2020 Fiscal Year Annual Research Report
農山漁村におけるインバウンド需要の潜在力と社会的受容性の解明
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19H03058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 耕太 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50263124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 京平 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20552962)
山根 史博 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (40570635)
法理 樹里 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 研究員 (90744756)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インバウンド |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間内に3つの課題に取り組む。 【課題1】観光コンテンツ別に、各都道府県の農山漁村インバウンド需要の実態を把【課題2】観光コンテンツ別に、各都道府県の農山漁村インバウンド需要の潜在力を予測【課題3】インバウンドの増加に対する農山漁村の社会的受容性を分析 課題1の分析に用いるデータは『訪日外国人消費動向調査』である。これは観光庁2010年から開始したアンケート調査であり、外国人観光客の訪問地や訪問目的の実態に役立つ大標本の政府統計である。(2017年の回答者数は約40,000名)。この調査には訪問地の名称もしくはその都道府県名と「今回の訪日でしたこと」を問う質問があり、本研究ではこれらへの回答を分析に用いた。質問「今回の訪問でしたこと」の選択肢の中で、農山漁村のみが提供できる観光コンテンツとして「スキー・スノーボード」と「自然体験ツアー・農山漁村体験」があり、これらを目的に農山漁村を訪問した外国人観光客数を都道府県別に概算した。こうした農山漁村を訪れるからこそ体験できる属地的な観光コンテンツを洗い出し、コンテンツ別・都道府県別に農山漁村への外国人観光客数を概算・地図化を進めた。 課題2では、コンテンツ別・都道府県別に、モンジュ・カントロヴィッチの双対性モデルを応用して得られる農山漁村インバウンドの効用値からそれぞれの需要関数を推定し、農山漁村インバウンド需要の潜在力を予測・地図化するためのデータ収集を行った。 課題3では、事前:事後の双方から、インバウンド増加に対する農山漁村の社会的受容性の実態の把握と規定構造の解明を試みた。今現在外国人観光客が訪れていない観光地を「事前」、既に相当数の外国人観光客が訪れている観光地を「事後」の調査対象として選定した。それぞれの住民へのヒアリング調査を通じて、インバウンド増加への住民の態度を把握する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた3つの課題に取り組む。以下、課題別に進捗状況をまとめる。 課題1では、昨年度とりまとめたデータの拡充を進めた。 課題2では、昨年度開発した需要関数推定法を用いて農山漁村インバウンド需要の潜在力の予測を開始した。必要となるデータのうち、農山漁村観光地の知名度に関するデータは現状存在しないため、インバウンド向け観光ガイドブックでの各観光地の名称の出現頻度を調べた。 課題3では、事前・事後の双方から、インバウンド増加に対する農山漁村の社会的受容性の実態の把握と規定構造の解明を試みた。昨年度延期せざるを得なかった住民へのヒアリングはなお難しいが、既存研究で取り上げられている地域への愛着や、生態系サービスから享受する福利との関係を含めた心理構造を一部分析することはできた。 これらの点を考慮し、おおむね順調に進展していると評価することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き研究実績の概要で述べた3つの課題に取り組む。以下課題別に内容の詳細、手法、担当者をまとめる。 課題1では、これまで整備してきたデータの拡充並びに詳細化を進める。(担当:浅野・松下・山根) 課題2では、開発した需要関数推定法を用いて農山漁村インバウンド需要の潜在力を予測を一層進めるとともに地図化に挑戦する。ここでの潜在力とは、訪問地までの移動費用の高さ、移動時間の長さ、そして知名度の低さ等といった条件不利が緩和された場合に、農山漁村を訪れる外国人観光客がどれだけ増加し得るかの見込である。一方、農山漁村観光地の知名度に関するデータは現在存在しないため、インバウンド向け観光ガイドブックでの各観光地の名称の出現頻度を調べ、得られた値を知名度の代理変数とし、需要関数に外挿する。どのコンテンツも供給可能量があり、それが潜在力の上限になるが、例えば「自然体験ツアー・農山漁村体験」については、『農林業センサス』から都道府県別にグリーン・ツーリズムに取り組む集落数が分かるため、これを供給可能量として扱う。(担当:浅野・松下) 課題3では、事前・事後の双方から、インバウンド増加に対する農山漁村の社会的受容性の実態と把握と規定構造の解明を試みる。今現在外国人観光客が訪れていない観光地を「事前」、既に相当数の外国人観光客が訪れている観光地を「事後」の調査対象として選定する。住民へのアンケート調査等を通じて、インバウンド増加への住民の態度(喜ばしい・喜ばしくない)を把握し、既存研究で取り上げられている地域への愛着や、生態系サービスから享受する福利との関係を含めた心理構造をさらに詳細に分析し、得られた知見をふまえてインバウンドの増加の許容範囲を考察する。(担当:法理・山根)
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[Journal Article] Community capability building for environmental conservation in Lake Biwa (Japan) through an adaptive and abductive approach2021
Author(s)
Kondo, Y., Fujisawa, E., Ishikawa, K., Nakahara, S., Matsushita, K., Asano, S., Kamatani, K., Suetsugu, S., Kano, K., Kumazawa, T., Sato, K., Okuda, N
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Journal Title
Socio-Ecological Practice Research
Volume: 3
Pages: 167-183
DOI
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[Book] 流域ガバナンス2020
Author(s)
脇田 健一、谷内 茂雄、奥田 昇編松下京平ほか著
Total Pages
470
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
9784814003037