2020 Fiscal Year Annual Research Report
細菌種特異的ゼノファジーを誘導するRab制御系ネットワークの解明
Project/Area Number |
19H03471
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 助教 (10598858)
相川 知宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (70725499)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | A群レンサ球菌 / オートファジー / SLO / Nga / ゴルジ体 / 上皮間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
A群レンサ球菌(GAS; Streptococcus pyogenes)は、咽頭炎、皮膚および軟部組織の化膿性炎症や連鎖球菌毒素性ショック症候群などの生命を脅かす状態を引き起こす主要な病原体である。本研究では、A群レンサ球菌が、細胞内に侵入する際の菌側のファクターとして、NAD-グリコヒドロラーゼ(Nga)などのエフェクタータンパク質をストレプトリジンO(SLO)に着目し、その解析を行った。この2つの毒素は、劇症型感染症において著しく発現量が増加することが知られている。本研究では、この2つの毒素の新たな細胞障害性について解析を行った。A群レンサ球菌は、感染した上皮細胞において、SLO依存的にエンドサイトーシス膜を破壊し、細胞質に侵入するが、細胞質に脱出した菌はオートファジーによって認識され、分解される。この際に、A群レンサ球菌が分泌するNgaがゴルジ体の断片化を誘導することを明らかとした。このゴルジ体の断片化は、SLO遺伝子破壊株では誘導されず、細胞質への菌の露出が必要であること、また、Ngaの活性化部位変異体では誘導されないことから、この2つの毒素が協調して作動することが必須であることを明らかとした。このゴルジ体の断片化は、感染時間依存的に増加した。さらに、感染細胞内の小胞輸送系がほぼ完全に阻害されていることをRUSHアッセイによって明らかとした。また、この小胞輸送の阻害により、細胞間接着分子の重要な分子であるE-cadherinの輸送が著しく阻害されていることが明らかとなった。E-cadherinはこれまでA群レンサ球菌の分泌するプロテアーゼであるSpeBによって分解されることで、上皮間接着を弱める、と考えられてきたがそれだけではなく、小胞輸送の阻害そのもので、E-cadherinの細胞膜上への輸送そのものも阻害されることが明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A群レンサ球菌によって誘導されるオートファジーのメカニズムについて、本年度は、感染細胞における小胞輸送への影響について細胞生物学的な解析を加えたが、これまで知られていた毒素のメカニズムとは全く異なる新たな機能を明らかとすることができた。特に、A群レンサ球菌感染では、上皮バリアを破ることによって生体組織内の深部に侵入することが臨床的にも重要であるが、本研究では、その初期段階のメカニズムについて明らかとすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Ngaによるゴルジ体の断片化を明らかとしたが、すでに別論文で、このNgaがRab1を阻害することによって通常のオートファジーの誘導を阻害し、その代替手段としてRab27, Rab35依存性のオートファジーを誘導することも報告している。そのため、現在は、Ngaと相互作用を起こす宿主細胞内分子を解明することと、RabGAPスクリーニングによって明らかとなってきたA群レンサ球菌特異的なオートファジー誘導メカニズムを明らかとする。
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