Outline of Annual Research Achievements |
FENE-dumbbell の運動方程式を精密解析し, 局所摩擦 z, バネ強度 k, および熱揺動力の強度 B が dumbbell の非線形レオロジー挙動に与える効果を理論的に明らかにした。特に, 規格化伸長粘度比 E と規格化ずり粘度比 S が, 流動下の z, k, B の変化率 rz = z/z(eq), rk = k/k(eq), rB = B/B(eq) (添え字 (eq) は平衡状態での量を表す) と流れの Weissenberg 数 Wi を用いて E = (rB/rk)/{1-2(rz/rk)Wi}/{1+(rrz/rk)Wi}, S = (rB/rk) と表現されることを, 世界で初めて見出した。これらの解析的表現は, z, k, B がレオロジー挙動に異なる効果を与えることを示し, 従って, E と S のデータから z, k, B を実験的に決定できる可能性を示唆する。 この結果に基づき, 屈曲性高分子鎖のより精密なモデルである Rouse モデルに対しても運動方程式の精密解析を行い, E, S およびそれらの時間微分, さらには鎖の伸長比を, z, k, B, Wi を用いて解析的に表現することに、世界で初めて成功した。この解析的表現は, これまで不明であった z, k, B の Wi 依存性を実験的に決定することを可能とする。さらに、この決定に必要となる部分重水素化ポリスチレン試料も合成した。この試料に対する実験は令和3年度に実行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FENE-dumbbell の運動方程式を精密解析し, 局所摩擦 z, バネ強度 k, および熱揺動力の強度 B が dumbbell の非線形レオロジー挙動に与える効果を理論的に明らかにした。特に, 規格化伸長粘度比 E と規格化ずり粘度比 S を, 流動下の z, k, B の変化率と流れの速さを表すWeissenberg 数 Wi を用いて解析的に表現さることに世界で初めて成功した。 これらの解析的表現は, z, k, B がレオロジー挙動に異なる効果を与えることを示し, 従って, E と S のデータから z, k, B を実験的に決定できる可能性を示唆する。この知見に基づき, 屈曲性高分子鎖のより精密なモデルである Rouse モデルに対しても運動方程式の精密解析を行い, E, S およびそれらの時間微分, さらには鎖の伸長比を, z, k, B, Wi を用いて解析的に表現することに成功した。この解析的表現は, これまで不明であった z, k, B の Wi 依存性を実験的に決定することを可能とする。さらに、この決定に必要となる部分重水素化ポリスチレン試料も合成した。この試料に対する実験は令和3年度に実行する予定である。 上記にように、令和2年度の本研究では新しい理論的知見が得られ、さらに、この知見に基づく実験のための試料も合成された。この観点から、本研究は、概ね順調に進展していると結論される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度, 2年度に得た知見に基づき、最終年度 (令和3年度) には、ポリスチレン試料に対する上記の実験を遂行し、局所摩擦 z, バネ強度 k, および熱揺動力の強度 B が流動とともにどのように変化するかを明らかにする。さらに、 z, k, および B の流速 (Weissenberg 数) 依存性は高分子の化学種に応じて変化すると予想されるので、この予想を確認すべく、ポリスチレン誘導体についても実験を行い、化学的構造が非線形レオロジーという物理的性質に与える効果を明らかにする。得られた結果は、米国レオロジー学会 (SOR)、米国物理学会 (APS) などで発表し、また、Macromolecules 誌などに論文として公表する予定である。
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