2020 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞誘導におけるKlf4を中心とした動的エピゲノム転写制御の分子機構
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19H03203
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西村 健 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80500610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 綾 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50436276)
久野 朗広 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60830122)
林 洋平 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (90780130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | KLF4 / iPS細胞 / エピゲノム / X染色体再活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS細胞誘導におけるエピゲノム転写制御機構を解析するために、X染色体再活性化における転写活性化に関わる分子の同定を試みた。前年度に同定した再活性化開始領域に対し、そこに結合すると思われる分子をデータベースを用いて探索し、6つのタンパク質を候補とした。そしてそれらの発現を抑制した状態でiPS細胞を行ったところ、Kdm1aの発現を抑制すると再活性化が早く進行することを明らかにした。さらにKdm1aに対するChIP-seq解析の結果、再活性化開始前には、Kdm1aが開始領域に結合しているのに対し、開始後には離れていることを明らかにした。以上の結果から、Kdm1aはX染色体に結合して再活性化を抑制しており、Kdm1aが離れることによって転写が開始する可能性が示唆された。 また、KLF4のDNA結合領域の変異体の中で、低発現量でも高い多能性を誘導できる変異体が得られているので、このKLF4変異体の性状解析を行なった。その結果、野生型のKLF4と比較して、この変異体を用いると均質で多能性の高いiPS細胞が誘導できることを明らかにした。また、iPS細胞誘導過程でKLF4変異体は、野生型と比較してより多く多能性関連遺伝子付近に結合し、それらの発現を上昇させていることも明らかにした。これらの結果から、KLF4のDNA結合能はiPS細胞誘導における転写制御に重要であり、それらを調節することによって、より品質の良いiPS細胞の作製が可能であることを明らかにした。 さらに、高発現KLF4が特異的に結合する領域に対してmotif searchを行なった結果、E2f4結合配列が有意に集積していた。そこで、E2f4の発現を抑制しながらiPS細胞誘導を行ったところ、低発現KLF4でも高い多能性を誘導できた。よって、E2f4はKLF4量依存的エピゲノム転写調節を負に制御する因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X染色体再活性化とKLF4変異体に関する研究成果は、現在論文投稿中であり、その他にも、KLF4量依存的エピゲノム転写調節に関わる知見が多く得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、iPS細胞誘導におけるX染色体再活性化の開始領域を明らかにしてきた。今後は、クロマチンのopen, close状態を解析するATAC-seq解析、ゲノムDNAの3次元構造を解析するHiC解析等を行い、再活性化前後の開始領域の構造を他の領域と比較する。そしてその知見を元に、なぜこの領域から転写が開始されるのか、構造的特徴を元に解析を進めると共に、再活性化によってその構造がどのように変化し、転写活性化がX染色体全体に伝播していくのか、その機構の解析を進める。 また、E2f4がKLF4量依存的エピゲノム転写調節を負に調節する因子であることをこれまでに明らかにしているので、今後は、E2f4ノックアウト細胞をゲノム編集で作製する。そして、その細胞にE2f4変異体を発現させた状態でiPS細胞誘導を行うことによって、E2f4がどの因子と結合することが、この転写調節に重要であるか明らかにする。また、他のE2fファミリータンパクにもE2f4と同様な機能があるのか調べるために、他のE2fタンパク質の発現を抑制した状態でiPS細胞誘導を行い、KLF4量依存的な発現変化を解析する。 さらに、多能性獲得の指標となるRex1遺伝子発現をモニターできるレポーター細胞を作製し、この細胞にガイドRNAライブラリーを導入してランダムに遺伝子ノックアウトを行う。そして、得られた細胞群に対してiPS細胞誘導を行い、Rex1遺伝子発現を元に、KLF4量依存的な多能性誘導に変化が起きた細胞を分離する。分離された細胞でノックアウトされた遺伝子は、KLF4量依存的エピゲノム転写調節に関与する可能性があるので、これらの遺伝子の機能解析を通して、さらに新しい転写調節機構を明らかにし、その分子機構を解明する。
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Research Products
(8 results)