2020 Fiscal Year Annual Research Report
Transcriptional network regulating gametogenesis in basal land plants and its evolution
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19H03244
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒木 崇 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (00273433)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生殖系列 / 生殖細胞 / 配偶子形成 / 精細胞 / 転写制御ネットワーク / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題1. DUO1を中心とする精細胞形成過程の転写制御ネットワークの解明、研究課題2. 雌雄生殖系列決定因子の探索、の2つを柱に研究を進め、以下の成果を得た。 研究課題1については、DUO1の下流で働くと考えられる2つの転写因子DAZ1、RWP1に関して、それぞれの寄与を解析するための機能喪失変異体とその相補株を確立した。これらのうち、RWP1に関しては、精子核凝縮に関わる3つの塩基性精子核蛋白質前駆体遺伝子H1s1, H1s2, PRMに加え、新規に報告された2つのDNAメチル化酵素遺伝子の発現制御に関わる可能性を見出した。前者については機能喪失変異体の解析をほぼ完了した。後者については機能喪失変異体の作出を進めており、精子核凝縮への寄与を検討する予定である。RWP1:Citrine knock-in株の発生後期の造精器を用いたChIP解析を開始した。プローモータ上の対象とする領域を絞り込むための解析も並行して開始した。 研究課題2については、(miR529c→SPL2)モデュールが、生殖成長を促進する長日条件下で全てのメリステムを生殖枝にしないために、また、短日条件に戻した場合に栄養成長に戻るためにも重要であることを示唆する知見を得た。下流にある生殖系列分化のマスター転写因子BNBや上流のフィトクロムを介した日長認識経路についての解析も進めた。後者については、シロイヌナズナの日長認識機構との相違点が明らかになりつつある。生殖細胞始祖細胞の分化に関わるクロマチン関連因子MS1について、MS1が生殖細胞始祖細胞と外皮細胞始祖細胞を生じる不等分裂後の前者における色素体数の減少に重要であるという知見を得た。これを検証するために造精器発生初期における色素体のライブイメージングのための系の確立を進めた。また、MS1:Citrine knock-in株を用いた発現解析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1 (DUO1→RWP1)モデュールに関しては、RWP1:Citrine knock-in株の発生後期の造精器を用いてChIP解析の試行を開始した。RWP-RK転写因子の結合モチーフはあまり研究されていないことから、長いプローモータ上の解析対象とする領域を絞り込むためにプローモータ解析が必要であり、そちらにも着手した。精子核凝縮に関わるH1s1, H1s2, PRMに加え、RWP1の新たな制御標的遺伝子の候補として新規に報告された2つのDNAメチル化酵素遺伝子を見出した。前3者については機能喪失変異体の解析をほぼ完了し、精子核凝縮の初期胚発生進行における重要性を示唆する知見を得た。後2者については精子核凝縮に関わる新規の因子と経路を代表するものである可能性が考えられる。機能喪失変異体の解析による検証に着手した。これらを優先するために、(DUO1→DAZ1)モデュールについては、RNAseq解析に用いる系統を確立したところでいったん休止した。これまでの研究により、(DUO1→RWP1)モデュールについては、概ね重要な解析が終了し、残る少数の課題も明確になり、最終年度中の論文化の目処が立ったと評価している。 研究課題2 (miR529c→SPL2)モデュールについては、論文化のための解析をほぼ終えたことと、生理的な意義についての洞察が得られたのが大きな進展である。下流のBNBや上流の日長認識経路との関連についての解析も進展している。後者については、シロイヌナズナとはかなり異なる機構によることが明らかになりつつある。生殖細胞始祖細胞の分化に関わるクロマチン関連因子MS1について、生殖細胞始祖細胞における色素体数の減少(選択的消化?)に重要であるという新規の知見が得られ、ライブイメージング解析のための系の作出・確立に着手できた。期待した進展があったと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題1 (1) (DUO1→DAZ1)および(DUO1→RWP1)モデュールの役割の検証:DAZ1に関してはRNAseq解析を行ないデータを取得する。RWP1に関しては、単離した造精器のRNAseq解析により、duo1-KO株とrwp1-KO株における遺伝子発現プロファイルを、野生型株およびそれぞれの相補株と比較する。これにより、DUO1の制御下の遺伝子のうちRWP1を介して制御されているものの探索を進める。3つの塩基性精子核蛋白質前駆体遺伝子と2つのDNAメチル化酵素遺伝子については、先行して個別にChIP解析をおこなう。この結果と下記の(3)の結果を合わせて論文を完成する(研究課題1の最重要課題)。(2) DUO1とRWP1のChIP-seq 解析:DUO1:Citrine knock-in (DUO1:Citrine-KI)、RWP1:Citrine knock-in (RWP1:Citrine-KI) 株を用いて、実験条件を確立し、解析に着手する。(3) 精子核凝縮に関わる塩基性精子核蛋白質前駆体遺伝子H1s1, H1s2, PRMの機能解析:残る部分(受精過程)の解析を完了し、(1)のChIP解析の結果と合わせて論文にまとめる。 研究課題2 (1)(miR529c→SPL2→BNB)モデュールの解析:論文化のための昨年度中にほぼ解析を終えており、補足的な解析を行ないつつ、これまでの成果を論文にまとめる(研究課題2の最重要課題)。(2) 生殖細胞始祖細胞の分化に関わるクロマチン関連因子MS1:MS1:Citrine knock-in (MS1:Citrine-KI) 株を用いて生殖細胞始祖細胞分化過程における発現解析を継続する。さらに、昨年度の解析で示唆されたMS1が生殖細胞始祖細胞における色素体の選択的分解に関わる可能性を検証する。
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Remarks |
(1)は担当する研究室のHPである。
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Research Products
(12 results)