2019 Fiscal Year Annual Research Report
飼養管理が牛の繁殖性と卵巣機能に与える影響:牛卵子内の脂質組成と発生能の関係
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19H03117
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
永野 昌志 北里大学, 獣医学部, 教授 (70312402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 宏一郎 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20301872)
惠 淑萍 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90337030)
窪 友瑛 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部 酪農試験場, 研究職員 (50825338)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遊離脂肪酸 / 卵子 / 発生能 / 飼料 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳牛から採取した卵子について、多変量統計分析と組み合わせた高速液体クロマトグラフィー-高分解能タンデム質量分析によってリピドミクスプロファイリングを行った。すなわち、体外受精後の発生能が高いと考えられる卵子と変性過程にあり発生能が低下していると考えられる卵子について、リン脂質およびトリアシルグリセロールの増減を比較した。その結果、発生能の低い卵子において、特定のリン脂質種が減少するとともにトリアシルグリセロールの増加が認められ、卵子発生能を評価するうえで重要なマーカーになる可能性が示された。特に、発生能の低い卵子では、発生能の高い卵子に比べて、総トリアシルグリセロールは1.8倍となり、ミトコンドリア特異的リン脂質であるカルジオリピンは43.5%にまで低下していた。これは、発生能の低い卵子におけるエネルギー代謝能の低下を示していると考えられた。さらに、発生能の低い卵子では、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸は不飽和のものが多く含まれたおり、一方、遊離脂肪酸では、不飽和脂肪酸が少なかった。さらに、発生能の低い卵子は発生能の高い卵子に比較して、総ホスファチジルイノシトール(14.8±7.6 pmol vs 24.8±5.5 pmol、P <0.001)、総ホスファチジルコリン(20.8±8.7 pmol vs 33.5±7.2 pmol、P <0.001)および総プラズマローゲンエタノールアミン(9.0±4.7 pmol vs16.8±5.2 pmol、P <0.001)の減少が認められた。これは、発生能の低い卵子における脂質代謝酵素の機能不全を示していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のとおり、と体材料から採取した牛卵子について、脂質の分析を行い、卵子発生能と脂質代謝の関係を明らかにした。また、乳期の異なる生体の牛、さらに飼養管理(放牧主体あるいは舎飼いで濃厚飼料多給)から超音波経腟採卵法を用いて卵子の採取を行った。これらサンプルについてと体材料と同様の分析を進めているところである。 また、生体牛から発生能の高い卵子を採取するためのホルモン投与法を検討するとともに体外受精を行いその発生能を検討中である。 さらに、発生能を獲得する前の発育途上にある卵子をと体卵巣から採取し、発育培養を行って高い発生能を獲得させる研究も継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
乳期・飼養管理の異なる生体乳牛から卵子を採取し、乳期ごとの卵子内脂質組成の違いについて検討するとともに、それら卵子の発生能について体外受精を用いて確認する。 また、体内で発育する卵子の発生能を向上させるようなホルモン投与あるいは飼料添加物について検討を行う。 さらに、発生能獲得前の牛卵子について、体外で発育培養を行い、卵子が発生能を獲得する過程での卵子内脂質組成の変化や、発生能向上に関係する主成分について分析を行う。
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Research Products
(4 results)