2019 Fiscal Year Annual Research Report
Search of new independent gametophytes of ferns in Japan using DNA barcoding
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19H03288
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村上 哲明 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (60192770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海老原 淳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (20435738)
篠原 渉 香川大学, 教育学部, 准教授 (30467443)
常木 静河 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (10632789)
山本 薫 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 学芸員 (00766016)
堀 清鷹 公益財団法人高知県牧野記念財団, その他部局等, 研究員 (20806004)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生物多様性 / シダ植物 / 配偶体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の2019年度は、研究代表者の村上が、研究分担者の海老原博士、篠原博士、山本博士、堀博士と分担協力して、東日本は奥多摩(最高峰の雲取山を含む)、中部・近畿は三重(新宮と尾鷲)・和歌山(古座)・兵庫県(六甲山)、四国(横倉山)は高知県、九州は屋久島で独立配偶体の調査を行った。それぞれの調査地では、シダ植物のリボン状配偶体のマットを採集した。渓谷や山中で、直射日光が当たらない北面のやや乾いた薄暗い場所で、落葉や土壌が堆積していない岩の割れ目・くぼみを探すと、シダ植物の配偶体マットを比較的高い頻度で見つけられることが分かった。また、コケ植物(配偶体)は多くが明るい緑色なのに対して、シダ植物の配偶体マットは薄暗い不透明な緑色なので、肉眼でも容易に区別できることも分かった。採集した配偶体マットのサンプルを用いて、葉緑体DNA上のrbcL遺伝子をPCR増幅&ダイレクトシーケンシングにより決定し、DNAデータベースに登録されている配列と比較して、種の同定を行った。 その結果、海老原博士のこれまでの研究によって報告されていたヒメサジランとカラクサシダの独立配偶体は、日本国内の幅広い地域で見出された。さらに新たに、タキミシダの独立配偶体も、高知県の複数の産地で見出された。タキミシダはその胞子体が広く西日本から報告されてはいるものの、どの産地でも個体数が極端に少なく、ほとんどの府県で絶滅危惧種に分類されている。このような希少種の独立配偶体が複数の産地で見出されたことは、タキミシダが主として配偶体世代で生育している可能性を示唆している。 また、ミカワコケシノブとオオコケシノブの独立配偶体のみが見られた東京都奥多摩と、それらの胞子体も見られる愛知県において、生育地に自動気温モニターを仕掛け、気温などの違いを測定・比較する調査についても、研究分担者の常木博士が中心になって実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シダ植物の独立配偶体は、最初に北米の最終氷期に氷河で覆われた地域で見出されたので、涼しい地域で見られるものと考えられてきた。しかし、典型的な暖温帯気候の西日本の幅広い場所でも、シダ植物の独立配偶体(マット状になって、少なくとも何十年は無性芽を通じた無性生殖で生育し続けていると考えられるもの)を多数見つけることができた。研究の実績の概要のところにも記したように、どのような環境を探せばシダ植物の独立配偶体を見つけやすいかも分かったので、本研究を進めるで最もネックになることが危惧された材料の採集は問題なくできることが分かった。また、タキミシダなどこれまで独立配偶体の報告がなかった、しかも胞子体では希少種(暖温帯域のほとんどの府県で絶滅危惧種に指定されている)の独立配偶体を見つけることもできた。本研究は順調に立ち上がったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、幅広い場所で独立配偶体を採集して、rbcLの塩基配列に基づいて種の同定をしていけば、本研究で、日本新産のシダ植物種(まだ、日本国内で胞子体は見つかっていない)の独立配偶体も発見できることを期待している。さらに調査値を増やして、シダ植物の独立配偶体の探索を続けていきたい。 また、ヒメサジランやカラクサシダの独立配偶体は、日本の幅広い地域で何処でも普通に見られた。これら2種の配偶体は、結構大きなマットを形成しているので、長い期間(少なくとも数巡年間以上は)配偶体として生育し続けていると考えられる。しかし、無性芽だけでこれだけ広い地域に広がることはできないので、胞子を通じて(つまり胞子体を経由して)も増殖していると考えられる。「胞子を通じた有性生殖」と「無性芽を通じた無性生殖」をどの程度使い分けて生存しているかを明らかにするには、同一クローンがどの程度の範囲まで広がっているかを調べるのが一番早い。そこで、複数の産地から独立配偶体サンプルを採集し、それから抽出した全DNAを用いて次世代シーケンサーを活用したMIG-seq解析を行うことによって、どのくらいの数のクローンがどのように生育・分布しているかを明らかにする研究にも,今後、力を入れていきたい。
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Research Products
(2 results)