2020 Fiscal Year Annual Research Report
2015年口永良部島噴火後の植生遷移を規定する地下部生態系の役割の解明
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19H03003
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
早坂 大亮 近畿大学, 農学部, 准教授 (20583420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川西 基博 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50551082)
奈良 一秀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60270899)
澤畠 拓夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (80709006)
橋本 洸哉 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (90832436)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生態遷移 / 生物間相互作用 / 火山撹乱 / 菌根菌 / クロマツ / 節足動物 / 植生遷移 / 島嶼生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2015年に鹿児島県口永良部島で発生した噴火直後の特異な現象、すなわち一次遷移の一般的な先駆植物に先立ってクロマツを主体とした「樹木」が広域に侵入したメカニズムを解明するにあたり、地上部-地下部の関係性から議論することを目指すものである。 研究2年目は、前年度に引き続き、撹乱跡地における植生(植物種子を含む)、菌根菌および種子・菌根菌散布者等の調査を実施した。なお、コロナ禍で当初計画を達成したとは言い難い。各項目の成果は以下の通りである。 1)植生(植物種子を含む)調査および地形測量: 森林域において、森林を対象として植生調査と埋土種子調査を行った。照葉樹二次林、スギ植林、火砕流跡地の各林分間で、植物の種組成と種多様性を比較した。結果、火砕流攪乱後の植生回復過程では、シカの不嗜好種である低木とシダ植物の優占度が著しく大きいことが明らかになった。同様の傾向は埋土種子集団でもみられ、火砕流による攪乱が種多様性、特に均等度の低下を引き起こしている可能性が示唆された. 2)菌根菌調査: 火山泥流跡地に生育する1-4年生クロマツの外生菌根菌群集を調査した。その結果、マツ科樹木に特異性の高いショウロ属・ヌメリイグチ属やアテリア科が高頻度で検出された。 3)種子・菌根菌散布者(主に節足動物)調査: 引き続き、火砕流跡地およびその周辺で土壌動物調査を行った。前年度と同様、火砕流跡地で土壌動物があまり得られなかったことから、火砕流跡地のような未成熟土壌は、土壌動物の生息環境としては不適、または侵入できても定着できにくい場である可能性が示唆された。 4)群集解析等: 口永良部島における既存の生物データを用いて、群集組成におよぼす噴火前の植生履歴と火山攪乱のタイプの効果について予備解析を行った。その結果、植生履歴と火山攪乱のタイプの双方が群集組成に影響をおよぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの猛威にともなう所属機関の厳しい研究・行動制限措置により、調査・出張自体ままならず、当初計画を達成できたとは言い難い。また、調査地(口永良部島)は島外からの入島を厳しく制限しており、さらに、口永良部島の噴火レベルは、依然としてレベル3(入山規制)のままである。 以上の結果、多くの季節で噴火跡地での生物・環境調査が行えず、モニタリングデータの欠損につながっている。そのため、進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、調査実施の要件(出張許可、入島制限など)が緩和されない場合は、代替措置として、代替の調査地あるいは比較調査地を設定し(たとえば伊豆大島等)、噴火撹乱の島嶼生態系への影響に関する共通性や相違性の洗い出しを行うなどの対応をとる。他方で、新型コロナウイルスに対する行動規制が緩和された場合は、早急に野外モニタリングを再開する。野外データが取得でき次第、菌根菌同定等の室内作業(遺伝解析)も並行して進める。また、統合可能なデータが揃い次第、噴火後の地上部-地下部生物群集の遷移過程の解明に向けた解析を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)