2021 Fiscal Year Annual Research Report
frontal and subcortical coordination underlying multitasking behavior
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19H03337
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
虫明 元 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80219849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マルチタスク / 前頭葉 / 抑制系 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究課題では 脳が柔軟に複数の課題に対処できるための前頭葉と関連分野の働きを解明することである。色と運動を結びつけて学習し、その後記憶に基づいて同じ動作を行う主課題と其の記憶課題中に突然無関係の色ー運動の組み合わせの割り込み課題を一回だけ行わせ、その後に主課題の記憶課題に戻るようなマルチタスク課題を訓練した。 脳波の所見からは、シータ波、ベータ波がこの課題に関連していること示唆されている。またこれらの振動にはGABA性の抑制細胞が関わることが別途示唆されており、抑制性細胞がサブタイプに分類され、異なる周期の振動を生成することと関係することが想定されている。そこでこれらの抑制系の大脳皮質での役割を調べるために、そのサブタイプの詳細な分布を 2つのGABA合成酵素である GAD65, GAD67の分布を: NPY+, nNOS+, PV+, SOM+, CR+, and CCK+ のマーカーを用いて検討した。GAD65ではサブタイプごとに表現に差が見られ 高い表現を示す (NPY+ and nNOS+) また低い表現を示す (PV+, SOM+, CR+, and CCK+) が大脳皮質で認められた。GAD65は活動に応じて変化する傾向があるため、安静時の活動に差があることが示唆された。 脳波レベルの予備的な解析では、シータ波、ベータ波、ガンマ波がこの課題に関連していること示唆されている。またこれらの振動にはGABA性の抑制細胞が関わることが別途示唆されており、普段はそれほど高くない活動レベルでも、状況により、それぞれの抑制性細胞サブタイプが活性化することが想定される。ガンマ波はPV、ベータやシータの遅い波はSOMなどが関わることが示唆される。光遺伝学的に刺激を与えることで、各周波数の振動への介入による影響を調べるための光遺伝学的なツールの予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マルチタスクの行動的な側面に関して、予想通りの所見が得られつつある。更には予備実験で振動との関連性には、抑制系のサブタイプの関与が想定され、これらを区別しつつ、その機能を調べるための組織学的なツールと光遺伝学的なツールを開発している。今後は振動と抑制系、行動の文脈の関与を調べることで、前頭前野 その他の皮質下とのネットワークの神経基盤が解明されると期待される。また方法論に関しては論文として、まとめられたので、振動現象と行動に関する研究分野に寄与できる成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の予備的な成果を、きちんと複数のサルで検証していく必要がある。サルは主課題に戻るときにエラーが多いことが本当にコンフリクトと解釈して妥当か、 サルを用いた行動解析、電気生理と 関連してげっ歯類での抑制細胞に関しての知見を今後統合していくことを計画している。 行動解析に関しては特に主課題と割り込み課題が特定の関係のときにコンフリクトが起こりやすいのか、この関係を系統的に解析することも検討している。複数の課題の行動が記憶のレベルで拮抗するということが、どのように脳の活動として反映されるのかを、ベータ波、シータ波、ガンマ波などの振動に関連して解明を進めることと、これらの振動の背景にある神経機構を調べていく。 また抑制系の役割と、光遺伝学的な操作方法をげっ歯類で確立しつつ、霊長類での実験に役立てるように、検討を進める。割り込みに関してはシータ波が前頭葉で重要な役割があることが判明してきており、大脳皮質と海馬の関連性が示唆されて、ネットワークとしては、どのような領域がこの振動を共有しているのか解明することが大切となる。複数領域の脳振動の同期性に着目することが手がかりを与えてくれる可能性があるので、この点を解明する予定である。
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