性と、均質製膜に適した高い層状結晶性を兼ね備えた低分子有機半導体を新たに開発し、OFETのなかではトップクラスの移動度(~10cm2/Vs)が得られることを明らかにした。ここで得られたデバイス性能は当初の予想を越えるものであり、本研究は大きな進展を遂げつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果をもとに、さらに優れた層状結晶性と半導体特性を兼ね備えた有機半導体の物質開拓を進めることで、高効率キャリア輸送を実現する。特に、薄膜層内の分子配列を分子力学的に理解することで、より高度に分子配列を制御し高性能化を推進する。また、金属と半導体の接触抵抗を改善することで、駆動安定性や移動度の向上を目指す。
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