2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the molecular mechanism of genotypic variation in the salt removal ability of rice leaf sheath
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19H02942
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三屋 史朗 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70432250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
カルタヘーナ ジョイス 名古屋大学, 生命農学研究科(国際), 特任准教授 (10519929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / 耐塩性 / 塩排除能 / 葉鞘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、葉鞘での塩排除能の異なるイネ品種を用いた、イネ葉鞘における塩排除能の向上のカギとなる遺伝子、分子機構を明らかにすることである。この目的を達成すると、地上部に運ばれた塩を葉鞘により多く蓄積し、葉身への塩の流入を抑えるための分子育種の礎となり、イネの耐塩性を向上させることができる。 本年度は、前年度見出した葉鞘での塩排除能の異なるイネ二品種の交配に成功した。さらにF2集団を作り出すことに成功した。これらの材料は、次年度QTL解析に使用する予定である。 また、昨年度イネゲノムリソースセンターより種子を分譲いただいた塩輸送体遺伝子にTos17が挿入された変異株の中から、葉鞘におけるカリウム蓄積に異常がみられる変異株の選抜に成功した。葉鞘はカリウムが不足すると葉鞘でのカリウム蓄積を抑え、カリウムが過剰になると葉鞘のカリウム蓄積を増やす。通常は葉鞘にはカリウムが多く蓄積して葉身のカリウム濃度を調節していることが示唆された。この葉鞘カリウム蓄積に関係がある遺伝子である可能性がある。また、このTos17変異株に、原因遺伝子にCaMV 35Sプロモーターでドライブさせるようにしたプラスミドをアグロバクテリウム法で導入し、相補実験の準備を行った。現在T1種子を採取するため生育を行っている。次年度はさらにこのカリウム蓄積と塩輸送体遺伝子の因果関係、および生理的意義の解析を行う予定である。 また、葉鞘での塩排除能の異なるイネ2品種を用いて、葉鞘における塩輸送体遺伝子の発現量および塩応答性を比較した。その結果、葉鞘における塩排除能の高い品種で発現量の多い塩輸送体遺伝子を複数見出すことに成功した。これらの遺伝子群が葉鞘の塩排除能の品種間差を生じる原因である可能性があるため、今後さらに調査を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
QTL解析用材料の作製が予定通りに進み、来年度QTL解析を行う準備が整った。さらに、Tos17挿入変異株を用いた実験より、葉鞘のカリウム塩排除能の原因となる塩輸送体遺伝子が見出され、さらなる生理実験を行うための材料作製も予定通りに進んだ。これらのことより、計画した研究はおおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度葉鞘の塩排除能に異常を示したイネTos17変異株の原因遺伝子に注目した生理実験を行うため、材料の作製をなんとか終えたい。また、前年度は葉鞘の塩排除能に注目したGWAS解析を行い、Exonに有意なSNPを持つ遺伝子にのみ注目したが、今年度は有意なSNPを含む領域に含まれるそのほかの遺伝子(転写因子など)に注目して、さらにTos17挿入変異株を入手し、葉鞘の塩排除能に対する影響を調べる。 また、QTL解析を成功させ、葉鞘の塩排除能を強化してイネ耐塩性を向上させる分子マーカーを見出す。
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Research Products
(5 results)