2020 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルバイオロジーとゲノム編集で拓く統合的ストレス応答機構の解明と創薬応用
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19H02853
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
親泊 政一 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (90502534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
親泊 美帆 徳島大学, 先端酵素学研究所, 特任助教 (00596158)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス応答 / ケミカルバイオロジー / CRISPRゲノムワイドスクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
約22万種類の東京大学創薬機構化合物ライブラリーから22万種化合物を探索し、東京医科歯科大学の細谷孝充教授らのグループと共同で、新規同定した化合物IBT21が小胞体ストレスで生じるタンパク質の凝集を抑制することを見出した。IBT21がどのようにして小胞体ストレスを緩和しているかを明らかにするために、芳香族アジド基と脂肪族アジド基を導入したIBT21(diazido-IBT21)をプローブとして合成した。このプローブを用いることで、光照射すると芳香族アジド基が標的タンパク質中の求核性アミノ酸残基と共有結合を形成でき、さらにクリック反応により脂肪族アジド基にビオチンを付加するとストレプトアビジンビーズでプローブに結合するタンパク質を回収することができた。さらに、質量分析器を用いて解析することで、回収した標的タンパク質を同定することができ、IBT21に選択的に結合するタンパク質の60%近くが小胞体で合成される分泌タンパク質や膜タンパク質であることが見いだすことができた。IBT21は、神経変性疾患の原因となる誤って折り畳まれたタンパク質の凝集を抑制して細胞保護に働くことから、アルツハイマー病やハンチントン病、プリオン病といった神経変性疾患の新たな治療薬候補となることが期待される。この成果は、Elife. 8. pii: e43302 (2019)に採択された。 研究分担者は、臓器特異的かつ人工的リガンド依存的に統合的ストレス応答を過剰に活性化することで発症するサルコペニアモデルマウスを用いて、統合的ストレス応答を阻害する遺伝子を同定を行い、また、その解析補助業務を行った学生に謝金を支払った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに統合的ストレス応答を活性化できる化合物を見出し、活性化を制御するタンパク質を同定することができた。細胞レベルでの機能解析も順調に進んでいる。 IBT21に関してはeLifeに報告しただけでなく、さらに誘導体の合成展開も行い、マウスにおける薬物動態解析から、脳内移行性も確認できた。そこで、小胞体ストレスが関与する中枢性尿崩症モデルマウスを樹立している名古屋大学と共同研究を開始しており、マウスを用いた個体レベルでの解析も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに同定した化合物を用いて、統合的ストレス応答関連疾患治療の概念実証を行う。 統合的ストレスが関連する病態マウスとして、すでに樹立しているサルコペニア(筋萎縮症)の原因となりうる骨格筋での過剰な統合的ストレス応答の活性化させたマウスのほかに、統合的ストレス応答制御が治療に有効であることが報告されている実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスでの検討を計画している。研究分担者は、当該マウスに毒性をみとめない最大用量を腹腔投与して検証を行う。研究代表者においては、病態スコアなどを治療指標として効果の評価を行う。また、これらの解析補助業務を行う際の学生の謝金を計上している。
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Research Products
(3 results)