2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the molecular mechanism of the innovative fertilizer that greens the desert: unknown function search of phytosiderophore
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19H02851
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50414123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 佳子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 特任研究員 (60256047)
中山 淳 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (60743408)
KARANJIT SANGITA 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 特任助教 (60784650)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ムギネ酸 / アルカリ性不良土壌 / ファイトシデロフォア / トランスポーター / ムギネ酸プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
・本年度ではアルカリ性不良土壌でイネ科植物を正常に生育させる革新的肥料PDMAの2工程合成を達成し、PDMAの低コスト大量供給法を確立した。本合成法は製法特許として本年度特許出願した。また、実際のアルカリ性圃場でPDMAの肥料としての有効性を明らかにし、論文発表およびプレスリリースを行った。さらに、PDMAの構造簡略化体も開発し物質特許の出願を行った。 ・本研究課題で開発したYSLトランスポーター標識プローブを用いて様々な植物でトランスポーター標識を行った。その結果、イネ、オオムギ 、トウモロコシなどイネ科の植物においてYSLトランスポーターの存在が確認されたが、キュウリやコマツナなどのイネ科以外の植物ではトランスポーターは標識されなかった。本プローブを用いたトランスポーター標識実験は、YSLトランスポーターがイネ科植物のみに発現しているという従来の学説を支持する結果となり、本プローブがYSLトランスポーターのみを特異的に標識できていることを明らかにした。 ・ムギネ酸の蛍光標識体の合成を行い、土壌に存在する細菌およそ90種類への投与を行い、ムギネ酸を吸収・利用する土壌細菌の探索を行った。 ・ムギネ酸標識プローブの合成法を応用し、インドールアルカロイドであるtronocarpineの簡便な全合成を達成した。
以上の成果を基に、国内学会発表11件、招待講演1件、査読付き国際論文6報、特許出願2件、プレスリリース1件、ニュース報道2件、新聞報道多数の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、ムギネ酸の誘導体である革新的肥料PDMAの肥料としての有効性を実証した論文がNature Communicationsに掲載され、ニュース・新聞などで多数報道され大きな反響を得た。また、PDMAの構造簡略化体に関する物質特許や2段階合成に関する製法特許など2件の特許出願も行った。さらに、インドールアルカロイドであるTronocarpineの全合成がAngew. Chem. Int. Chem.に掲載されるなど一定の成果を得た。 一方、共同研究を基盤とする研究についてはコロナ禍の影響により進捗に遅れが生じている。特に、都市部研究機関と共同研究は非常事態宣言等の影響により大幅に遅れが生じた。 また、昨年度までにトランスポーターを捉えるムギネ酸プローブおよび植物体内での挙動を明らかにするムギネ酸プローブがそれぞれ開発できたことから、本年度ではこれらを用いて植物や細菌のムギネ酸取り込み機構を解明する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大防止のために突然の研究室の閉鎖などが繰り返し生じたため、鉄欠乏植物やトランスポーター過剰発現細胞を定期的に再現性良く同じ状態で作成することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、組織内追跡用ムギネ酸プローブを用いて、根から吸収されたムギネ酸の植物組織内での局在を明らかにすると共に、ムギネ酸類が植物にリサイクルされているかについても明らかにする。また、本プローブをイネ科以外の種々の植物にも投与し、イネ科以外の植物がムギネ酸類を利用しているかについても実験的に明らかにする。ムギネ酸を取り込んでいるイネ科以外の植物が見出された場合は、トランスポーター標識プローブを用いて、ムギネ酸類を取り込む未知のトランスポーターを同定する。また、根圏細菌についても同様の検討を行う。すなわち、ムギネ酸を取り込む根圏細菌を同定した後、トランスポーター標識プローブを用いて根圏細菌が有する未知の鉄イオン取り込みトランスポーターの同定を試みる。 これと並行して蛍光標識基と光親和性標識基を併せ持つムギネ酸プローブを合成し、ムギネ酸と結合するタンパク質の探索についても検討する。
また、本研究グループはムギネ酸の類縁体であるニコチアナミンが動物の小腸からの鉄イオン吸収に関わっていることを本年度に報告した。そこで、ムギネ酸と同様の手法を用いて蛍光標識ニコチアナミンを合成し、小腸上皮細胞のニコチアナミン取り込みの蛍光観察を行う。これにより、動物での鉄イオン取り込み機構の解明を試みる。
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Research Products
(20 results)