2019 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯における遷移型アグロフォレストリーの導入普及条件と持続可能性に関する国際研究
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19H03057
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
千年 篤 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10307233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 祐彰 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60323755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アグロフォレストリー / ブラジル・アマゾン / ガーナ / 持続可能な農業システム / 進化経済論的アプローチ / 農業普及 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラジル・パラー州トメアスー日系入植地において内発的に開発された遷移型アグロフォレスリー(SAFTA)の発展の特徴を明らかにするため、トメアスー総合農業協同組合(CAMTA)組合員別出荷量データ(1994~2018年)を収集し、データベース(約150戸)を作成した。上位層の出荷量及び出荷額の経年変動を試算した結果、SAFTA農家は、非SAFTA農家に比較して、安定的な収入を実現していたことが明らかになった。品目別数量・金額の年次変化の関係に注目すると、SAFTAの段階ごとに特定作物が選択・拡大され、同時に次の遷移段階の特定有望作物が選択・導入準備されていたことが示唆された。 持続型アグロフォレストリーの成立条件等に関する理論的検討については、関連論文レビューを中心に進め、アグロフォレストリーの持続可能性を示す指標の検討を行った。 ガーナにおけるSAFTA導入定着条件の検証については、9月に予備的現地視察を行った。2箇所の実証圃場の生育状況を観察するとともに、カカオ主産地であるウエスタン州、イースタン州、セントラル州における先進農家及びCSSV(カカオ膨梢ウイルス)感染被害の農園を視察し営農の現状及び課題を確認した。また、ガーナ大学、FAOアフリカ事務所、COCOBOD等の諸機関の関係者と、同国のカカオを基盤とするアグロフォレストリー普及の現状と課題を協議し、今後の本調査研究についての協力の合意を得た。さらに、オランダのKIT(Royal Tropical Institute)が収集・公表しているデータ(3,045戸)を利用し、ガーナのカカオ農家の特徴及びカカオの収量や病虫害の現状に関する試行的分析を行った。カカオ生産の諸変数は階層間・地域間の格差が大きいこと、混植がカカオ生育初期を中心に行われているが、自給的生産の範疇を超えていないこと等が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の基盤を成す資料・データの収集や、ブラジル、ガーナの研究協力者との打ち合わせは順調に進んでいる。ブラジルでの現地調査は、新型コロナウイルス感染拡大のため中止せざるを得なかったが、トメアスー総合農業協同組合(CAMTA)の協力により、組合員ベースの品目別出荷データを入手でき、試行的な分析を行うことができた。ブラジル関係者とはeメールにより定期的に連絡をとりながら今後の研究に関する議論を重ねている。 ガーナにおける現地調査は予定どおり実施できた。FAOの協力を得ながら、今後もガーナ大学付属カデ農場のカカオ実証圃場及びOHAYO GHANA基金のイサワン実証圃場における参与観察を行っていくことが確認された。カデ実証圃場では、ガーナとブラジルの普及技術の方法(剪定など)の差異に関する分析を行う予定である。気候変動により年々、降雨量及び時期の変動が激しくなっており、実証圃場の運営は困難を伴うときも多いが、逐次、協議しながら取り組む方向で合意された。
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Strategy for Future Research Activity |
SAFTAの発展経路を解明するため、前年度まで入手済みの資料・データを用いて、誘発的技術革新仮説の観点から再考するとともに、SAFTA経営の持続可能性を規定する5種の資本(①自然資本、②物的資本、③人的資本、④社会関係資本、⑤経済/財務資本;Quant, 2018)の具体的な指標を決定する。以上を踏まえ、SAFTA農家を対象にして現地調査を実施し、必要データを収集する。収集したデータを用いて、SAFTAは地域資源条件(要素価格体系)の変化に伴いどのように変遷してきたのか、持続可能性を規定する5種の資本がどのように変遷してきたのか、という点を検証する。 持続型アグロフォレストリーの成立条件等の理論的検討については、関係文献レビューと国内の森林資源と結びついた集約的農業経営に関する調査を通じて取り組む。また、熱帯におけるアグロフォレストリーの成立条件の一般化に向けて、インドネシア・西カリマンタン州のアグロフォレストリー小規模経営を対象にした現地調査を実施し、必要データを収集する。 ガーナにおけるSAFTA導入定着条件の検証については、2箇所の実証圃場における栽培・生育状況に関する情報・データを入手する。ガーナのカカオ生産ならびカカオを基盤とするアグロフォレストリーの現状を把握するため、KITデータを利用し、生産性、収益性ならびに間作物との関係性等について地域性に配慮しながら分析する。また、カカオ農家を対象にして現地調査を実施し、SAFTA導入に向けた制約条件を明らかにする。 2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、申請時に予定していたブラジル、ガーナにおける現地調査を大幅に縮小せざるを得ないため、前半は現地調査の入念な準備を行うとともに、既存の資料・データを活用した分析を中心に行い、後半に現地調査を実施する。
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Remarks |
FAOガーナ事務所からの要請により、11月に研究分担者の山田とポスドク研究者の加賀美が専門家として、ガーナに2週間、招聘され、ガーナ大学付属カデ農場において開催されたカカオを基盤としたアグロフォレストリー普及のワークショップを研究協力者であるガーナ大学のNKANSAH教授とともに主宰した。参加者はCOCOBOD普及員、CRIG研究者を中心に約30名であった。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] How can we accelerate shade tree planting on West African cocoa family farms for mitigating the rapid climate change?2019
Author(s)
YAMADA, Masaaki, NKANSAH, George Oduro, TAMURA, Yoshikazu, OWUSU, Ebenezer Oduro, TAGUCHI, Makiko, KAGAMI, Shiho, FUJIWARA, Kazuyuki, HOSHIKAWA, Akira, UMEMURA, Helio Makoto, MIHARA, Kae, BOLIKO Mbuli Charles, BERT, Baptiste, and CHITOSE, Atsushi
Organizer
The 4th World Congress on Agroforestry
Int'l Joint Research
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[Presentation] Toward sustainable cocoa production in West Africa with successional agroforestry system developed by Japanese in the Brazilian Amazon: an agricultural adaptation to climate change2019
Author(s)
CHITOSE, Atsushi, YAMADA, Masaaki, NKANSAH, George Oduro, KAGAMI, Shiho, HOSHIKAWA, Akira, TAMURA, Yoshikzu, TAGUCHI, Makiko, FUJIWARA, Kazuyuki, UMEMURA, Helio Makoto, KHALID, Nadzrul Anuar, and ADAMS, Aziz Abdulai
Organizer
東京農工大学サイエンスフェスタ2019