2020 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病の薬物治療戦略:ドパミン神経系を標的とした新規治療法開発
Project/Area Number |
19H03410
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 幸江 久留米大学, 医学部, 准教授 (10279135)
大西 克典 久留米大学, 医学部, 助教 (10626865)
黒岩 真帆美 久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
外角 直樹 久留米大学, 医学部, 講師 (60368884)
首藤 隆秀 久留米大学, 医学部, 講師 (70412541)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 治療抵抗性うつ病 / アンヘドニア / 抗うつ薬 / ドパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
うつ病の病態には、セロトニン神経系に加えてドパミン神経系の異常が密接に関わっている。抗うつ薬はセロトニン神経系に作用する薬物(SSRI)が主流であるが、治療抵抗性うつ病やアンヘドニアに有効な新規薬物療法の開発が望まれている。我々は、SSRIの作用効率やアンヘドニアの病態にドパミン神経系およびその制御機構が重要であることを明らかにした。本研究では、ドパミン神経系のうつ病の病態における役割と治療標的としての可能性を明確にし、治療抵抗性うつ病およびアンヘドニアに対する新規薬物療法の開発を目指す。 治療抵抗性うつ病およびアンヘドニアに対する新規薬物療法の開発戦略として、(1) ドパミン神経系におけるp11の機能解析に基づいた治療法開発、(2) アンヘドニアモデル(側坐核コリン作動性介在神経(CIN)におけるp11欠損マウス)を用いた治療法開発、(3) 海馬歯状回顆粒細胞のD1受容体発現機構解析に基づいた治療法開発、(4) デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患モデルのうつ病モデルとしての有用性確立とドパミン機能異常解析に基づいた治療法開発を行っている。令和2年度には、海馬刺激による側坐核ドパミン放出にはCINのp11が必須であること、TDO阻害薬である680C91がDSSによる腸管の急性炎症を抑制するのみでなく急性炎症によるうつ様行動も顕著に抑制することを明らかにしており、ほぼ予定通りの研究を実施することができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドパミン神経系のうつ病の病態における役割を明確にし、治療抵抗性うつ病およびアンヘドニアに対する新規薬物療法の開発を目指して、以下の研究を実施した。 1.ドパミン神経系におけるp11の機能解析に基づいた治療法開発:ドパミン神経サブタイプ・回路におけるp11の役割を、(1)ドパミン神経回路:中脳辺縁系 vs.中脳皮質系、(2)ドパミンを共放出する青斑核ノルアドレナリン神経回路に絞って解析している。DBH-Cre p11 cKOマウスでは発生初期に全身の細胞でp11が欠損していることが明らかになり、DBH-Cre p11 cKOマウスの再作製に着手した。 2.アンヘドニアモデルを用いた治療法開発:報酬刺激でCINが活性化される機序を明らかにするために、海馬からのグルタミン酸神経入力によるCIN活性化とp11の役割についての解析を実施している。海馬からの興奮性入力により側坐核ドパミン放出は増加するが、この応答にはCINのp11が必要であることが明らかになった。 3.海馬歯状回顆粒細胞のD1受容体発現解析に基づいた治療法開発: D1受容体プロモーター活性の高い海馬歯状回顆粒細胞を化学遺伝学的手法を用いて選択的に活性化し、うつ様行動に及ぼす影響を継続して検討している。比較対象として、非選択的な海馬歯状回顆粒細胞活性化の検討も行っている。 4.DSS急性炎症うつ病モデルの確立とドパミン機能異常解析に基づいた治療法開発:DSSによる腸管の急性炎症がうつ様行動をきたすDSS急性炎症うつ病モデルを用いて、TDO阻害薬である680C91の効果を検証した結果、680C91は腸管の急性炎症を抑制するのみでなく、急性炎症によるうつ様行動も顕著に抑制することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ドパミン神経系のうつ病の病態における役割を明確にし、治療抵抗性うつ病およびアンヘドニアに対する新規薬物療法の開発を目指して、以下の研究を引き続き実施する。 1.ドパミン神経系におけるp11の機能解析に基づいた治療法開発:ドパミン神経サブタイプ・回路におけるp11の役割を、(1)ドパミン神経回路:中脳辺縁系 vs.中脳皮質系、(2)ドパミンを共放出する青斑核ノルアドレナリン神経回路の解析を継続して実施する。ファイバーフォトメトリー装置が令和3年度に導入されるため、行動と関連したドパミン、ノルアドレナリンの放出変化を、各神経核において高い時間的分解能で解析する。 2.アンヘドニアモデルを用いた治療法開発:報酬刺激でCINが活性化される機序を明らかにするために、海馬からのグルタミン酸神経入力によるCIN活性化とp11の役割についての解析を継続して実施する。ChAT-Cre 5-HT1bR cKOマウスに加えて、ChAT-Cre HCN2 cKOマウスを用いて、p11によるCIN活性調節とアンヘドニアとの関連を検討する。 3.海馬歯状回顆粒細胞のD1受容体発現解析に基づいた治療法開発: (1) 顆粒細胞におけるD1受容体過剰発現は抗うつ作用を示すのか、(2) D1受容体プロモーター活性の制御機構について継続して検討を行う。セロトニンに加え、ノルアドレナリンによる調節についても検討する。 4.DSS急性炎症うつ病モデルの確立とドパミン機能異常解析に基づいた治療法開発: DSS急性炎症モデルにおけるうつ様行動を、TDO阻害薬である680C91が抑制することが明らかになった。このモデルにおいて、TDOの関与についてTDO欠損マウスを用いて検討を加える。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Obligatory roles of dopamine D1 receptors in the dentate gyrus in antidepressant actions of a selective serotonin reuptake inhibitor, fluoxetine.2020
Author(s)
Shuto T, Kuroiwa M, Sotogaku N, Kawahara Y, Oh YS, Jang JH, Shin CH, Ohnishi YN, Hanada Y, Miyakawa T, Kim Y, Greengard P, Nishi A.
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Journal Title
Mol Psychiatry
Volume: 25
Pages: 1229-1244
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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