2021 Fiscal Year Annual Research Report
International study on dissemination conditions and sustainability of the successional agroforestry system in the tropic
Project/Area Number |
19H03057
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
千年 篤 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10307233)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 祐彰 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60323755)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アグロフォレストリー / ブラジル・アマゾン / ガーナ / 持続可能な農業システム / 進化経済論的アプローチ / カカオ |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラジル・パラー州トメアスー日系入植地において開発された遷移型アグロフォレストリー(SAFTA)の発展経路に関する研究に必要な追加データを入手するため、トメアスー関係者とEメール及びオンラインミーティングを行い、前年度まで作成したデータベースを補強し、発展の要因に関する分析に取り組んだ。 Mercer(1998,2004)が提示したアグロフォレストリー導入の5つの決定要因(①経済的誘因、②生物的・物理的条件、③リスクと不確実性、④世帯の選好、⑤資源賦存状況)の枠組みを援用して、トメアスー総合農業協同組合の各種資料から構築したデータベースおよび調査から得た農家25戸に関するデータ・情報を用いて分析した。SAFTAの発展において最も重要であったのは①であり、日系農業者は初期条件である④と⑤のもと、①に動機づけられ、②と③については段階的に学習・評価しながらSAFTAを発展させてきたことが示された。 ガーナにおけるSAFTA導入定着条件に関する研究については、オランダKIT(Royal Tropical Institute)公表データを用いて、ガーナにおけるカカオ病害発生の要因に関する分析(前年度の継続)と現地調査の準備に取り組んだ。 病害発生の要因については、自然条件は同一ながら土地所有制度及び政策が異なる隣国コートジボワールとの比較(国境周辺・対象農家は計2,228戸)のデータを用いて、エリート農家の役割に焦点をあて空間回帰不連続設計(RDD)枠組みで定量的に分析した。分析結果から、非エリート農家層のカカオ園においてアグロフォレストリー導入がより必要であるものの、導入の成果は逆にエリート層のカカオ園でより顕著に発現する可能性が高いことが示唆された。また現地調査の準備については、対象地域の選定ならびにアグロフォレストリー導入意向等に関する質問票の設計を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度の計画は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、令和4年度まで計画の変更を行い、延長して行った SAFTAの発展の要因に関する研究ついては、当初、Quant(2018)が示した持続可能性を規定する5種の資本の観点から分析する予定であったが、分析に必要となるデータの入手が困難であったため、代替可能な理論枠組みを検討し、その結果、Mercer(1998,2004)が提示したアグロフォレストリー導入の5つの決定要因の枠組みを採用することとした。この枠組みで分析した結果を前年度で得られた内容を含め、ドラフト論文に取りまとめたが、現地での事実の一部確認が遅れ、学術誌への投稿までに至らなかった。 熱帯の持続型アグロフォレストリーの成立条件の理論化と展望については、当該年度においても文献調査が主となり、ブラジルならびにインドネシアの調査から得た情報・データを効果的に活用した考察まで至らなかった。 ガーナにおけるSAFTA導入定着条件の検証については、前年度同様、新型コロナウイルス感染拡大により、ガーナ大学付属カデ農場のカカオ実証圃場及びOHAYO GHANA財団のイサワン実証圃場における参与観察を実施できなかった。カデ農場では作付初期の限られたデータではあるが収益性を確認できたものの、イサワン農場で連携研究を牽引してきたOHAYO GHANA財団理事長が逝去したため、連携の中止を余儀なくされた。このため、オランダKIT(Royal Tropical Institute)の公表データ(3,045戸)を利用した定量分析に加え、カカオ農家を対象にした現地調査から収集するデータを用いた実証分析を当該研究の中核に据え、研究に取り組んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
SAFTAの発展経路とその要因の解明については、今後、論文を展望についての考察結果を追加・補強し、学術誌への投稿・受理を目指す。また、SAFTAの今後の展望に関連して、日系農家の分極化に伴うSAFTAの変容、さらにSAFTAを含む地域農業の再編に関する調査を行ったところ、日系農家の継承問題が極めて深刻であることが明らかになった。トメアスーの日系農家の継承問題の実態解明は新たな研究課題である。 ガーナにおけるSAFTA導入定着条件の検証については、カカオ農家を対象にして実施した現地調査から得られたデータを用いて、カカオ農家の意向に対する定量的分析を継続して行う予定である。
|
Research Products
(2 results)