2019 Fiscal Year Annual Research Report
Scaling of whole root/shoot respiration from seedlings to giant trees
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19H02987
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
森 茂太 山形大学, 農学部, 教授 (60353885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 恵子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00420076)
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
吉村 謙一 山形大学, 農学部, 准教授 (20640717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 個体光合成 / 個体蒸散速度 / 地上部呼吸 / 根系呼吸 / 根系分配 / スケーリング / 個体生理学 / 物理化学的制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、芽生え~成木の個体レベルの光合成、蒸散速度の評価方法の開発とその検証に主眼を置いた。コロナ禍のため分担者との十分な野外測定が行えなかったが、山形大学構内にあるブナ鉢植え等を用いて、芽生え~成木の個体レベルの光合成、蒸散、呼吸の測定法を開発、検証した。樹木サイズに応じ、約数百ccから約数百Lの装置を自作して使い分けた。 光合成、蒸散は一定気温(約30℃)で光飽和時のポテンシャルを測定した。チャンバー内部にはCO2センサーとともにDCファンを入れ空気を十分に攪拌してCO2濃度変化を均一に保った。個体の蒸散速度は個体の重量減少を電子天秤で評価した。ブナ個体はブナ6産地(山形、高知、静岡、長野、岩手)、アメリカ産ブナを準備した。当年生実生から5年生の稚樹まで高さ約10cm~100cmの個体を用いた。さらに、個体光合成、蒸散速度を測定後、個体呼吸速度も測定した。 測定の結果、従来ブナについて報告されてきた葉面積当たりの光合成速度、蒸散速度とほぼ同じ値が確認された。我々が測定した光合成、蒸散速度はともに個体レベルの樹冠内の平均値である。本結果は、個体光合成、蒸散速度として生態系機能評価ベースとして価値があるだろう。さらに、水利用効率(個体光合成の最大値/個体蒸散速度の最大値)を個体レベルで評価したところ、産地間の差は不明確で、個体サイズに応じて一定傾向のシフトが確認された。 従来、個葉光合成に産地間差が知られるが、一方で、サイズに応じた光合成のシフトも知られている。しかし、芽生え~成木で【産地・環境により個体レベルの光合成、呼吸、蒸散、水利用効率の制御幅】がどのように個体サイズに応じたシフトをするか未解決である。今後は、さらに芽生え~成木へ個体サイズのレンジ幅を広げて信頼性の高い実測による検証を進める必要があろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度末は、コロナ禍のため県境を越えた移動が制限され、研究者間での議論を十分に行うことができなかった。さらに、年度末には学会開催が中止になり、十分な合同の野外測定を行うことができなかった。さらに、予定していた異分野の海外研究者訪、国際学会への参加も見送った。生物個体の機能は、個体サイズが大きいほど重力等の影響が強くなることが知られており、広い個体サイズ幅では物理化学的な制御が重要とされる。この点は、生物学分野を超えた物理化学的な側面も含んだ広い議論が必要で海外研究者との情報交換を今後は進める必要がある。 しかし、本年度は研究計画を変更することで測定方法の開発と検証を中心に行うことで「やや研究計画は遅れた」ものの、次年度以降の対応もふくめて当研究計画の最終段階では当初の目的を達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、樹木個体レベルの光合成、蒸散、呼吸速度の測定方法を開発し、その結果の妥当性を検証した。本年度に測定対象とした個体サイズ幅がやや限定的なため、今後は成木や芽生えなど、対象個体サイズを広げた測定を継続することで、個体サイズを説明変数としたモデル化を進める予定である。 同一個体サイズであっても産地や環境(光環境、立木密度、土壌条件、乾湿など)により、樹木個体の器官配分は最適配分されることが広く知られている。一方で、器官特性のontogenetic shiftも知られており、実生と成木の間でも器官配分や器官機能は大きく変動する。しかし、芽生え~成木で【産地・環境による個体機能や形態の制御幅】のontogenetic shiftを解明するには、環境を網羅しつつ、サンプル個体サイズを芽生え~成木まで拡張する必要がある。 以上のように、様々な環境を網羅した樹木個体の機能量や器官配分のontogenetic shiftの定量化は困難である。一方、多くの研究者がメタデータにより分析を進めており、一定の成果が上がっている。しかし、ここには器官からの個体レベル推定値も多く含まれ、推定方法も様々であり、根を含んだ樹木個体全体を実測した信頼性の高いデータは非常に限定的である。今後、幅広いサイズのサンプリングと正確な個体レベルの実測で、データの量と質を高める必要がある。 既に、我々は樹高34mの根を含む個体全体を測定装置に入れて呼吸測定を行う等、ほぼフル個体サイズ(芽生え~大木)の1000個体で構成される信頼性の高い個体呼吸データベースを構築してきた。今後は、これらのデータベースも活用しながら個体呼吸、光合成、蒸散速度の実測から、当初の目的である「CO2収支の林齢シフトモデル、樹木大型化の適応的意義の解明、根系発達が制御する革新成長モデル」等を進める予定である。
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Research Products
(18 results)