2020 Fiscal Year Annual Research Report
輸送体と受容体を介するアミノ酸シグナリング機構の解明と代謝制御創薬の基盤の確立
Project/Area Number |
19H03407
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金井 好克 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60204533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大垣 隆一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20467525)
奥田 傑 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50511846)
岡西 広樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70792589)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスポーター / 受容体 / シグナル情報伝達 / アミノ酸 / 抗腫瘍薬 / 細胞内代謝制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、mTOR活性化に寄与する主要なアミノ酸のロイシンに着目して、その細胞膜受容体の分子実体を明らかにするとともに、アミノ酸輸送体とアミノ酸受容体によって制御されているアミノ酸シグナリング機構の全体像の解明を目的としている。さらに、アミノ酸受容体を標的とすることで、抗腫瘍薬として開発中のアミノ酸輸送体阻害薬の抗腫瘍効果を補完し、高い治療効果を実現する代謝制御の創薬に向けた基盤を確立する。研究期間の2年目にあたる2020年度は、これまでに実施した細胞膜画分の比較定量プロテオミクスと、細胞膜型ロイシン受容体特異的リガンド刺激条件下の比較定量リン酸化プロテオミクスから見出した、ロイシン受容体の候補因子群について個別に遺伝子ノックダウンをおこない、アミノ酸シグナリングへの影響を検証する機能解析を実施した。がん細胞への必須アミノ酸取込みの中心を担うアミノ酸輸送体LAT1が制御しているアミノ酸シグナリング機構については、複数の胆道がん由来細胞株を対象にして、選択的阻害薬の存在下と非存在下で比較定量リン酸化プロテオミクスと比較定量プロテオミクスを組み合わせた統合的オミクス解析を実施した。これにより、アミノ酸輸送体LAT1下流のシグナリング機構が網羅的に明らかになり、LAT1と細胞周期制御に関連するキナーゼ群との関連性を新たに見出した。LAT1阻害薬と当該キナーゼ群の阻害薬の併用によってがん細胞増殖抑制効果の増強が確認されたことから、本解析手法の妥当性が支持された。また、アミノ酸の蛍光標識と高速液体クロマトグラフィーによる全20種類のアミノ酸の定量分析系を立ち上げた。これにより、細胞内のアミノ酸シグナリングの変動と、実際の細胞内の遊離アミノ酸量の変動とを関連づけた解析を実施することが技術的に可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに実施した、細胞膜画分の比較定量プロテオミクスと、細胞膜型ロイシン受容体特異的リガンド刺激条件下の比較定量リン酸化プロテオミクス解析によって見出されたロイシン受容体の候補因子群について、siRNA導入による遺伝子ノックダウンをおこない、アミノ酸シグナリングへの影響を検証した。現在までのところ、ロイシン受容体の分子同定には至っていないが、候補因子の解析を継続している。がん細胞におけるアミノ酸輸送体LAT1下流のアミノ酸シグナリングについては、複数の胆道がん由来細胞株を対象として、比較定量リン酸化プロテオミクスと比較定量プロテオミクスを組み合わせた、統合的オミクス解析を実施した。LAT1の阻害によって発現量およびリン酸化状態が変動する因子群が網羅的に明らかになり、アミノ酸シグナリング機構の全容解明を大きく前進させた。その一例として、LAT1と細胞周期制御に関連する複数のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)との機能的関連性を新たに見出した。実際に、LAT1阻害薬と当該CDK群の阻害薬の併用は、がん細胞増殖抑制効果を有意に増強することが明らかになった。また、アミノ酸の蛍光標識と高速液体クロマトグラフィーによって、細胞内遊離アミノ酸量の定量分析系を立ち上げた。全20種類のアミノ酸の定量が可能になり、膵臓がん由来細胞株を用いた検討では、LAT1阻害薬処理後24時間後までの個々のアミノ酸の細胞内量の変動を経時的に明らかにした。これにより、細胞内のアミノ酸シグナリングの変動と、実際の細胞内の遊離アミノ酸量の変動とを関連づけた解析が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、細胞膜ロイシン受容体の分子同定に取り組む。細胞膜タンパク質を対象とした比較定量プロテオミクス、細胞膜型ロイシン受容体特異的リガンド刺激条件下の比較定量リン酸化プロテオミクスによる候補因子の絞り込みを継続する。また、細胞膜ロイシン受容体は、ロイシンの側鎖が光反応性を持つジアジリン環に変わったPhoto-leucineにも応答してmTOR系を活性化する。細胞をPhoto-leucineで処理後、UV照射することでPhoto-leucineと架橋されたものを同定し、細胞膜ロイシン受容体候補とする。得られた候補分子についてRNAiによるノックダウン実験によりその機能を評価する。がん細胞におけるLAT1下流のアミノ酸シグナリング機構の解明については、対象とするがん細胞株の種類や、阻害薬処理時間の違いなどによる影響を比較定量リン酸化プロテオミクスにより検証する。細胞膜ロイシン受容体候補分子を絞り込んだのちには、受容体により制御されるアミノ酸シグナリング機構の解析にも着手する。ロイシンによるmTORC1活性化に対するLAT1阻害薬の抑制効果および細胞増殖抑制効果は、細胞により大きく異なり、これがロイシン受容体の寄与によるものと考えられる。そこで、ロイシンによる細胞応答における、輸送体及び受容体を介するシグナリングの寄与を、ノックダウン実験により評価する。ロイシン受容体の寄与が大きい腫瘍細胞を選別し、受容体ノックダウンがLAT1阻害薬の抗腫瘍効果を増強することを実証する。このようにロイシンによるdual signalingの両者を抑制することで、高い効力をもって抗腫瘍効果を実現する代謝制御創薬の基盤を確立する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] α‐Emitting cancer therapy using 211 At‐AAMT targeting LAT12021
Author(s)
Kaneda‐Nakashima Kazuko、Zhang ZiJian、Manabe Yoshiyuki、Shimoyama Atsushi、Kabayama Kazuya、Watabe Tadashi、Kanai Yoshikatsu、Ooe Kazuhiro、Toyoshima Atsushi、Shirakami Yoshifumi、Yoshimura Takashi、Fukuda Mitsuhiro、Hatazawa Jun、Nakano Takashi、Fukase Koichi、Shinohara Atsushi
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 112
Pages: 1132~1140
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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