2019 Fiscal Year Annual Research Report
個体別環境センシングが可能にするトマト難解析形質の分子遺伝学的研究
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19H02951
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山本 英司 明治大学, 農学部, 特任講師 (40738746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トマト / 環境センシング / モデリング / ゲノムワイド関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
トマト農業生産に深刻な被害をもたらしている果実生理障害の発生には様々な環境条件が複雑に関与するとされているが、栽培試験ごとに発生時期・程度が異なるなど形質発現が不安定であり、よって生産現場における主たる発生要因は明らかになっていない。 本年度は「個体ごとの生育環境を記録するセンシングシステム」を用いて、栽培温室内のトマト株の間での生育環境の違いを計測し、これらが果実生理障害の発生に与える影響について統計モデリングを用いた解析を行なった。測定した環境項目は、日射量、気温、湿度、土壌温度および土壌水分含量の計5項目である。統計モデリングには様々な方法を試したが、最終的に勾配ブースティング決定木を用いた。環境情報は、定植後から全生育期間にわたって10分おきに記録した。解析の対象とした形質は、果実生理障害である裂果に加え、重要農業形質である果実糖度と着果率である。その結果、上述の3形質において、同一栽培温室内であっても生育環境のわずかな違いが最終的な形質値に影響を与えることを確認できた。また、時系列に沿って解析を行うと、裂果については収穫直前、果実糖度については果実肥大期全般、着果率については開花直後の環境条件が最終的な形質値に影響を与えており、これまでの研究から提唱されている説と良い一致を示した。なお、本課題で重要視している果実生理障害の1つである尻腐れ果については、信頼のおける解析結果が得られなかったため、統計モデリングの更なる改良が必要とされた。これらに加えて、研究課題の終盤に予定しているゲノムワイド関連解析について、遺伝子型x環境相互作用が検出可能な統計手法を開発した (Yamamoto and Matsunaga 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始初年度は、当時の研究実施機関であったかずさDNA研究所において令和元年房総半島台風の被害に遭い、栽培試験中の集団のみならず栽培施設や環境センシングシステムに甚大な被害を受けてしまった。また翌年度においては、栽培試験準備期に新型コロナウイルス感染症の被害拡大により農業資材等の納入が大幅に遅れ、適期での栽培試験が実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の欄に記載した理由、及び現在も引き続く新型コロナウイルス感染症の影響によって当初計画に沿った研究実施は困難な状況にあるが、環境変動とトマト形質の統計モデリングについては本課題開始以前より取得していたデータを有効活用することで対応する。トランスクリプトーム解析については、当初の予定とは時期が異なってしまったものの、1度目の栽培試験におけるサンプリングが終了したため、同時に取得していた環境データの解析結果と合わせた上でRNA-seqへと供試する予定である。ゲノムワイド関連解析については、既に発表済みの解析法を複雑な環境データにも対応できる仕様へとさらに改良する予定である。
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Research Products
(1 results)