2020 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAポリメラーゼの多様性と進化の全容解明
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19H03280
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲垣 祐司 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50387958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 泰久 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40647319)
中野 賢太郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50302815)
石谷 佳之 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (60772043)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / DNA複製 / 真核生物系統 / DNAポリメラーゼ / オルガネラ進化 / 有孔虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度にはツクバモナス類とアンキロモナス類の新奇ミトコンドリアDNAポリメラーゼ(mtDNA pol)をそれぞれの遺伝子配列データ中に同定した。2020年度に稲垣(代表)と中野(分担)は共同して、それらのN末端アミノ酸配列はミトコンドリア輸送シグナルとして機能するかを検証するため緑色蛍光タンパク質と融合し、組換えタンパク質を酵母細胞内で発現させた。その結果GFP蛍光は細胞内でミトコンドリアとおなじ場所に局在することが分かり、新奇mtDNA polはミトコンドリアに局在すると考えられた。また稲垣はマラウィモナス類と近縁だと考えられる未記載真核微生物SRT706株の遺伝子配列データ内に新奇mtDNA polを探索し、その全長配列を発見した。我々はツクバモナス類、アンキロモナス類、マラウィモナス類とその近縁系統(SRT706株)で発見された新奇mtDNA polをheMPと呼称することとした。 石谷(分担)は1種の有孔虫のミトコンドリアゲノムを解析し、細菌型DNAポリメラーゼIIIホロ酵素を構成する5つのサブユニットをコードする遺伝子が発見された。 2019年度に稲垣はヒトや家畜の病原性寄生虫である熱帯マラリア原虫とその近縁種から、細菌型DNAポリメラーゼIに類似するDNAポリメラーゼを発見し、apiPolAと命名した。2020年度には、マラリア原虫apiPolA N末端配列とGFPとの融合タンパク質をサルマラリア原虫細胞中で発現させ、ミトコンドリアに局在するかどうかを検証するための発現ベクター作成に着手した。またマラリア原虫がふくまれるアピコンプレクサ類の広範な系統とその姉妹群となるクロモポデリッズ類にもapiPolAを探索した。その結果、アピコンプレクサ類だけでなくクロモポデリッズ類でもapiPolAが存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母細胞をもちいた細胞内局在実験により、ツクバモナス類とアンキロモナス類のheMPがミトコンドリアに局在する可能性が高いことが分かった。またマラウィモナス類と近縁なSRT706株からもheMPが同定されたことから、真核生物におけるheMPの分布がより詳細に解明された。またマラリア原虫で発見されたapiPolAが、マラリア原虫をふくむアピコンプレクサ類の姉妹群まで分布していることが判明した。 ユーグレノゾア生物群のなかでもキネトプラスチダ類とディプロネマ類がもつmtDNA pol(PolIBCD+)が特定のファージがもつDNAポリメラーゼを起源とすることを明らかにし、英文査読付き論文として掲載された(原田&稲垣Genome Biology and Evolution 2021 13:evab003)。 真核生物内での各種mtDNA polの分布を詳細に検証するために、2020年度には自然環境からの新奇真核微生物の単離と培養を目指していた。しかし、COVID-19の感染状況が思わしくなく、感染状況が比較的収まった8月末に高知県にて実施したサンプリング調査だけに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度にはマラウィモナス類と近縁なSRT706株のheMPがミトコンドリアに局在しうるかどうかを、酵母を用いた細胞内局在実験により検証する。他の生物種から新たにheMPが同定された場合、酵母を用いた細胞内局在実験を実施する。またapiPolAがミトコンドリアに局在するかを実験的に確認するため、引き続きサルマラリア原虫細胞内発現実験を行う。 heMPおよびapiPolAの発見は、これまでに検出されていない細菌型DNAポリメラーゼIに類似するDNAポリメラーゼ(PolI様DNAポリメラーゼ)が各種真核生物に分布している可能性を示唆する。そこで広範な真核生物系統からPolI様DNAポリメラーゼを探索する。この探索対象にはGenBankをはじめとする公的配列データベースに登録された系統的に広範な真核微生物から取得した遺伝子配列データを対象とする。これまでに認識されていないPolI様DNAポリメラーゼが検出された場合、その進化的起源を解明するための分子系統解析と細胞内での局在を推測するために必要な実験を行う。 真核生物におけるmtDNA polの多様性解明を目指し、自然環境から新奇真核微生物の単離と培養を行う。自然環境のサンプリング調査の可否はCOVID-19の感染状況を鑑み、慎重に判断する。
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Research Products
(8 results)