2019 Fiscal Year Annual Research Report
肥満細胞腫のチロシンキナーゼ阻害剤耐性化における多様性の解析と個別化治療の構築
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19H03131
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
盆子原 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50343611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 崇 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50723897)
田崎 弘之 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80231405)
呰上 大吾 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80453934)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満細胞腫 / チロシンキナーゼ / 耐性化 / 犬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、肥満細胞腫におけるTK阻害剤耐性化機構の多様性について、a)腫瘍細胞の形質の変化と b)腫瘍内のHeterogeneity の観点から解明すること、また、腫瘍の多様な耐性機構に対応した個別化耐性克服治療法を構築することを目的とした。この中で、2019年度は主に肥満細胞腫におけるTK阻害剤耐性化機構の多様性について、a)腫瘍細胞の形質の変化を解析した。まず、犬の肥満細胞腫細胞株VI-MC細胞を限界希釈によりクローン化し、2クローンのVI-MC亜株を作製した。これらの細胞の増殖過程におけるKIT遺伝子の変異獲得状況について次世代シーケンサーを用いてディープシーケンス解析した結果、クローン化VI-MCでは増殖過程においてKITに多様な変異が蓄積することが明らかになった。一方、この変異の中にはKT阻害剤に抵抗性を示すKIT変異は見られなかった。これらの細胞株をTK阻害剤(トセラニブ)存在下で培養を継続するとKIT変異の蓄積が加速し、これらの変異の中にはKT阻害剤に抵抗性を示すKIT変異が認められた。これらの結果は、肥満細胞腫のTK阻害剤耐性化には、TK阻害剤暴露によるKIT変異の蓄積が重要であり、これによりKITにTK阻害剤耐性の二次変異が生じる可能性が示された。このようにTK阻害剤に暴露されることで生じる腫瘍細胞の形質の変化はTK阻害剤耐性化の大きな要因であると考えられた。一方、この結果は腫瘍組織における腫瘍細胞のクローン進化によってTK阻害剤耐性素因を持つ超微量なクローンがpre-existすることを否定できるものではない。このため、2020年度は主にb)腫瘍内のHeterogeneity の観点から、腫瘍組織内のTK阻害剤耐性素因を持つ超微量なクローンの探索を中心に研究を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は主に肥満細胞腫におけるTK阻害剤耐性化機構の多様性について、KIT変異に注目した腫瘍細胞の形質の変化が明らかとなった。この解析では超微量の変異KITクローンを検出できる技術の確立が必要であり、当初はその確立はかなり難易度の高いものと想定していた。しかしながら、研究分担者の協力もあり順調に開発が進み、十分な感度と精度を持つ検出系が確立できた。この2019年度の研究成果はJournal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics誌に掲載されたことからも、研究が順当に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、肥満細胞腫におけるTK阻害剤耐性化機構の多様性について、主に腫瘍内のHeterogeneity の観点から解明することを目的とした。そこでトセラニブ未治療の犬の肥満細胞腫の臨床サンプルを用いてKIT遺伝子をディープシーケンス解析し、トセラニブ耐性素因を持つ超微量集団が腫瘍組織内に存在するのか、またそのような集団がトセラニブ耐性化の要因となるのかを検討することとした。
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Research Products
(8 results)