2020 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス伝達効率を調節するアクティブゾーンの分子構造基盤と修飾機構
Project/Area Number |
19H03324
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大塚 稔久 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40401806)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アクティブゾーン / CAST / 近位依存性ビオチン標識法 |
Outline of Annual Research Achievements |
CASTの分子ネットワークの解明のために、AAV(Adeno associated virus)-BirA(ビオチンリガーゼ)-CASTのコンストラクトを作製した。CAST複合体の分子基盤がニューロンの多様性を反映している可能性を踏まえ、FLEx システムを用いた脳領域選択的にビオチン標識を試みたが十分な発現が見られなかった。挿入DNA断片が比較的長いために、Cre-loxPによる再配置が困難であることが原因ではないかと考えられた。この問題を解決するため、ALFA tag-nanobodyシステムを応用し、ビオチンリガーゼ-nanobodyのパーツとALFA tag-CASTのパーツをそれぞれ作製した。ALFA-tagとそれに特異的なnanobodyは極めて特異性・親和性が高く、細胞内の標的領域にビオチンリガーゼを送ることが可能であることを確認した。さらに、標識反応速度が速い改良型ビオチンリガーゼ(TurboID)を搭載する事により、CASTとの結合が一時的で弱い因子群(翻訳後修飾関連酵素等)の同定も視野に入れている(申請書項目2:修飾シグナル)。また、ALFA-tag CASTおよびELKSのノックインマウスを遺伝子編集により作出し、現在バッククロスを進めている。作製したTurboIDのin vivo遺伝子導入に関しては、AAV・PHBe serotypeを作製し全脳感染の準備を進めている。 一方、項目2:修飾シグナルに関しては、ショウジョウバエにおいてSRPKによるCASTのリン酸化が報告され(Driller, JH. Et al. 2019, J. Cell. Sci.)、当該セリンのリン酸化抗体を作成したが、哺乳類におけるCASTのリン酸化は検出することができなかった。今後、質量分析による解析を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海馬初代培養細胞において詳細な条件検討を進めてきたが、液体クロマトグラフィー・質量分析で分析するための十分なサンプル量を確保することが難しかった。そこで、現在はcortical neuronの培養条件におけるビオチン標識および精製・同定条件を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、初代培養系におけるCAST複合体構成因子の同定においてはcortical neuronからのビオチン標識・精製条件の最適化を行いプロテオームのおおよそのサイズを把握する予定である。In vivo標識においては、AAV・PHBe serotypeによる全脳感染およびFLEx systemを融合した局所での感染系を確立し、脳領域ごとのCAST複合体の相違を比較解析することで、ニューロン機能の多様性を理解するためのCAST複合体の基盤を明らかにする。さらに、CASTのリン酸化シグナルについては、主に培養細胞を用いてCASTの修飾をもたらすシグナルを検討した上、質量分析によるリン酸化修飾部位を同定する。
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