2020 Fiscal Year Annual Research Report
Role of a mechanosensitive ion channel PIEZO1 in regeneration of skeletal muscle
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19H03179
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
原 雄二 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (60362456)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機械受容イオンチャネル / 筋衛星細胞 / 骨格筋再生 / PIEZO1 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋筋線維の再生過程は、運動機能のみならず生体全体の恒常性維持に重要な役割を果たす。成体における筋幹細胞(筋衛星細胞)から派生した筋芽細胞は、互いに融合しあうことで多核の細胞体(筋管)を形成し成熟筋線維へと分化する。しかし筋再生時における各素過程の分子基盤は未だ明らかではない。本研究ではこれまでの知見のもと「リン脂質の輸送が、膜張力で活性化されるイオンチャネルPIEZO1の活性化を介して、筋衛星細胞の機能を統御する」という作業仮説の実証により、筋線維の再生過程ひいては生体全体の恒常性維持機構解明を目指した。 まずPIEZO1の発現解析を行った。内在性PIEZO1のC末端に蛍光タンパク質tdTomatoが付加されたマウスを用いた結果、筋衛星細胞にPIEZO1に高発現することが示された。そこで筋衛星細胞特異的Piezo1欠損マウスの作出、解析を行った。筋線維の損傷モデル(ヘビ毒カルジオトキシン注入)を用いたところ、Piezo1欠損により顕著な筋再生不良が認められた。また単離した筋衛星細胞を用いて詳細な検討を行なったところ、幹細胞の増殖能の低下が見られた。この分子機構を明らかにするため、PIEZO1の下流経路の同定を試みたところ、PIEZO1イオンチャネルは低分子量Gタンパク質RhoAを介した細胞骨格の再編成が関わることを見出した。興味深いことに幹細胞の増殖過程の進行に伴い、PIEZO1の局在が著しく変化することを見出した。これらの結果より、PIEZO1は幹細胞をとりまく微小環境の変化を感知し、その局在を変化させ、幹細胞の増殖過程に関わることが示唆された(本成果は現在投稿中である。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幹細胞の機能制御において、幹細胞をとりまく環境変化を感知する機構は重要であると想定されてきた。しかしその分子実体は未だ明らかではなかった。本研究により、膜張力を感知するイオンチャネルPIEZO1が骨格筋幹細胞での増殖などの様々な役割を有することを見出した。現在投稿中であるものの、本研究のおおよその目標は達成したと言える。 PIEZO1イオンチャネルは、2021年度のノーベル賞(生理学・医学賞)の受賞対象となった分子であり、非常に競争が激しい。現在投稿中の論文において追加実験が要求されている。新たなマウスモデルを用いた研究を現在行っており、一刻も早い論文成果の公表を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請の目的はほぼ達成できたと言えるが、今後の発展研究として、筋幹細胞におけるPIEZO1の活性制御機構が挙げられる。我々はこれまでにリン脂質の膜間輸送を行うリン脂質輸送体がPIEZO1の機能制御に関わることを見出している。その知見を筋幹細胞に適用し、脂質‐イオンチャネル相互作用による幹細胞の活性制御機構の解明を目指したい。本実験系では、脂質分子の挙動、組成変化を追究するとともに、再構成系を用いた解析が必要不可欠であり、共同研究等を通じて進めていきたい。
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