2019 Fiscal Year Annual Research Report
最先端X線分光法を駆使した水田土壌表層へのヒ素濃集機構の解明と土壌修復への応用
Project/Area Number |
19H03087
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
光延 聖 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70537951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 史人 広島大学, 理学研究科, 助教 (30626908)
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50554466)
松本 真悟 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00346371)
SHUKLA ELVIS.ANUP 愛媛大学, 防災情報研究センター, 准教授 (70833721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒ素 / XAFS / 水田 / スペシエーション |
Outline of Annual Research Achievements |
水田土壌は、世界30億人以上に主食 (コメ) を提供する食糧生産地であり、とくにアジア圏の人々にとって最重要な農業資源の1つである。しかし近年、水田環境を脅かす土壌汚染や水質汚染が日本を含めたアジア諸国で頻発している。本研究ではとくに、現在世界で最も深刻な水田汚染である「無機ヒ素 (As) による水田土壌汚染」を対象とし、① 申請者らが初めて見出した水田土壌表層へのAs濃集現象の化学的、(微)生物学的メカニズムを解明し、② さらにこのAs濃集現象を応用した低コストかつ簡便な新規土壌修復法の確立を目指す。初年度である2019年度は課題①に注力した。まず表層水田土壌へのAs濃集メカニズムを明らかにするため、自然条件を制御した状態で再現実験を実施した。水田土壌には日本で採取したAs汚染水田土壌を用いて実験を行った。経時的に採取した水田土壌コアの土壌薄片を作成して、土壌元素の濃度と化学種を局所的に調べられるシンクロトロンμXRF-μXAFS法を用いて分析を実施した。その結果、実験開始時には土壌中にほぼ一様に分布していたAsが、時間とともに1-2 mmの土壌表面層に濃集していく様子が捉えられた。濃集部におけるAsの分布は鉄の分布と類似しており、かつμXAFS分析から鉄が濃集部でAsと親和性の高い水酸化鉄鉱物として存在していることが明らかとなった。また、ヒ素のμXAFS分析に基づき、インキュベーション14日目の土壌中のAs化学種を調べた結果、土壌深部でAs(III)割合が高いにもかかわらず、表層2mm以浅では約8-9割のAsが、As(V)として存在していることもわかった。以上の結果を総合すると、Asは土壌深部で水溶解性の高いAs(III)へ還元され上部へ拡散するが、表面酸化層で鉱物親和性の高いAs(V)へ酸化された後、水酸化鉄鉱物によって吸着除去されたことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
条件をコントロールした室内実験およびAs化学種の局所直接分析に基づいて、As濃集現象の素過程を分子レベルで詳細に明らかにできており、予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
水田土壌表層へのAs濃集現象は滅菌土壌では観察されないため、As濃集には土壌微生物の影響が示唆されている。今後は、As濃集現象へ影響を及ぼす化学的素過程の解明に加えて、Asの酸化還元反応を触媒するAs代謝微生物 (バクテリア、アーキア、真菌) がAs濃集現象に与える影響についても分子生物学的手法を用いて解明していく予定である。
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Research Products
(3 results)