2020 Fiscal Year Annual Research Report
Management of Helicobacter heilmannii infections
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19H03474
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松井 英則 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (30219373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林原 絵美子 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (20349822)
鈴木 仁人 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (70444073)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・スイス / ヘリコバクター・ハイルマニイ / 人獣共通感染症 / コッホの4原則 / 胃MALTリンパ腫 / 難培養性細菌 / 迅速診断 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトから分離されるのはヘリコバクター・スイスのみであるが、当該研究においては、ヘリコバクター・スイスをハイルマニイ菌と呼ぶ。我々は、世界で初めて胃生検体からハイルマニイ菌を培養するための輸送培地と分離培地ならびに増菌培養法を開発した。臨床分離のハイルマニイ菌3株、養豚から分離の1株の完全ゲノム配列を短鎖型および長鎖型シークエンサーによるハイブリッド解析にて構築し、比較ゲノム解析を行った。その結果ハイルマニイ菌は、ヒト-ブタ間で水平感染している可能性が示された(鈴木仁人、2020年度日本ヘリコバクター学会学術集会・最優秀賞)。一方、臨床分離株を用いたマウスの感染実験により、コッホの4原則を満たすことが出来、ハイルマニイ菌がヒトの胃疾患の原因菌であることを証明した(林原 絵美子・鈴木 仁人、Proc. Natl Acad. Sci, 2021, https://doi.org/10.1073/pnas.2026337118、プレスリリース2021年3月24日)。 感染診断として同一の被験者から胃生検体と血清を採取し、分離培養、PCR、ELISAにより判定した(林原 絵美子・松井 英則)。PCRとELISAの結果は概ね一致した。しかし、除菌後の被験者の場合は、PCR陰性であってもELISAでは陽性の結果となった。除菌後も一定期間抗体価が維持されるのか、あるいは菌数が減少しただけで完全に除菌されていないかの判断は、今後の経過観察で判明する。また、胃バイオプシーを用いたRapid Urease Test (RUT)でピロリ菌陽性検体については、ELISAでは1例を除き全て陰性であった。1例については、ピロリ菌とハイルマニイ菌の混合感染か、あるいはウレアーゼ活性をもつハイルマニイ菌の感染が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)分離培養法の確立:2019年度に患者の胃生検体の輸送培地とハイルマニイ菌の分離・増菌培地の開発に成功し、2020年度から全国の医療機関から胃生検体と血清を引き受けている。一方、養豚および愛玩動物(イヌ・ネコ)の胃検体からもハイルマニイ菌とピロリ菌以外のヘリコバクター属の分離培養に成功した(林原 絵美子)。 2)迅速診断技術の確立:PCR法、ELISA法に加えて、イムノクロマトに用いるモノクローナル抗体の作製に着手した(松井英則)。 3)新規除菌剤の開発:新規除菌剤の開発のため84種類の環状ペプチドのヘリコバクターの増殖阻害活性を2,3,5-Triphenyl-2H-tetrazolium Chlorideを用いたTTCテストで評価した。その結果6種類のペプチドにヘリコバクターの増殖阻害活性を発見した(松井 英則)。 4)ゲノム解析:臨床分離株、養豚からあの分離株の完全ゲノム配列を短鎖型および長鎖型シークエンサーによるハイブリッド解析にて構築し、比較ゲノム解析を行った。また、臨床分離株をC57BL/6マウスに感染させ、感染4ヶ月後に胃粘膜から菌株を1個体当たり1-2株ずつ回収し、短鎖型シークエンサーによりゲノム解析を行った。ヒトとブタのハイルマニイ菌のゲノム上のコア領域は互いに類似していたが、菌株毎に特異的なアクセサリー領域が2割程度存在した。臨床分離株マウスに感染させたところ、胃粘膜にリンパ球の集積や炎症細胞の浸潤が認められた。胃粘膜から回収した菌株では、外膜タンパク質、鞭毛および走化性関連蛋白質、DNAメチル化転移酵素などの遺伝子に変異が検出され、その中でも鉄獲得に関わる外膜タンパク質には共通して何らかの変異が認められた(鈴木 仁人)。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画は以下の通りである。ハイルマニイ菌感染症において、3年計画で全国の協力医療機関から臨床検体を収集し、新規除菌剤の検証および分離培養法と迅速感染診断法を確立する。本邦における地域性、生活環境、年齢、疾患、性別、愛玩動物との接触の有無などで感染率を算出し、その関連性を明らかにする(リスク分析)。同時に、臨床分離株のゲノム解析を基盤とした遺伝子型判定、薬剤耐性、病原性などの情報のデータベースを構築する。 そこで最終年度となる本年度は、日本ヘリコバクター学会の支援で全国の医療機関から新たに1,000例(萎縮性胃炎、胃癌、胃潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃十二指腸潰瘍)の検体(胃液、胃組織、血清、便)を収集し、リスク分析とゲノム解析を基盤としたデータベースを構築する。大規模な疫学調査は、世界初の試みである。ヒトの胃生検体からハイルマニイ菌の分離は、我々のみが可能であり、得られた情報は速やかに公開する(林原 絵美子・鈴木 仁人・松井 英則)。 また、令和2年度に日本・米国・欧州に出願中した「胃生検体を必要としない抗体検査や抗原検査でのハイルマニイ菌感染診断法」に関する特許を取得し(当該研究の間接経費を充てる)、迅速診断製品の開発並びにハイルマニイ菌感染症の診断事業を立ち上げる(松井 英則)。 更に、我々が同定したハイルマニイ菌のオートトランスポーター(HsvAと命名)が主要病原因子であることの証明のため、hsvA遺伝子の変異株を構築し、マウスへの感染実験により、野生株と変異株の病原性を比較する(林原 絵美子・松井 英則)。同時に新規抗ヘリコバクター剤の除菌効果をマウス感染実験で検証する(松井 英則)。
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Remarks |
ヘリコバクター・スイスは豚を自然宿主とし、ヒト胃にも感染するが、ヒト胃からの分離培養の成功例はなく、その病原性には不明な点が多かった。本研究では胃MALTリンパ腫など複数の胃疾患患者からヘリコバクター・スイスを分離培養することに世界で初めて成功した本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)および日本学術振興会(JSPS)基盤研究(B)の支援によって行われた。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] 胃MALTリンパ腫におけるHelicobacter suis 感染症の関与2020
Author(s)
徳永健吾, 林原絵美子, 松井英則, 鈴木仁人, 大崎敬子, 井田陽介, 三好佐和子, 長濱清隆, 大野亜希子, 三好潤, 久松理一, 岡本晋
Organizer
第62回 日本消化器病学会大会(JDDW2020)
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