2021 Fiscal Year Annual Research Report
コケ植物繁殖子の休眠を制御する分子メカニズムの解明
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19H03247
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石崎 公庸 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00452293)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コケ植物 / 無性芽 / 休眠 / アブシシン酸 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゼニゴケにおける無性芽休眠の統合制御因子候補であるMpbHLH40に焦点をあて、その上流と下流の制御ネットワークを明らかにすることを目的としている。 無性芽の発芽率を定量的に解析する手法を確立し、MpbHLH40機能欠損変異体での無性芽発芽率が、ABA受容体遺伝子やABAシグナル伝達因子ABI3遺伝子の変異体よりも顕著に高いことを明確に示した。 MMpbHLH40下流ではABA生合成に関わるNCED遺伝子の発現が促進されるが、MpbHLH40機能欠損変異体の無性芽には野生株に比べてABAの存在量が少ないこと、またMpbHLH40-GR株でDEX処理を行うとABA量が顕著に増加することも明らかになった。これらのことからゼニゴケの無性芽ではMpbHLH40によってNCED遺伝子の発現が誘導されABA生合成が増加すると考えられ、このことが無性芽休眠の要因の1つであることが強く示唆された。 一方で、MpbHLH40-GR株ではDEX処理により無性芽の成長が抑制されるが、MpbHLH40背景でABA受容体遺伝子を欠損させてもDEX処理により無性芽の成長が抑制されたことから、MpbHLH40の機能誘導による無性芽成長抑制におけるABAシグナル伝達の寄与は限定的と考えられた。MpbHLH40-GR株を使った実験から、MpbHLH40の機能を誘導すると細胞周期のG1-S期への導入が抑制されることを示唆する結果が得られ、MpbHLH40下流で細胞周期制御因子MpCYCD1の発現が直接抑制されることを発見した。またMpbHLH40による細胞周期停止は不可逆的に起こり、MpbHLH40機能誘導停止後も3週間以上に渡って成長停止状態が継続することも見出している。MpbHLH40によるエピジェネティックな制御も視野に入れて今後の研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
またMpbHLH40下流の遺伝子制御ネットワークについて詳細な解析をすすめることが出来た。MpbHLH40の発現動態やMpbHLH40機能欠損変異体、MpbHLH40機能誘導株の表現型解析データが順調に蓄積し、これらの結果をまとめて原著論文として発表する予定である。またMpbHLH40の機能を誘導すると、アブシシン酸非依存的に、細胞周期が直接かつ不可逆的に停止することを発見した。今後はMpbHLH40による細胞周期の不可逆的な停止のメカニズムについて重点的に解析する予定である。本研究は当初の計画通りに順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はゼニゴケにおける無性芽休眠の統合制御因子候補であるMpbHLH40に焦点をあて、特に下流の制御ネットワークを明らかにする。 特に、MpbHLH40を機能誘導すると細胞周期が不可逆的に停止する現象に焦点をあてて研究をすすめる。MpbHLH40下流因子の探索結果から、MpbHLH40は細胞分裂制御遺伝子MpCYCD1の発現を直接抑制することを見出している。MpbHLH40がエピジェネティックな制御を介してMpCYCD1の発現を抑制している可能性を検証するため、各種クロマチン修飾の動態解析やクロマチン修飾の阻害剤を使った薬理学的な解析を進める。また、MpHYPNOS-GR株やMpHYPNOSノックアウト株に細胞周期マーカーを導入して、MpHYPNOSの機能と細胞分裂の関連について詳細に解析する。
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