2020 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙環境における生物個体ホメオスタシス攪乱の可視化
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19H03140
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阪上 朝子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90462689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩野 智 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (10734832)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微小重力環境 / 発光イメージング / 蛍光3次元可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
JAXA「2018年度「きぼう」利用FSテーマ」に研究分担者として参画し、「マウス発光イメージングシステムのデザインおよび発光型Fucciプローブの開発」を実践する為の研究基盤整備を目的として昨年度に引き続き以下を進行中である。 研究分担者の岩野らにより開発された「人工生物発光システムAkaBLI」によるin vivo 発光イメージングを基軸としたプローブおよび技術を整備して、ISS/「きぼう」における生命現象可視化(On-site direct visualization)を実現し、仮説の検証を目指していく。 昨年度樹立した発光蛍光プローブラベルLM8細胞は、プローブ発現量が高いと担癌が成立しづらいという弱点が認められた為、改善策を模索し、高い担癌効率かつ十分な発光輝度が達成されるプローブ開発を進め、検証中である。さらに肺がん細胞(LLC)、乳がん細胞(E0771)についても改良型発光蛍光プローブの安定発現株を樹立し、同種B6-Albinoマウスでの担癌および2次転移巣の可視化実験系を構築することが出来た。 1G飼育群(地上)に加え、疑似微小重力モデル実験環境(マウス尾部懸垂)にて飼育し、宇宙実験の予備実験を進めた。 帰還後を想定した検証実験(Off-site visualization)として、転移組織を採取し組織透明化、3次元イメージングを行い、転移巣の3次元構築を検討した。重力と担癌効率、転移効率それぞれの関係性について知見を蓄積し、最終年度に向けてまとめを行う。 発光イメージングシステムのデザイン:「AkaBLI」について、ISS/「きぼう」実験棟に搭載予定のマウス発光イメージングシステムで最大の成果を発揮するような実験系のデザインを、マウス系統および用いる細胞種ごとに設計した。腫瘍の大きさや転移した細胞数について、ある程度の定量性を持って議論できるような条件を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JAXA「2018年度「きぼう」利用FSテーマ」に採択された当初は、C3H系統マウスにLM8細胞を担癌するための発光蛍光プローブ開発が計画されており、スピード感をもって進めてきた。しかし、2020年7月に急遽使用マウスについてB6系統への変更が要求されたため、細胞株もB6系統への変更が必須となった。それまでに蓄積されていたLM8細胞でのノウハウおよび、より蛍光輝度の高い蛍光タンパクを採用することで、LLC,E0771,2種類の細胞株について、担癌効率および、転移効率の高い細胞株の樹立に邁進した。さらに、帰還後検証実験(Off-site visualization)として、転移組織を採取し組織透明化により転移巣の3次元構築を進めることができた。結果として、プローブの蛍光タンパクについてAchilles に変更したことが影響し、透明化ー3次元構築に有意であった。 FSスタディーについて、さらに1年間の追加期間延長が決定され、実際の宇宙実験への移行を進める段階となった。
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Strategy for Future Research Activity |
可視化する生命現象を、地上環境から宇宙規模の環境へと拡張するための整備を完了させる。ISS/「きぼう」に搭載予定の「小動物の発光イメージング装置」によるin vivo imagingを実践する為に準備してきた各材料について、実際の宇宙実験への移行準備を進める。 a. 生命基本現象を可視化する蛍光プローブの選択・導入と発光型への変換: Off-site(帰還後・地上)実験で計画する細胞諸現象の3次元再構築について、組織透明化方法および3次元イメージングの実験系の詳細を確立する。地上群と宇宙群との比較を目的として、空間的にも定量性のある3次元構築を目指す。宇宙における様々なストレスを可視化することを目的に、酸化ストレスプローブをAkaluc 発光型へと改良し、安定発現する細胞株を樹立し担癌実験へと進める。 b.高感度発光システム「AkaBLI」について、ISS/「きぼう」実験棟に搭載予定のマウス発光イメージングシステムで最大の成果を発揮するべく実験系のデザイン検証を繰り返し進める。基質(AkaLumine)の体内動態の理解のため、組織特異的Akaluc発現マウスを用いた詳細な発光プロファイルの取得を行い、観察部位に依らない普遍的なプロトコルの作製につなげる。 上記を平行して推進しながら、時間情報、空間情報、重力情報を基軸としたライブイメージング(疑似On-site direct visualization)および細胞諸現象の3次元再構築(Off-site visualization)を実行し、細胞増殖動態やストレス検知などと絡めて生命制御機構について理解を深める。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Gravity sensing in plant and animal cells.2021
Author(s)
Takahashi K, Takahashi H, Furuichi T, Toyota M, Furutani-Seiki M, Kobayashi T, Watanabe-Takano H, Shinohara M, Numaga-Tomita T, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A, Naruse K.
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Journal Title
NPJ Microgravity.
Volume: 7(1):2
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Space Radiation Biology for "Living in Space".2020
Author(s)
Furukawa S, Nagamatsu A, Nenoi M, Fujimori A, Kakinuma S, Katsube T, Wang B, Tsuruoka C, Shirai T, Nakamura AJ, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A, Harada H, Kobayashi M, Kobayashi J, Kunieda T, Funayama T, Suzuki M, Miyamoto T, Hidema J, Yoshida Y, Takahashi A.
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Journal Title
Biomed Res Int.
Volume: 4703286
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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